しばらく前に、Benjaminという名のニューラルネットワークAIが書いた脚本を元にした短編映画『Sunspring』が作られました。

そんなAIのBenjaminが執筆した新たな脚本を元に、今度は『ナイトライダー』や『カンフューリー』などの作品でおなじみの「ザ・ホフ」ことデビッド・ハッセルホフも登場するSF短編映画が完成しました。



動画はArs Technica Videosより。作品名は『It's No Game』(「これはゲームではない」といった意味)です。

導入部分の大雑把なあらすじ:映画会社に招かれたふたりの脚本家連盟代表者たち。ストライキを予定している連盟だったものの、映画会社からはAIが脚本を書けるようになったから脚本家はもういらない、脚本家連盟の条件はもう受け入れないと言われてしまう――

もうお分かりだと思いますが、この作品自体がBenjaminを解説するような内容となっています。前作ではBenjaminが「80年代と90年代のSF」という大きな枠の中で、脚本家として進化させるために、より限定された具体的な枠組みの中で使用された結果が見られます。それが本作に登場する「Hoffbot」(デイビッド・ハッセルホフ作品を"データベース化した言語資料"=コーパスとして使用したもの)や、「Robobard」(シェイクスピア全集作品をコーパスとして使用したもの)などの部分です。

結局それらのコーパスを利用してBenjaminが作り出した文章は、『Sunspring』と似たり寄ったり。文章のような形をなしてはいるものの、意味を持った言葉の流れにはなっていません。BenjaminというAIは、作中にも見られる「猿の無限定理」(無限の数の猿に延々とタイプライターを叩かせ続けたら=無限にランダムな文字入力をすれば、いつかシェイクスピアの作品すら書かれる)に毛が生えたもの。コーパスを用いることにより使われる語句を限定し、ニューラルネットワークAIを使うことで、ある程度文章らしいものができるという仕組みです。これはBenjaminが言語を理解し、作り出すためのAIではなく、スマホの予測文字入力機能と同じように、これまでの入力(使用されたコーパス)を元にして、既に書かれた文章に続けて文章を作り出すシステムだからというのも理由でしょう。

現段階では、Benjaminに意味の通る脚本を書くことはできないでしょう。しかし、それが可能なAIが登場する日が来るとすれば、それは脚本家にとっての産業革命と言えるのでしょうか。他の仕事と同じようにAIによって脚本家という仕事が奪われる日が来るのでしょうか。『It's No Game』で描かれているのは、より良い労働環境を求めてストライキを予定する人間の脚本家、それに対して無条件で働いてくれるAI脚本家という構図でもあります。もしかしたら人々の仕事がAIによって取って代わられる未来には、仕事を失うことを恐れた人々による反AI運動、ネオ・ラッダイト運動などが展開されるかもしれません。

もちろん、創造的な職業である脚本家がAIに取って代わられる前には、きっとギズモード・ジャパンのような情報を伝えるメディアの記者たちがAIに取って代わられるんでしょうけどね(暗い目)…。

・Googleの超絵心ツール「AutoDraw」は描きたいものを先読みする

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reference: Qiita, FUZE via YouTube

(abcxyz)