イベリア半島南部のアンダルシア地方に位置するヘレス・サーキットで開催された第4戦・スペインGPのMotoGPクラス決勝は、ロードレース世界選手権が1949年にマン島TTで350ccクラスのレースとして初めて開催されてから通算3000戦の節目である。その記念すべきレースで優勝を飾ったのが、ダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ・チーム)だ。


記念すべき母国スペインのレースを制したダニ・ペドロサ(中央) この週末は金曜のみが雨模様で、予選の土曜と決勝レースが開催される日曜は、ともにこの時期にふさわしい温暖な天候が予測されていた。そのいずれのコンディションでも、ペドロサは一頭地を抜く速さを披露し続け、土曜の予選ではポールポジションを獲得した。

 本格的なヨーロッパラウンドの端緒となる当地は、シーズン全体のなかでももっとも盛り上がる大会のひとつで、スペイン出身のペドロサにとってもここは間違いなく得意コースだ。

 彼がレプソル・ホンダ・チームで最高峰クラスへ昇格した2006年はこのスペインGPが開幕戦だったが、そのレースでいきなり2位に入り、大きな期待をさらに上回る結果を披露した。以後、2014年までは毎年優勝もしくは表彰台を獲得し、トップスリーで終えることができなかったのは4位で終えた2016年のみ、という抜群の相性のよさを見せている(2015年は腕上がりの手術後経過観察により欠場)。

 だが、ここ数年のヘレス・サーキットは総じて「ホンダよりもむしろヤマハ向き」と認識されるようになり、今回もホンダ陣営の選手たちはいずれもレース前に苦戦を覚悟するような言葉を発していた。走行が始まる前の木曜にカル・クラッチロー(LCRホンダ)と話をした際には「ここはヤマハがいいだろうから、自分たちホンダ勢は苦労するだろうと思う」と述べたが、「ただし、ダニだけは例外で、彼はヘレスが大得意だからきっと活躍すると思う」とも付け加えていた。

 レースウィークのセッションが始まると、今年のヘレスは皆の事前予想に反してヤマハファクトリー勢が大苦戦を強いられる展開となり、それに反してペドロサが一貫して圧倒的な強さを発揮。レースでも持ち味を存分に出して、序盤から後続を引き離して優勝した。また、チームメイトのマルク・マルケスもペドロサの強さにこそ敵わなかったものの、2位に入ってホンダファクトリーがワンツーフィニッシュを飾った。

 ことほど左様に、レースというものはフタを開けてみるまではどうなるかわからない。

 今回、ホンダとヤマハ両ファクトリーがこのように明暗を大きく分ける結果となったのは、条件変化に敏感だと言われるタイヤ性能を存分に作動させることができたかどうかによるところが大きい。そしてそのタイヤ性能は、エンジン特性やそれをコントールする電子制御の使い方、的確なトラクションを路面に伝える車体性能、さらにはライダーそれぞれのクセや好み、乗り方の特徴など、実にさまざまな要素が複雑に絡み合って作動性を左右する。

 昨年のペドロサは、これらの諸条件がすべてピンポイントといっていいほど悪い方向で絡み合ったために苦戦を強いられた、という感もある。自分自身が復調してきた理由、そして、開幕直後の2戦で低迷したホンダが第3戦(アメリカズGP)と第4戦で優勢を占めた理由について、ペドロサは以下のように説明する。

「バイクの理解が進んで長所を把握し、セットアップと制御がうまく噛み合うようになってきた。このバイクにあった乗り方もわかるようになってきたし、過去のミスや欠点からも学習できて、いい方向性を引き伸ばせている」

 また、マルケスはここ数戦の流れと今後の展開について「アルゼンチン(第2戦)ではヤマハが無敵に見えたけど、今回は正反対の結果になった。次ではまた正反対の流れになるかもしれない。シーズンは長いから、ライバル勢には十分に注意を払わなきゃいけない」と簡潔に述べたが、その言葉が示すとおり、第4戦を終えてポイントランキングは、首位のバレンティーノ・ロッシからマーベリック・ビニャーレス(ともにモビスター・ヤマハ MotoGP)、マルケス、ペドロサの4名が10点以内に接近している。

 さらには、5番手にドゥカティのアンドレア・ドヴィツィオーゾが控え、序盤3戦でドゥカティへの対応に大苦戦を強いられているかに見えたホルヘ・ロレンソも、今回のレースで3位に入って存在感を大きくアピールする結果になった。

「本格的なシーズンのスタートはヨーロピアンラウンドから」といわれる所以(ゆえん)である。

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