イヴァンカ・トランプの女性を応援したい気持ちは本音? 建前?

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先日、アメリカのドナルド・トランプ大統領の長女・イヴァンカが「ファースト・ドーター」として、ドイツで女性の活躍を促進する会議「W20」に出席しました。

トランプ氏も自分自身も女性の活躍を応援している

「W20」のなかでイヴァンカは、トランプ氏が過去に女性を軽視する発言をくり返していたことについて聞かれて、こんなふうに答えていました。

この数十年、父とともに、またはその下で働いた数千人の女性たちこそ、父が女性の可能性を強く信じていることの証明です。

(「TIMES」より翻訳引用)

事実にもとづきつつも世間の見方から乖離した発言に、会場からはざわめきが起こりました。

イヴァンカは大統領選挙期間中にも、トランプ氏のセクハラ発言の後始末をしていました。そのときもやっぱり、トランプ氏も自分自身も、女性の活躍を応援していることを強調しています。

立場上そう言わざるをえないのはわかるのですが、本当のところイヴァンカはどう考えているのでしょうか?

イヴァンカが5月2日に発表した書籍『Women Who Work: Rewriting the Rules for Success(働く女性:成功のルールを書き直すということ)』(以下『Women Who Work』)に、そのヒントがありました。

女性を引っ張っていきたい意志がビシビシと伝わる、イヴァンカの著書

『Women Who Work』によれば、「Women Who Work」というコンセプトはもともとイヴァンカのファッションブランドのスローガンであり、#WomenWhoWorkというハッシュタグを使ったキャンペーンだったそう。

イヴァンカは、メディアやファッション業界がいまを生きる女性の思いをきちんとくみ取っていないと感じたところから、このコンセプトにたどりついたとつづっています。

『Women Who Work』には、女性が自分なりに成功するために必要な心がまえや習慣がかなり具体的に書かれています。

たとえば「昇給・昇格の交渉をするには」とか、「1週間の予定を立てるとき、『緊急じゃないけど重要なこと』に時間を割こう」(スティーブン・R・コヴィー氏の「7つの習慣」を実践してるそう)といったことです。

またこんなくだりには、イヴァンカの実感がこもっているように思えました。

働く女性にとって、人生とはワーク・ライフ・バランスの実現のためにあるわけではありません(ご存じの通り、ワーク・ライフ・バランスなんて完全な神話!)。それより、来ては去る瞬間をすばやく捉えて、自分のゴールや情熱を注意深く優先順位づけしていくことの方が大事です。

(『Women Who Work』P131より翻訳引用)

家事も育児もアウトソースできる財力のあるイヴァンカでも、ワーク・ライフ・バランスなんて実現できていないと感じているんですね。

他にもイヴァンカ自身の体験が日常生活から仕事の進め方まで織りこまれているし、いろいろな著名人や専門家の発言もうまく引用されています。

大統領選挙期間中に書かれたそうなので、イヴァンカ本人がタイプしたというよりチーム・イヴァンカとして作ったのだろうと想像しますが、それを差し引いても説得力があると思います。

そして何より、悩める女性たちを導いていきたいというイヴァンカの思いはビシビシと伝わってきます。

とはいっても、すんなり受け取れない面もあり

とはいえ、次のような部分を読むと、ちょっと浮世離れしている気もします。

自分の価値を発見し、自信を養い、名をあげるために最良な方法のひとつは、自分の価値をはっきりと見てくれる人で自分のまわりを固めることです。チームも、業界も、お付き合いも、人生全体においてもです。

(『Women Who Work』P73より翻訳引用)

たしかに価値観の近い人とお付き合いするほうが話が早いし、自信もつきやすいとは思います。自然にできる人間関係だけでなく、自分が成長できるような人間関係を作っていこう、という考え方もわかります。

でもうがった見方をすると、若くして殿様商売の経営者になってしまったために、自分で上司や同僚や取引相手を選べない人の立場がわからないのかな、という印象をもちます。

さらに『Women Who Work』のなかでは産休の重要性も書かれているのですが、「New York Times」によると、イヴァンカの会社では2014年まで産休制度がなかったという衝撃証言が出ています。

しかもその証言によると、産休を希望した女性に対しイヴァンカ自身が「私だって出産して1週間で復帰したのよ」と言い放ったそうです。それは、あなたにはできるかもしれないけど...ってなりますね。

となると、「Women Who Work」という耳あたりの良い言葉は、単にイヴァンカ・トランプの商品を売るため、またはイヴァンカという人物のブランドを高めるために便宜的に使っているだけのハリボテなのでしょうか?

思いもあり、期待もあり。現実の影響力はまだこれから

ただ、同じ「New York Times」の記事では、次のようなエピソードも紹介されています。

大統領選挙投票日がせまるころ、トランプ氏が「女性器をつかんでやる」と発言した過去の映像が発掘され、トランプ陣営はその対応に追われていました。

そのときトランプ氏本人は、「気分を害した人がいるなら謝罪する」という限定的な感じの謝罪にとどまったのですが、イヴァンカもっと真摯に謝罪すべきだと主張していたそうです。そしてその主張が受け入れられなかったので、対応を検討する会議の場から涙を流してとび出したのだそう。

そんなエピソードからは、イヴァンカのどこかにナイーブなほどの正義感や責任感があるように受け取れます。『Women Who Work』の前書きにも、「私には、可能な限りポジティヴな影響を及ぼすべく自分の声を使う特権と責任があると認識しています」と書かれています。

トランプ氏が大統領である現実を受け入れつつ、移民排斥や環境軽視といった極端な政策への傾斜をなるべくマイルドにするには、トランプ氏自身に考えを変えてもらうのがひとつの方法です。そのために彼に影響を及ぼせる人物として、イヴァンカはあらゆる方面から最重要人物のひとりと見られています。

たとえばトランプ政権は地球温暖化防止策に関するパリ協定から脱退する方向に動いているのですが、環境保護団体はイヴァンカを頼りに、トランプ大統領を説得してもらおうと呼びかけています。

また、冒頭のドイツのカンファレンスにイヴァンカを招待したのはドイツのアンゲラ・メルケル首相。その目的はトランプ大統領に接近することだったと見られています。

「New York Times」によれば、トランプ政権が資金提供をカットすると言われている女性向け医療支援団体「Planned Parenthood」も、イヴァンカと個別に面会の場をもっていたそうです。

こういった人たちの期待にこたえることができれば、イヴァンカも『Women Who Work』が飾りじゃないと世に示せることでしょう。逆にこれから何の影響も与えられなかったとしたら、何のためにいるの? という風あたりがいっそう強くなっていきそうです。

[Women Who Work: Rewriting the Rules for Success, TIME_Germany Speech, TIME_Ivanka Trump Booed in Berlin, New York Times, Washington Examiner]

写真/gettyimages

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