国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士とテレビ電話で交信するドナルド・トランプ大統領 Image Credit: NASA

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 ドナルド・トランプ大統領は4月24日、国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士と、テレビ電話で交信するイベントを行った。その中でトランプ大統領は「私の1期目、遅くとも2期目の任期中に人を火星に送りたい」と発言し、2024年までに有人火星飛行を行いたいという抱負を語った。

 かつて人類を月へ送り込んだ米国航空宇宙局(NASA)は現在、有人火星探査を目指し、少しずつではあるものの前進している。しかし、その目標は2030年代と、トランプ大統領の任期中にあたる2024年――2期目があるとしてだが――には到底間に合いそうもない。

 はたしてトランプ大統領の言葉は実行できるのか。米国の有人宇宙開発の現状と併せて解説したい。

◆スペース・シャトルなきあとの米国の有人宇宙開発

 現在の米国の有人宇宙開発をめぐる流れは、2004年にジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)が発表した宇宙政策にまでさかのぼる。

 この政策では、まず長年米国の有人宇宙開発を支え、日本人宇宙飛行士も乗ったことのある宇宙船「スペース・シャトル」を引退させ、そして新しい宇宙船とロケットを開発し、2010年代のうちに有人月飛行を行い、続いて火星へ行くことを目指すことなどが定められていた。

 NASAはこの政策に従い、新しい宇宙船「オライオン」と、新しいロケットの開発計画をスタートさせた。ところが、予算や技術的な問題などから開発は遅れ、計画の目的やあり方にも批判が相次いだ。

 2009年に就任したバラク・オバマ大統領は、より確実に月や火星へ行くためという理由で、このブッシュ政権下での計画の見直しを発表。2030年代に有人火星飛行を目指すという方針を掲げた。NASAもそれに従い、今まで進めていたロケットなどの開発を中止、あるいは見直し、新たに超大型ロケット「スペース・ローンチ・システム」(SLS)の開発を始め、またブッシュ時代に始まったオライオンの開発も続けられることになった。オライオンは2014年に無人での初飛行にも成功している。

 一方でスペース・シャトルは、老朽化が進んでいたことなどから延命できず、2011年に引退した。

 またオバマ政権では、オライオンは月や火星などの深宇宙への飛行用に使うとし、国際宇宙ステーションなどの比較的近い宇宙への飛行は、イーロン・マスク氏率いる宇宙企業スペースXなどの、民間企業に任せるという方針が明確になった(方針そのものはブッシュ政権のころに立ち上げられている)。ただ、この民間の宇宙船も開発が遅れており、初飛行は2018年の予定である。

◆トランプ大統領の有人宇宙政策

 2017年1月に就任したトランプ大統領は、選挙中の間、宇宙開発や宇宙政策に関して、あまり具体的な発言はしてこなかった。

 今年3月に発表された2018会計年度予算案では、NASA全体の予算は2017年度と比べて1%弱の減少とされ、大幅なカットはまぬがれている。内訳を見ると、かねてよりトランプ大統領が敵視していた地球温暖化や気候変動に関する予算や、教育に関する予算は大幅減となっているが、一方で火星探査など、宇宙探査の予算は増えている。

 その中で有人宇宙飛行については、オバマ時代から一部中止されたものはあるものの、大半の計画をそのまま継続することになり、予算もそれなりに十分な額をつけるとなっている。目新しさはないが、SLSもオライオンもすでに開発が進んでおり、今さら大きく変更できる余地もなかったのだろう。

 とはいえ、流されっぱなしというわけでもないようで、トランプ大統領が(どこまで本気かはわからないものの)有人宇宙探査に対する熱意を語ることもあった。たとえば今年2月28日に行われた議会演説の中では、「遠い世界に米国人が足跡を刻むことは、たいそうな夢ではない」と、抽象的ながら有人宇宙探査に触れている。