パラリンピック競技を体験できるイベント「ノーリミッツスペシャル2017上野」が5月6、7日に東京・上野恩賜公園で開催された。これはパラリンピックの普及と啓発を目的に、東京都がパラリンピック体験プログラムの一環として一昨年から取り組むもので、昨年5月に銀座で実施したイベントの第2弾となる。

 パラリピアンやオリンピアンによるトークショーのほか、車いすテニス、ウィルチェアーラグビー、ボッチャ、パワーリフティングなど現役アスリートたちがレクチャーする競技体験ブースには多くの人が集まり、競技の魅力に触れていた。

 2020年東京パラリンピックの実施競技数は「22」。その中で特に注目されているのが、東京大会で初めて実施されるパラテコンドーとパラバドミントンだ。イベントでは東京を目指す選手が参加して競技をアピールした。

 今回はこの2競技について紹介する。

■パラテコンドー


伊藤力選手を相手に、蹴りを披露した太田渉子選手 上肢障がいの選手によるキョルギ(組手)と、知的障がいの選手によるプムセ(型)の2種目がある。2020年東京パラリンピックの採用種目はキョルギ。障がい別に4つのクラスがあり、さらに体重別に3階級に分かれている。有効ポイントは蹴りによる胴への打撃で、健常のテコンドーとは違い、パンチ(突き)はポイントにならない。また現行ルールでは頭部への攻撃も禁止されている。

 2009年に初めて世界選手権が開かれた新しいパラスポーツであり、日本では東京パラリンピックでの実施競技採用決定をきっかけに、2015年から本格的に普及活動が始まった。シドニーオリンピックテコンドー女子銅メダリストの岡本依子氏らが中心となって、選手発掘と強化を進めている最中だが、他競技から転向した選手らが早くも世界大会に出場するなど、その活動の幅を広げている。

 注目したいのは、伊藤力(セールスフォース・ドットコム/男子K44-61kgクラス)だ。伊藤は2015年4月に職場での事故で右腕を切断。その後、知人からパラテコンドーを紹介され、自らツイッターで岡本氏に連絡を取り、2016年1月から競技を始めた。そのわずか3カ月後に国際大会デビューを果たしたが、初戦で当時世界ランク1位の選手と当たり、「ボコボコにされた」ことで火がつき、本格的に取り組むため、家族で北海道から東京に移住した。

 パラテコンドーの魅力は、「何といっても華麗な足技の応酬」と話す伊藤。身体の柔軟性を強化している最中ながら、今年2月のUSオープンでは初出場で初優勝を飾るなど、成長を続けている。先日は女子テコンドーのリオ五輪代表・濱田真由選手が所属する佐賀の道場で合同合宿を経験し、体をいじめた。今月にはニュージーランドで開催されるオセアニアパラテコンドー選手権大会に出場する予定だ。

 高木伸幸監督は伊藤について、「もともとアンプティサッカー(※)をやっていたこともあり、佐賀の合宿で走り込みをしてもオリンピアンにひけをとらないくらい基礎体力が高い」と期待をかける。また、今後に向けては「実戦経験を積み、試合の中でどう駆け引きするかを学ばせたい」と話す。
※おもに上肢または、下肢切断の障がいを持った選手が行なうサッカー

 ちなみに、高木監督によると世界におけるパラテコンドー競技者は300人程度。現在のところ、日本でクラス分けの認定を受けている選手は男子では伊藤と高橋健太郎、女子は太田渉子の3人のみ。また、これまでに協会に7〜8名から問い合わせがあったといい、「パラリンピックまであと3年。普及と強化を一緒にやっていく」と高木監督は青写真を描く。

 パラテコンドーの今後の大会スケジュール確認、問い合わせなどは、全日本テコンドー協会のHPで(http://www.ajta.or.jp/)。

■パラバドミントン


パラバトミントンの魅力について語った豊田まみ子選手と今井大湧選手 パラバドミントンは大きく分けて車いすの部と立位の部があり、それぞれ障がいの度合いによってクラス分けされている。車いすはWH1とWH2、立位の下肢障がいはSL3とSL4、上肢障がいはSU5、低身長はSS6にカテゴライズされる。

 車いすと下肢障がいのSL3クラスはシングルスを半面コートで戦う。コートが狭くなる分、ラリーが続き、前後の揺さぶりで勝負する駆け引きは見どころのひとつだ。また、全面で戦うSL4と上肢障がいのクラスは、何といっても健常者にも勝るとも劣らない速いステップ、男子のトップ選手になるとスマッシュの初速が300〜400kmにもなるスピード感に目を奪われる。

 一般のバドミントンと同様に、パラバドミントンもアジアで盛んだ。これまでは、アジアパラ競技大会と世界選手権が世界二大大会とされ、パラリンピックの実施競技に採用されることは長年、関係者の悲願だった。パラリンピックという大きな目標ができたことで、より競技に専念できる環境を整える選手が増えている。

 イベントのトークショーでは女子の豊田まみ子(ヨネックス/SU5)、男子の今井大湧(たいよう/日本体育大/SU5)がパラバドミントンの魅力をアピールした。

 豊田は初出場した2013年の世界選手権シングルスで優勝、2015年大会でもシングルスで銀メダル、ダブルスで銅メダルを獲得している。昨年は左足の半月板損傷で手術をしたが復帰し、今年も活躍が期待される。所属先では積極的に競技普及活動にも参加し、「この2〜3年で、バドミントンをやっている人にはパラバドミントンのことを随分知ってもらえたと感じます。まだ知らない人たちに競技のこと、そして2020年東京パラリンピックから正式競技になったことを伝えていきたいです」と話す。

 男子の今井は今春、日本体育大に進学したばかり。右腕欠損であるが部活動でインターハイ出場を目指していた高校2年の時、「父親から聞いてパラバドミントンというのがあると知った」という。その年、パラバドミントン日本選手権に初出場すると、いきなりシングルスで優勝。

「同じ障がいの人を見たことも、プレーしたことも初めてで緊張した」というが、そこからの飛躍は目覚ましかった。

 競技の選択肢が増えた今井は、部活動と両立しながら、パラバドミントンの国際大会にも出場するようになり、昨年11月のアジア選手権ではシングルスで準優勝。今や若手のホープとして注目を集める存在になり、競技のアピールにも一役買う。

「こういうイベントや(豊田が出演している)テレビCMを見て競技を知る人も多いと思う。バドミントンをやっている人は敏感に反応すると思うし、競技人口が増えるきっかけになるのでは、と思っています」

 今年は9月5日から10日まで、東京・町田市総合体育館で世界バドミントン連盟主催の国際大会が行なわれる。パラバドミントンの国際大会が国内で開催されるのは初で、豊田は「最後まで諦めないプレーをお見せできれば」と意気込みを語り、今井も「立位のスピードや車いすの頭脳プレーなど、健常に負けていないプレーがあることを見てもらいたい。大勢の人に楽しんでもらえるよう頑張りたい」と、来場を呼び掛けていた。

 種目は違えど、パラテコンドーもパラバドミントンも、試合中の駆け引きが観る者を惹きつける。ぜひ大会情報をチェックし、その奥深い世界に触れてほしい。

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