勢力拡大中?(写真:時事通信フォト)

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 大盛況となった春巡業を終え、5月場所の番付発表を待つタイミングで飛び込んできた一報は、角界関係者に激震を走らせた。

「貴乃花親方(44)の長男・優一くんの結婚報道です。何より驚いたのはその相手。貴乃花親方の“宿敵”のはずの陣営の親方の娘さんだった。5月場所の土俵も盛り上がりそうだが、協会幹部の主導権争いも確実に激化している」(協会関係者)

 4月27日発売の『女性セブン』は〈貴乃花夫人景子さんの長男極秘結婚!仰天のお相手〉と題し、花田優一氏(21)が結婚を決めたことを報じた。

「優一くんは相撲一家の花田家に生まれながら、高校卒業後にイタリアに渡って本場の靴作りを学んでいた。2015年に帰国した後は靴職人として独立。異色の経歴が注目され、テレビ番組でも何度も取り上げられています」(若手親方の一人)

 父・貴乃花親方とは全く違う道を歩んでいただけに、結婚相手となる一つ年上の女性の父親が相撲の親方だったことは関係者に驚きを与えた。それが八角理事長(元横綱・北勝海、53)率いる八角部屋付きの陣幕親方(元幕内・富士乃真=ふじのしん、56)の娘であったことがさらに衝撃的だった。

「昨年3月の理事長選挙は八角理事長と貴乃花親方の一騎打ちで、両陣営が熾烈な多数派工作を繰り広げました。2人はいわば不倶戴天の敵。角界の常識からすれば、あり得ない組み合わせです。貴乃花部屋の関係者は“2人が知り合ったのは偶然”と説明していますが、にわかには信じがたい。

 目下の関心は、近いうちに開かれるであろう2人の結婚式に八角理事長が出席するかです」(相撲記者)

 今回の結婚報道がここまで注目を集めるのは、貴乃花親方を支持する親方衆が水面下で急増しているとみられているからだ。

 角界には現在、出羽海、時津風、伊勢ヶ濱、高砂、二所ノ関、貴乃花という6つの「一門」が存在し、事実上の派閥組織として機能してきた。冠婚葬祭をはじめ、出稽古や連合稽古、綱打ちなど、角界の行事はすべて一門を基本単位として行なわれてきた。

 そうしたなかで、土俵改革を掲げる貴乃花親方には、一門を超えた親方衆の支持が集まっているというのだ。

「一門のくくりに縛られない“貴乃花グループ”は定期的に集まりを開くなどして結束を深めている。陣幕親方にしても、高砂一門である八角部屋の部屋付き親方でありながら、早い段階から貴乃花グループの集まりに顔を出していた。最近になってその集まりの席に、陣幕親方のお嬢さんと優一くんが一緒に姿を見せ、親方衆に挨拶を済ませたといいます」(後援会関係者)

◆「過半数」まであと少し

 陣幕親方は現役時代、九重部屋(当時の九重親方は元横綱・北の富士、75)に所属。元横綱・千代の富士(故人)の弟弟子で、八角理事長の兄弟子にあたる。

「千代の富士が九重部屋の継承を巡って北の富士さんと諍いを起こし、八角親方が新たに部屋を興した経緯があり、富士乃真(当時、錦戸親方)はその時に八角部屋に移籍した。しかし、八角親方とは手が合わず、部屋の稽古にもほとんど顔を出さなかったといいます。

 そうしたなかで、貴乃花親方と接近していった。十両昇格に10年近くかかった経歴があるだけに“苦労人好き”で知られる貴乃花親方とは共鳴するところがあったのでしょう。昨年の理事選でも、富士乃真は高砂一門が立てた候補には投票しなかったといわれています」(前出の若手親方)

 こうした貴乃花グループの拡大は、長く続いてきた角界の一門体制そのものを揺るがしかねない動きだ。

 2年に一度行なわれる協会の理事選では、親方(定員105)の投票によって10人の理事が選出され、その理事たちの互選により理事長が決まる。一門のなかで候補者を調整することで、各一門が理事ポストを分け合い、本場所、地方巡業を含め様々な興行の利益配分が行なわれてきた。

 2010年の理事選で、そうした一門支配に正面から挑んだのが、貴乃花親方だった。二所ノ関一門を割って出馬し、新たに貴乃花一門を立ち上げた。当時は「貴の乱」などと騒がれた。

「理事を一人出すには最低9票が必要といわれます。現在、貴乃花一門に所属する親方は9人。執行部(理事会)では少数派に甘んじるしかなく、貴乃花親方の理事長への道はまだ遠いとみられていた。ただし、一門を超えた広い支持があるとなると、話は変わってきます」(前出の相撲記者)

 昨年3月の理事長選で敗北した後の勢力拡大は、様々な「冠婚葬祭」の席での様子からも読み取れる。

 昨年10月2日、川崎大師平間寺では故・北の湖理事長の一周忌法要が執り行なわれた。

「集まった18人の親方衆の顔ぶれは、玉ノ井(元大関・栃東、40)ら貴乃花グループとされる親方ばかり。八角理事長をはじめ協会幹部の姿はなく、“北の湖理事長の遺志を継げるのは貴乃花親方しかいない”という声まであがっていました」(前出の後援会関係者)

 また、今年2月には幕内昇進を決めた出羽海一門・木瀬部屋の十両・徳勝龍が都内で挙式。本来は顔を揃えるはずの出羽一門の親方衆の姿はほとんど見えず、ここでも貴乃花親方を中心とした若手親方グループが集まっていた。

「新横綱・稀勢の里が姿を見せて話題になった披露宴でしたが、関係者は貴乃花グループの“出席率”に興味津々でした。結婚披露宴は断髪式と並んで、力士にとっての一大イベントであり、大口のタニマチを呼んで祝儀を集める場です。それだけに、一門の親方が集まり、謝意を示すのが常識でした。一門体制崩壊の萌芽が確かに感じられた。隠れシンパも含めれば、貴乃花グループはすでに親方衆の過半数に迫るという説まであります」(同前)

◆「50代」を切り崩せ

 現役時代にガチンコ横綱として活躍した貴乃花親方が、同じく誰にでも全力でぶつかっていく稀勢の里の横綱昇進のタイミングで支持を広げていることは、歴史の必然を感じさせる。

 これまで改革派となる「ガチンコ理事長・貴乃花」誕生への最大の障壁は、既得権を守ろうとする50代以上の親方衆といわれてきた。そこにきての今回の結婚報道である。

「50代の陣幕親方が貴乃花親方に近づいたとなると、世代を超えて支持が拡大していることになり、理事会での過半数確保が現実味を帯びてくる。ただ、貴乃花グループとしては、この結婚話が理事選直前に表沙汰になり、親方衆が慌てて勝ち馬に乗ろうと雪崩を打つ展開がベストだったはず。ここから八角理事長サイドは巻き返しに必死になるのでは」(前出の若手親方)

 角界を二分する土俵外のガチンコ勝負の行方はギリギリまで目が離せない。

※週刊ポスト2017年5月19日号