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慶應義塾大学は、同大学医学部 精神・神経科学教室の内田裕之専任講師が、北米、ヨーロッパ、アジアの統合失調症研究の専門家とともに、統合失調症の治療で使用される抗精神病薬の長期的な効果と安全性を検討し、その安全性、有用性、課題点を明らかにした。この研究成果は5月5日、アメリカ精神医学会が発行する「American Journal of Psychiatry」に掲載された。

抗精神病薬は、50年以上前から統合失調症の治療に用いられているが、近年ではこの薬を使うことで逆に症状が悪化するという報告が散見され、長期的には使わないほうが良いとの主張がなされている。また、この薬が脳の委縮を引き起こすという報告がある一方で、その逆の報告もあるなど、その使用の妥当性が議論の的になっていた。

そこで同研究グループは、抗精神病薬の治療効果や脳に対する影響に関する過去のメタ解析や体系的レビューといった、エビデンスレベルの高い報告を中心に吟味し、そ の有用性と安全性を再検証した。

その結果、抗精神病薬の使用は症状を改善し、その後の再発を防ぐのにも有用であることを改めて明確にしたという。ただし、一部の患者では、抗精神病薬を中止もしくは減らすことが適切である可能性があり、今後、各患者にあった治療法(テーラーメイド治療)を実現するための研究が必要であると考えられるということだ。

一方で、抗精神病薬の使用が脳の大きさに与える影響は、人間と動物では必ずしも結果が一致せず、薬の影響と病気の影響を区別することが困難なため、抗精神病薬が脳の萎縮に与える影響は確定的な知見は得られず、さらなる調査が必要であることも示されたという。

この研究結果は、統合失調症の患者とその家族に対して、抗精神病薬の効果への誤解を解くと同時に課題点も明らかになり、統合失調症の治療と研究の今後の方向性に寄与するものだとしている。

(早川厚志)