<トランプは電話会談の際にドゥテルテをホワイトハウスに招いた。とんでもないことだ。乱暴者の殺人者だからではない。中国の南シナ海進出を見逃すことでアメリカの国益を損ねているからだ>

ドナルド・トランプ米大統領は先月下旬にフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領と電話会談を行った際、ドゥテルテをホワイトハウスに招待した。それは大きな間違いだ。

ドゥテルテが進める麻薬撲滅戦争で数千人が超法規的に殺害されたとか、ダバオ市長時代に自ら容疑者を殺害したなどと豪語したからではない。

ドゥテルテが暴言癖を持ち、道徳観念を欠く立派な犯罪者なのは誰の目にも明らかだ。だが、アメリカの歴代大統領はこれまで、ドゥテルテを上回る暴君とも会ってきた。トランプも先月、人権団体の猛反対にも関わらず、エジプト独裁政権のアブデル・ファタハ・アル・シシ大統領をホワイトハウスに招いてみせた。

フィリピン有利の判決も棚上げ

だが、トランプ政権がドゥテルテを招くべきでない最も重要な理由は、ドゥテルテがアジアで安全保障上アメリカの国益にに反する政策を推し進めているからだ。

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ドゥテルテは南シナ海で中国と領有権を争う海域や、南シナ海を含むアジア太平洋地域での「航行の自由」を棚上げにし、中国におもねろうとしている。トランプと電話会談した数日後、フィリピンが議長国を務めた東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議を終えたドゥテルテはこうコメントした。「我々は中国がすることを止められない」。

その言葉通り、今回の議長声明からは、事前の声明案や昨年の議長声明に含まれていた中国を念頭に置いた「埋め立てや軍事拠点化」を懸念する文言が削除された。

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昨年7月には、オランダ・ハーグの仲裁裁判所がフィリピンの訴えを認め、南シナ海に中国が独自に主張する主権に根拠はないと判断した。フィリピンは中国と争っていた南シナ海のスカボロー礁の領有権を認められたが、ドゥテルテはそもそも、そんな判決など存在しなかったかのように振る舞っている。

トランプの招待につれない態度

ドゥテルテは大統領選挙中は、水上バイクで南シナ海のスプラトリー諸島(南沙諸島)に行ってフィリピンの国旗を立て、中国が手を出せないようにしてやると豪語していた。だが大統領就任後は親中路線に転換し、アメリカと「決別」したいと宣言した。

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対テロ作戦を含めた安全保障分野では、アメリカとの軍事同盟を維持する方針で落ち着いたようだが、外交では中国をより重視するという。ホワイトハウスに招待するというトランプの申し出に対し、ロシアやイスラエルを訪問する予定もあって「確約できない」と答えたドゥテルテの反応が、そうしたスタンスを物語っている。

エベリン・ファルカス(大西洋評議会シニアフェロー)