冷え切った日韓関係は大統領選後どうなる

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 朝鮮半島情勢が緊迫するなかでの選挙戦を経て、韓国に新大統領が誕生する。候補者は「共に民主党」の文在寅氏(64)と、「国民の党」の安哲秀氏(55)だ。冷え切った日韓関係は、新政権の下で明るい未来を描けるのか。

 現在、韓国はTHAAD配備など、米中の間で右往左往し、反日アピールまで手が回らない状況。だが左派新大統領が船出して早々の窮地に“現実”を直視して日韓関係改善に動く可能性はあるのだろうか。

 産経新聞ソウル駐在客員論説委員・黒田勝弘氏は、初の左派大統領の登場となった盧武鉉政権(2003〜2008年)の例を挙げて比較する。

「盧武鉉は『反米だからどうだというのだ』と愛国主義を打ち出して強い支持を受けた。だが経済運営に行き詰まると、政権の後半には米韓FTA締結交渉をスタートさせ、親米路線に舵を切りました。当初、左派の支持母体は強く反発したが、盧氏がもともと左派のカリスマ的指導者だったので、批判を抑え説得ができた。同じことを保守系の大統領がやっていれば、反発はもっと広がっていたでしょう」

 安倍首相が「心からのお詫びと反省」を表明した2015年末の日韓合意に対して、「日本国内で“謝る必要などない”という右派の批判がそこまで高まらなかったのは、保守層の厚い支持がある安倍政権がやったことだから」(政治部記者)という構図と似ている。

「問題は韓国の左派新大統領に支持基盤の批判を抑えるカリスマ性が備わっているかどうか。文氏は人当たりこそ良いが、批判を顧みずに国益を優先した決断ができるかは疑問」(黒田氏)

 カリスマなき左派大統領であれば、現実的な方針転換はむしろ「変節」と指弾される。かつて人気取りで口にした慰安婦合意の破棄といった「反日公約」に縛られることになる。

 注目すべきは、文、安両氏の出身地である釜山の日本総領事館前に、すでに違法に設置された慰安婦像に加え、日本の朝鮮半島統治時代の徴用工の像を設置する動きがあることだ。

「韓国の左派ロビーは元慰安婦への国家賠償にこだわっていますが、その先には遺族も含めて100万人規模となる元徴用工への賠償請求につなげる狙いがある。それが今回の新しい像設置からも透けて見えます。新大統領が左派の反日要求を抑えられなければ、慰安婦問題が蒸し返されるだけでなく、新たに膨大な額の賠償を求められる可能性がある」(在韓ジャーナリスト)

 もちろん、1965年の日韓請求権協定で賠償問題が解決済みである以上、日本政府はいかなる賠償にも応じられない。日韓合意を受けて拠出した10億円も、あくまで元慰安婦を支援する基金への拠出である。そこに徴用工問題まで持ち出されれば、歩み寄りの余地は完全になくなってしまう。

 小粒候補による争いとなった大統領選の先に待っているのは、日韓関係「史上最悪の5年間」である。

※週刊ポスト2017年5月19日号