森脇口臭案件における「結果的にレオ・シルバにも迷惑かけた」という浦和レッズの徹底した現状認識が見事だった件。
「浦和レッズ、大ピンチを防ぎました!!」

いやー、危なかった。味方DFが相手に侮辱的タックルでPKを与え、あわやチームごと敗戦という大ピンチを、チーム一丸となった決死のディフェンスで凌ぎ切った。他人事なのでどうなろうが知ったことではないと思いつつも、浦和レッズの粘り、守り、踏ん張りは見事なものでした。すごい守備力です!鉄壁!

「森脇口臭案件を絶対に差別問題に発展させない」という強い気持ちで対処に臨むクラブを、不用意にペラペラとしゃべりまくる森脇本人と、完全にジェスチャーでやっちゃっている森脇本人と、過去の充実した暴言動画ライブラリーを誇る森脇本人が一気呵成に攻め立てるという勝負の構図。もし森脇本人の頭にドライブレコーダーでもついていたら、これはもうクラブごとズドンだったに違いありません。

しかし、ドライブレコーダーはなかった。

浦和レッズが見せた、「言った言わない」ゾーンと「事実」ゾーンの見切りは、神がかり的だったと言ってもいいでしょう。案件勃発当日に森脇本人が不用意にペラペラと口走ってしまった「小笠原選手に『口が臭いんだよ』と言って」という発言、ここが事実の最前線であるという見切りが、クラブを存亡の危機から救ったと言っても過言ではありません。

確かにDAZN映像や一般観衆が撮影した映像などを見れば、鹿島レオ・シルバ選手と対峙した森脇本人が、口と鼻のあたりに手をかざす映像がハッキリと残っており、それを間近で目撃した浦和・那須選手が「お前が悪い、お前が悪い」と叫ぶ音声がバッチリ残っています。一般論で言えば「言っちゃってますね!」と断じたくなるところ。

ただ、状況と事実とが一致するかというと、必ずしもそうではない。レオ・シルバ選手のほうを向いて発した言葉が、本当にレオ・シルバ選手に対してのことなのかどうかは「わからない」のです。後ろを向いて「バーカバーカ」と言うパターンもあるように、視線と発言の対象は別個の問題。顔の向きがレオ・シルバ方向であっても「いいえ、小笠原選手に言いました」は主張可能なのです。(※頭の中で「ピコーン!」の効果音を鳴らす)

そして、口と鼻の前に手を持ってきたしぐさも、誰かに対して「臭い」とやったのかもしれないけれど、「眩しくて目を覆う途中」であるとか「アチャーという気持ちで眉間をおさえにいった」であるとか、別の意味合いのものだったと主張することは可能なのです。(※頭の中で「ヒラメキー!」の効果音を鳴らす)

逆にレオ・シルバ選手に向かって小笠原選手に対する怒りをぶつけたとしても、それはそれであり得るというか、絶対にナイとも言い切れないこと。電柱を蹴りながら「部長死ね!」と言うことだってありますよね。レオ・シルバ選手に向かって小笠原選手の口臭への文句を言うことは絶対ナイとは言えない。つまり、「小笠原選手に『口が臭いんだよ』と言って」以外のすべては水掛け論でウヤムヤにできる。ドライブレコーダーもないんだし。そのように浦和レッズは見切ったわけです。(※頭の中で「へぇ〜」ボタン連打)

↓「旭日旗を掲げたかどうか」は映像と写真で断定されるが、「誰に何を言ったか」は断定できない!



「動かぬ証拠はないな?」
「相手方の証言だけだな?」
「マイクが拾った音声は那須だな?」
「コッチの自白もないな?」
「よし、押し切ろう」

王手の連続を凌いで逃げていく王将みたいな戦い!

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このラインを見切ったことで、詰めろを凌ぎ切ることができた。そして、そのラインをしっかりと見据えることで、美しい謝罪文(※意識としては謝罪文ではなく、示談成立をご報告する簡潔なFAXくらいの感じ)も完成しました。あくまでも「森脇が小笠原選手に対して口が臭いと言った」ことが事実のすべてであるという意識がなければ、かように徹底した文面は生まれなかったでしょう。腕がある、そのように評価していいと思います。

↓この案件がどういうものかというストーリーをしっかりとイメージして書かれたイイ文面です!
森脇良太への裁定を受けて

5月4日(木・祝)のJ1リーグ第10節浦和レッズ対鹿島アントラーズにおいて、弊クラブ所属選手の森脇良太と鹿島アントラーズ小笠原満男選手の間で発生しましたトラブルにつきまして、鹿島アントラーズのみなさま、浦和レッズに関わるみなさま、Jリーグを応援し、支えてくださるみなさまに、ご迷惑をおかけしましたことを、お詫びいたします。

規律委員会での聴取を経て、不適切な発言があったとして、本日9日、森脇良太に2試合の出場停止処分が下されました。
クラブとして、今後、同様の問題が起きないよう、本人への啓発を強めるなど努めて参ります。
みなさまにご迷惑をおかけしたことを、重ねてお詫びいたします。

浦和レッドダイヤモンズ代表 淵田敬三

森脇良太
「裁定が出て、不適切な発言があったとして、2試合の出場停止となったと伺いました。実際に自分の発言が、子供じみたもので適切ではなかったと思いますし、深く反省しています。僕や浦和レッズを応援してくださっているみなさんに、ものすごく悲しい思いをさせてしまったと思いますし、サッカーを好きで他のクラブを応援してくださっている方、また鹿島アントラーズを応援する方にも不快な思いをさせてしまいました。そして、試合の中で熱くなっていた中で、小笠原選手にも不快な思いをさせてしまいましたし、結果的にレオ シルバ選手にも同様の思いをさせてしまいました。本当に申し訳なく思っていますし、今後、二度とこうした行動はしないようにしていきます。
僕は、本当にファミリーのような雰囲気を持つ浦和レッズというクラブが好きですし、あれだけのスタジアムの雰囲気を作ってくれるファン・サポーターの人たちには感謝しかありません。レッズに来て、あとは選手が結果を出すだけの状況なのに、僕自身が、こうした行為で、迷惑をかけてしまったことは本当に申し訳ない気持ちです。二度とこうしたことがないように努めます。ご迷惑をおかけし、本当に申しわけありませんでした」

http://www.urawa-reds.co.jp/clubinfo/%e6%a3%ae%e8%84%87%e8%89%af%e5%a4%aa%e3%81%b8%e3%81%ae%e8%a3%81%e5%ae%9a%e3%82%92%e5%8f%97%e3%81%91%e3%81%a6/

何に対して謝り、何を認めるか!

何を語り、何を「あえて言わないでおく」か!

しっかりとストーリーを意識できています!

謝罪文というのは「経緯説明」「現状認識」「お詫び」「再発防止策」「お詫びの念押し」という要素で作られるものかと思います。まず何が起きたかを示し(経緯説明)、それに対してどう思っているのか、何が悪かったのかを示し(現状認識)、悪かったと思うことに対して詫びる(お詫び)。そして今後に向けての対策を示し(再発防止策)、改めてお詫びで締める(お詫びの念押し)、の流れ。

特に大事なのが「現状認識」です。何が問題であり、何が悪かったのか。現状をどのように受け止めるかで、全体の方向性が大きく変わってきます。ここで浦和レッズは最終事実防衛ラインから逆算して「森脇本人が小笠原選手に口が臭いという子供じみた不適切な発言を行なった(事実)。そのことによって試合が一時中断されるような騒然とした事態を引き起こしてしまった(問題の本丸)。これはサッカーを愛し、両クラブを愛する人たちを不快にさせ、試合観戦の楽しさを損ねるという形で当該試合の観覧者に迷惑を掛けることにつながった(副次的問題)。さらに、その発言の対象がレオ・シルバ選手なのではないかという小笠原選手の推認によって、レオ・シルバ選手に対しても自分が差別されているのではないかという不安を与えてしまった(オマケの問題)」という現状認識をしたのです。

自分なりにダメだったなーと思う点を、第一に「揉めちゃって試合の空気悪くしちゃった」に置いた。だからこそ、その後のお詫び部分での対象者がレオ・シルバ選手ではなく、まずファンであったり関係者であったりを挙げているのです。例えて言うならば、キャバレーでヤクザ者同士がケンカをしたあとで、周囲の客に対して「さわがせたのぉ」と言っている構造のお詫びなのです。ついうっかりレオ・シルバ選手の名前を挙げてお詫びしちゃったりする勇み足を踏まなかったのは、しっかりとした現状認識ができている証拠。お見事でした。

特に秀逸なのが森脇本人のコメントという体裁で発表されたテキストのなかにある、「結果的にレオ シルバ選手にも同様の思いをさせてしまいました」という言い回し。この「結果的に」が非常にイイと僕は思います。ここには「事実としては小笠原選手の口が臭いと言ったんだけど、小笠原選手がヒートアップしちゃってレオのこと差別してるぞみたいに炊きつけることになっちゃって、すごい不快な気持ちにさせちゃってゴメンね。小笠原選手がヒートアップしちゃってゴメンね」という「発端は自分だけど、パタパタと広がっていった連鎖反応によって第三者を不快にさせた」という気持ちが込められているのです。(※頭の中で「ピタゴラスイッチ」のBGMを鳴らす)

↓そのほかの点でも、一貫した現状認識が感じられる、よくできた報告だと思います!
●「森脇良太への裁定を受けて」
・ついうっかり「裁定を受けてのお詫び」などとしなかったのはナイス。こんなこと言われたのでリアクションしますね、というだけのタイトル

●「5月4日(木・祝)のJ1リーグ第10節浦和レッズ対鹿島アントラーズにおいて、弊クラブ所属選手の森脇良太と鹿島アントラーズ小笠原満男選手の間で発生しましたトラブルにつきまして、」
・ついうっかり「レオシルバ選手とのトラブル」などとしなかったのはナイス。レオシルバ選手は本件とは無関係というコチラサイドの意識を強調

●「鹿島アントラーズのみなさま、浦和レッズに関わるみなさま、Jリーグを応援し、支えてくださるみなさまに、ご迷惑をおかけしましたことを、お詫びいたします。」
・揉めてゴメンね、空気悪くしてゴメンね、の意識に基づく適切なお詫び対象者の選定。ケンカを見て「うわぁ…」と思っている人だけを上手にピックアップ

●「規律委員会での聴取を経て、不適切な発言があったとして、」
・全面的に認めるわけじゃないけれど、規律委員会がそう決めたんならそうなんでしょうなぁ、という意識の適切なほのめかし

●「本日9日、森脇良太に2試合の出場停止処分が下されました。」
・ハイこれで手打ちです、というスムーズな幕引き

●「クラブとして、今後、同様の問題が起きないよう、本人への啓発を強めるなど努めて参ります。」
・森脇本人が問題と限定することでクラブ全体に蔓延する差別意識的な非難をあらかじめ牽制

●「実際に自分の発言が、子供じみたもので適切ではなかったと思いますし、」

・大人なら口臭は指摘しないよね、という優しさ不足を反省

●「僕や浦和レッズを応援してくださっているみなさんに、ものすごく悲しい思いをさせてしまったと思いますし、」
・みんな!俺バカだったよ!ゴメンな!という熱い気持ち

●「サッカーを好きで他のクラブを応援してくださっている方、また鹿島アントラーズを応援する方にも不快な思いをさせてしまいました。」
・見ててくれたみんな!俺バカだったよ!ゴメンな!という熱い気持ち

●「そして、試合の中で熱くなっていた中で、小笠原選手にも不快な思いをさせてしまいましたし、結果的にレオ シルバ選手にも同様の思いをさせてしまいました。」
・口が臭いと言ってゴメンな!その結果、小笠原選手がヒートアップしてレオにも迷惑かけたな!ゴメンな!という熱い気持ち

●「僕は、本当にファミリーのような雰囲気を持つ浦和レッズというクラブが好きですし、あれだけのスタジアムの雰囲気を作ってくれるファン・サポーターの人たちには感謝しかありません。」
・空気悪くしてゴメンな=空気を作ってくれているサポーターに悪いことした、という自然な発想

●「レッズに来て、あとは選手が結果を出すだけの状況なのに、僕自身が、こうした行為で、迷惑をかけてしまったことは本当に申し訳ない気持ちです。」
・反撃時間をロスして負けちゃったことを反省

揉め事になっちゃったのが悪いのであって、そのきっかけは自分なのかもしれないが、あくまでもきっかけに過ぎないという気持ち!

だから、相手方にお詫びに行ったりもしません!

もしどこかで偶然あったら、こないだはゴメンなって言うくらいの温度感です!

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今回の件を踏まえて想うのは、やはりドライブレコーダーは必要だなということ。ドライブレコーダーとか取り調べの録画であるとか、あとから事実を振り返る装置がなければ、事実というのはなかなか決められないものだということです。今回は「口が臭いんだよ」というラインを不用意に認めてしまいましたが、「くせえんだよ」ではなく「クソー、なんだよ」という発言だったとする主張(「くせえんだよ」は聞き間違い)を初手で展開していれば、もっと手前のラインで戦うこともできたことでしょう。

今後のドライブレコーダー標準装備化に向けては、森脇本人サイドとしても「声に出さない、態度に出さない」を徹底する必要があるでしょう。本件でも読唇術のプロが出てきて発言をキリトル可能性は残っています。言った言わないで逃げ切れない可能性があるのです。ドライブレコーダーがない試合でも、くちびるの動きを隠すなど、証拠を残さない意識を徹底していきたいもの。鼻を隠すのではなく唇を隠す。それが大事ですよね。(※頭の中で「ガッテンガッテン」連打)

↓なお、鹿島アントラーズサイドでは鈴木優磨がしっかりと唇を隠して何やら審判に言っております!



クゥー、こんなところでも上手をいくとは!

さすが鹿島アントラーズ!

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感想(26件)



何か言うより一発ブン殴るほうがあとくされがない現代社会!