大卒ルーキーながら先発定着している仙台DF永戸勝也

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「DAZN×ゲキサカ」1年目のJリーガー〜ルーキーたちの現在地〜Vol.5

 目の前にチャンスが転がってきた瞬間。それを確実につかめるかどうかが運命を分ける。ベガルタ仙台のDF永戸勝也は、そのチャンスも逃すことなく手にしてきた。だからこそ今、Jの舞台に立っている。飄々としているが、常に準備を怠らず備える姿勢こそが武器。開幕戦で先発デビューを飾り、わずか5試合でプロA契約を締結。順調に歩みを進める法政大出身のルーキーは、ここからどんな未来を描いていくのか。

 法政大から仙台へ加入したプロ1年目のルーキー。開幕前にMF中野嘉大が左膝を痛めて離脱。巡ってきたチャンスをつかみ、開幕戦から6試合連続で先発出場を果たした。WBとして持ち前の攻撃力の高さを発揮してはチャンスを演出し、仙台の新たなる“強み”になろうとしている。

―開幕戦で先発デビューを飾ると、ここまで順調に出場機会を伸ばしています。現時点での手応えは?

「あるといえばありますけど、もう少しできるかなという気持ちの方があります。得点やアシストという場面がないわけではないので、そういうところでもうちょっと……という気持ちがあるかなと」

―開幕デビューを飾り、第5節で早くもプロA契約締結条件を満たしました。このペースは予定通りでしたか、それとも想像以上?

「想像以上かな(笑) こういう状況を望んではいましたけど、想像以上ですね」

―これだけコンスタントに試合に出られている理由は、どこにあると感じていますか?

「開幕前のキャンプでもいい時と悪い時がありました。それでも開幕が近づくにつれて、自分なりの準備をある程度していたつもりです。最初は中野くん(中野嘉大)が出る予定だったのかなと思っていたので、僕はそこでサブなりに準備していました。それがあったのでスタメンで出ることになっても、そんなに緊張もせずにできたところがよかったのかなと。やっぱりシーズンの入りが良かったのかなと思います」

―今振り返っても開幕先発デビューというのは緊張したのでは?

「不安ももちろんありましたし、大丈夫かなという気持ちもありましたけど、開幕戦はとにかく楽しかったので。そういう気持ちの方が強かったですね」

―プレッシャーはなかった?

「開幕戦でまずは勝たないといけないというところだけだったので。そんなに気負わずにやればいいかなとやりました。でも開幕戦だけじゃないように見ていたので、そのあともシーズンは続くし……というのは考えながらやっていました。開幕戦も大事でしたけど、意外とそのあともこうやってやれているので、開幕戦の先にも上手く目を向けられていたのが良かったなと思います」

―ホームで迎えた開幕戦。約1万7千人が入ったユアスタのピッチはいかがでしたか?

「すっごい人が入っていて、もちろんびっくりしましたよ(笑) まずアップでピッチへ入ったときに、人がいすぎて人の顔が見えないというか……人というより集団がいるという感じで。両親のいる場所とかもなんとなくはわかったのですが、見つけられなくて。本当にすごかったですね。いい意味での“圧”を感じました」

―多くの観客が入る全国高校選手権とはまた違う?

「そうですね。選手権では、自分たちは“ホーム”という場所でやりましたけど、八千代高を見に来るというよりも“選手権を見に来る”という“観客”という感じでした。ユアスタでは相手のサポーターの方もいますけど、スタジアム全体が自分たちを応援している感じになるので。全然違いますね、サポーターと“観客”は」

 開幕戦から順調に出場を重ねる永戸だったが、第6節・浦和レッズ戦ではJ1の“洗礼”を浴びた。対面したMF関根貴大の対応に苦しみ失点に絡むとチームは0-7の大敗。翌第7節ではプロ入り後初の先発落ちも味わった。

―浦和戦での7失点敗戦は苦い経験となりました。

「もちろん自分なりに準備して、浦和戦へ向けてベストな状態で臨んだつもりです。もちろん舐めていたわけではないですし、手堅くやろうという気持ちがありました。今となっては向こうはもちろん個人としても上でしたけど、何よりも組織としての強さが印象的です」

―関根選手の対応に苦しむ姿が印象的でした。戦っているときの心境は?

「敵から見て、“まぁ楽しそうだな”と。平日開催であれだけ人が入ったなかで、ああいうパフォーマンスができたら楽しいんだろうなと……正直うらやましいなとは思ってみていました(苦笑)」

―プロ入り後、一番悔しい試合はやはり浦和戦に?

「はい。やっぱり開幕戦とかからも、ちょっとした守備のときに空けてしまうとかがあったので。それまでは、そこを使われていなかったら失点などのピンチにならなかったというのは自分のなかでは感じていました。それでもレッズはそこを突いてきてやられたというのは、やはり簡単にはいかないなと。そこを防げるようにしないといけないというのは、(第8節)広島戦にも活きたところだと思うので。そこは良かったところかなと思います」

―ちなみにこれまで対戦したなかで印象に残った選手は?

「柏レイソルのFWクリスティアーノ選手かな。シンプルに外国人選手とやったことがなかったのが一つと。あと体格もある選手でドリブルもシュートもあって、最後の10分くらいからこっちの(右)サイドにきたので、それだけの時間だったんですが、速いし強いしで……。結構ああいう選手ともやっていかないといけないのかと思うと、苦労しそうだなと思いました」

―これだけ早く仙台へ馴染めた理由の一つとして、法政大が仙台と同様に大学サッカーでは比較的珍しい3バックのシステムを採用していたこともあるのかなと思いますが、どうでしょう?

「それは自分的にはだいぶ良かったかなと思っています。ですが、プロは戦術も違うし、サイドの役割も大学のときと全部が全部一緒ではないので、多少は慣れるのに時間もかかりました。それでもキャンプで上手く修正しながらやれたので、よかったなと思います」

「大学のときは3バック対4バックがほとんどだったので、逆に3バック対3バックの試合に今はまだあまり慣れていないので、難しいというか、本当に一対一になるので、そこは今やっていて新鮮な部分ですね」

―ここまで数試合を経て、Jリーグと大学サッカーの違いはどこに感じていますか?

「連戦もある中でのトレーニングはコンディションと戦術をすり合わせていくので時間は短いですけど、だいぶ充実しています。そこは大学のときよりもプロでやっているなという実感はあります。それと試合では対戦相手も各チームそれぞれサイドにいい選手がいるので、毎週(相手の特長が)変わるなという感じですね」

 ルーキーイヤーにも関わらず、J1の舞台で堂々と戦っている永戸。どんな大学時代を過ごしてきたのか――。関東2部だった大学1年時はリーグ中断明けの2013年9月4日、第10節・東京学芸大戦(1-0)で大学リーグデビュー。残り全試合に先発した。チームは7位終戦で1部昇格は叶わなかったが、転機は大学2年のとき。背番号2を与えられ、不動の存在としてピッチへ立ち続け、法政大の1部昇格へ貢献。さらにこの夏、法政大は関東2部所属ながら、夏の大学日本一決定戦・総理大臣杯の予選を勝ち抜き、全国出場。勢いは止まらずに躍進を続け、全国準優勝を遂げた。2年生ながら主力としてプレーしていた永戸は、この大会でその名を知らしめることになった。

―大学ではルーキーイヤーから意識を高く持ってやっていましたか?

「1年生のときは、ただただ試合に出ているだけでした(苦笑) 試合に出ていない時期は“出たい”という一心でやって、試合に出れたら“あぁ試合出れてる”という感じでやっているだけで。がむしゃらに次の試合に出られるようにやっていただけでした」

「2年生のときの総理大臣杯が全てですね。総理大臣杯が自分にとってのターニングポイントだと思います。僕自身のパフォーマンスはそんなに良かったわけではないですが、結果を出したことで注目されるようになりましたし、その前と後では全然違います」

―大学2年生のあの夏の総理大臣杯に全てを賭けていた?

「だいぶ賭けていました。自分たちは関東2部だったので、ここしかないかなという感じがチーム全体にありました。全国へ出られたことも良かったですし、もちろん優勝するというのはありましたけど、出てからもだいぶ“いけいけ”でしたね。専修大ともやりましたけど、気持ち的には勝てるでしょくらいの強気だったので」

―ではその頃から進路として、絶対にJリーグ入りしようと強く意識を?

「そのときはまだ進路どうこうは考えていなかったです。正直言って、大学3年生くらいになってから、どこかにはいけるかなぁと思い始めたくらい。そこまで深くは考えていなくて。どこかのクラブで(Jリーガーに)なれるんじゃないかなぁ?というくらいでした(笑)」

―大学時代を振り返り、やっておいて良かったことなどはありますか?

「自分の強みをつけられたこと。自分の特長を確立できたのは大学サッカーだと思う。そこは大学サッカーをやっていて良かったなと思う部分です」

―その特長を確立するためにやっていたことはあるんでしょうか?

「質にこだわるというか。試合や練習のなかでそういう(強みで勝負できる)場面になったときに、結構考えて楽しんでプレーしていました。いろいろなことを考えつつチャレンジしてやっていましたね」

―大卒選手の誇りという部分はありますか?

「まずは法政大もそうですし、八千代高もそうですし、そこの看板を背負っているプレイヤーになりたいです。僕よりいいクラブにいった選手もいると思いますけど、そういう選手に追いつき追い越せでやっていきたい。大学でつながった選手がたくさんいるので、目標にしやすいですし負けてはいられないです」

 今季大学からJ入りを果たした選手のなかでは最速でプロA契約を締結した。それでも、まだ一人のJリーガーとしてスタートラインに立ったばかり。ここからチームとして、個人としての結果を求め、選手としてさらに上の段階を目指していくことになる。

―現時点でご自身の課題はどこにあると感じていますか?

「安定した守備、それと攻撃でも良さをもう少し出さないと、重要なピースにはなれていないと思うので。守備の部分は……次はないと思うので。そこは自分自身に言い聞かせて練習からやっていますし、攻撃のところでもそろそろ結果を出さないとやばいなとは思っています。ここまでの試合でチャンスはいくらでもあったと思うので、そこをつかみきれていないのが現状。次にチャンスがあったら逃さないようにするだけですね」

―今季の目標の数字、得点やアシストなどはありますか?

「数字は特にないですが、試合に出続けることはしたいなと思っています。欲を言えば交代されないくらいの選手になりたいとは思っています」

―得点やアシストなど、描いている理想の形はあるんでしょうか?

「ロングスローでもそろそろ結果を出したいですね。でもそれよりも、アシストはシンプルにクロスで味方に自分が合わせるだけだと思うので、大丈夫だと思います。得点は……なんかこぼれ球でも何でもいいので(笑) 前に詰めておいて、逆サイドからとか取れればいいと思います。まぁそういう気持ちを持ちつつ、まずはチームが勝てるのが一番大切かな」

―描いている選手像はありますか?仙台から代表入り……など。

「いけるならば日本代表もいきたいですが、まだまだ何も見えていないので。まずはチームで結果を出して、安定して“不動の存在”になれないと始まらないかなと思うので。今はそういうところです」

―今季残り試合への意気込みは。

「試合に出続けるという目標を立てた以上は、試合のなかで、ピッチの上でアピールするしかないと思います。もちろんチームはトップ5を目指しているわけで、もう簡単には落とせない試合も多いですし、そのために“自分が”という気持ちを持って、毎試合に臨めればいいかなと思います」

(取材・文 片岡涼)