韓国の文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

写真拡大

 韓国の第19代大統領に革新系「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏が就任した。

 5月9日に行われた大統領選挙において、文氏は1342万3800票(得票率41.08%)を獲得。保守系「自由韓国党」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏(785万2849票/同24.03%)、中道系「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)氏(699万8342票/同21.41%)に大差で勝利した。

 10日に中央選挙管理委員会が当選を宣言、文大統領の任期5年がスタートした。韓国では、罷免された前大統領の朴槿恵(パク・クネ)被告、その前の李明博(イ・ミョンバク)氏と保守政権が続いていたが、9年ぶりに革新政権が誕生した。

 文大統領は、アメリカが韓国に配備した高高度防衛ミサイル(THAAD)に反対の姿勢を示している上、従軍慰安婦問題における「日韓合意」も再協議を主張しており、反日・反米路線といわれる。一方、北朝鮮に対しては融和路線で親中国派の顔を持つ。文大統領の誕生について、経済評論家の渡邉哲也氏は以下のように語る。

「文氏がTHAAD配備に反対してきた経緯を考えれば、アメリカと韓国の関係は悪化することはあっても改善される可能性は低い。文氏はTHAADの撤去を求める可能性も指摘されており、仮にそうなれば在韓米軍の撤退もあり得るだろう。また、北朝鮮と融和の姿勢を示していることは、アメリカにとっては軍事行動の大きな障壁となる可能性がある。

 この時期に韓国に親北媚中政権が誕生した意味は大きく、中国がアジアでの影響力拡大に韓国を利用することはほぼ確実。日本にとっては、難しい選択を迫られる機会が増えることは必至だ。すでに日韓合意については再協議を主張するなど反日の姿勢を明確にしており、日韓関係の冷え込みは避けられない状況だ」(渡邉氏)

 文大統領の誕生を受けて、安倍晋三首相は「日韓両国は戦略的利益を共有する、もっとも重要な隣国」「日韓両国は協力することで、東アジア地域の平和と繁栄に一層貢献できる」とコメントしており、アメリカ政府は「韓国との同盟関係の強化が続くことを期待する」との声明を発表しているが、今後の成り行きが注目されるところだ。

●韓国、文大統領誕生で財閥解体→経済崩壊も

 また、文氏は2003〜08年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で秘書室長を務めるなど、盧大統領の側近として機能していたことが知られている。そのため、盧政権の流れをくむかたちで左派的な政策をとることが確実視されているわけだが、実際の舵取りはどのようなものになるのだろうか。

「文氏は盧氏の弟子であり、盧政権の“中の人”であった。仮に盧政権がやり残したことを実現させるとなると、『米軍からの戦時作戦統制権の返還』『在韓米軍の追放』『財閥解体および財閥資産の国有化』『北朝鮮主導での朝鮮半島統一』『日本との国交断絶』などに着手することになる。

 いずれも現実的ではなく、就任後は現実路線に転換するという見方もあるが、実際にはどう転ぶかわからない部分も多いため、予断を許さない状況だ」(同)

 また、今回の大統領選は朴被告の罷免に伴い、約7カ月前倒しで行われた。朴被告は、友人の崔順実(チェ・スンシル)被告と共謀してサムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)被告から433億2800万ウォン(約43億円)の賄賂を受け取ったなどとされており、朴政権を退陣させた左派勢力を後ろ盾にするかたちで文政権が誕生した。

「韓国経済は10大財閥がGDP(国内総生産)の約70%を占めており、サムスングループだけで同約17%という非常に歪んだ構造になっている。そのため、『財閥にあらずんば、企業にあらず』ともいえる状況であり、極端な格差社会になってしまっているのが実情だ。

 そして、1人1票の原則に基づく選挙においては、国民の不満が原動力となるかたちで左派政権を誕生させた。文氏は選挙公約のなかで解体をはじめとする財閥改革と不当利益の国庫返還に言及しており、今後の実行力が問われるだろう。また、韓国は法が遡及する国であり、新たな法律をつくることで過去にさかのぼって罰せられることもあり、司法も左派勢力が強いため、財閥の成り行きは注目に値する。

 朴被告の例を見てもわかるように、韓国の財閥は政治との癒着が強く、さらにグループ内で資本と利益のつけ回しを行っているため、経営の実態が見えにくい。財閥改革に着手すれば、そうした歪みが表面化すると同時に、企業によっては存続が危ぶまれることになるだろう。つまり、文大統領は公約を守れば経済を崩壊させることにつながり、公約を反故にすれば民意の反発を招くために朴被告と同じ轍を踏むことになる可能性が高いわけだ」(同)

 緊迫化する朝鮮半島で韓国がどのような動きを見せるのか、世界が注視している。
(文=編集部)