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●今後のトレンドとなる縦長ディスプレイ
Samsung Electronicsの最新スマートフォン「Galaxy S8」「Galaxy S8+」の海外での販売が始まったが、そのタイミングで、韓国・水原市にある同社本社にて、Galaxy開発担当者を囲んでのプレス向けインタビューがセッティングされた。「Galaxy Note 7」のバッテリー問題で売上を大きく落としたSamsungが、Galaxy S8には社運をかけていると言っても過言ではないだろう。

Galaxy S8とS8+は、ディスプレイサイズがそれぞれ5.8インチと6.2インチで、ディスプレイ以外のスペックはほぼ同等。ディスプレイの大型化にともなって大きさや重さ、バッテリー容量が異なるが、プロセッサやカメラなどのハードウェア、ソフトウェア、そしてデザインは共通だ。

今回のGalaxy S8の最大の特徴がこのディスプレイだ。18.5:9という縦長のディスプレイを採用しており、S8+で6.2インチというサイズながら、横幅が抑えられているので持ちやすい。ディスプレイの端がカーブしたエッジディスプレイというだけでなく、背面も同様にカーブしているため、手のひらにフィットし、持ちやすさの向上が図られているという印象である。

この18.5:9という比率のディスプレイを採用したのは、「Galaxyの見た目が変わる必要があったから」だと、同社グローバル商品企画グループのシニアプロフェッショナルであるチェ・スンミン氏は言う。スンミン氏は、前モデルからフルモデルチェンジとなったGalaxy S6の商品企画も担当しており、Galaxy S7 edgeで完成度を高め、そしてS8で再びフルモデルチェンジを担当。「従来と同じ形でいいのか」という観点から検討を行ったそうだ。

その中で、ディスプレイをさらに大きくという要望と、サイズを大きくして欲しくないというニーズに応えるために、ディスプレイの比率を変えることで最大化することを考え、この細長い形状に行きついたのだという。

この比率が18.5:9になった理由は、「スマートフォンの画面比率が16:9になった理由と同じ」だとスンミン氏。当時、テレビ放送が4:3、ハリウッド映画が21:9となっていて、その中間にあるアスペクト比として16:9が採用された、という。現在、テレビが16:9、映画が21:9となっており、その中間が18.5:9というわけだ。

こうしてアスペクト比が決まり、それをディスプレイメーカーに発注したということで、もともと細長いディスプレイコンポーネントがあって、それに合わせて商品を企画したのではないそうだ。

最近のスマートフォンは、SNSやブラウザを始め、「リストビュー」で上から下にコンテンツが並ぶスタイルが多い。そうしたコンテンツに対して細長のディスプレイは相性が良く、21:9の映画を視聴するにも都合がいい。そのため、スンミン氏は他社も追随すると予測する。LG電子も18:9とやや比率が違うが、ハイエンド端末の「LG G6」で同様に細長いディスプレイを採用しており、今年から来年にかけてのトレンドになる可能性はあるだろう。

●ついにホームボタンがセンサーに
ディスプレイサイズ最大化にともなう大きな変化が、ホームボタンの変更だろう。Galaxyの象徴とも言える物理キーによるホームボタンが、S8ではディスプレイ下部のタッチセンサーとなった。

ディスプレイの最大化によってホームボタンのスペースが取れなかったのためこの仕様になった模様だが、社内外から、今回の変更は「チャレンジ」という声があり、「ユーザーにどう受け止められるか悩んだ」とスンミン氏は明かす。タッチセンサーながら感圧センサーにすることで、物理キーと同じ体験ができるようにしたと説明する。

実際に触れてみると、バイブレーションによってボタンを押しているような感覚はあり、iPhone 7などと似たような挙動をする。ただ、物理キーとは異なるのは確かで、デザイン面も含めて、ユーザーの反応は気にかかるところだ。

S8はエッジディスプレイを採用したことで、本体の横幅一杯までがディスプレイとなっている。その結果、正面から見ると文字通り「フレームレス」であり、ホームボタンの変更もともなって上下左右ギリギリまでディスプレイを広げられ、ボディに対する画面比率を最大限まで高めている。同社はこれを「Infinity Display」と呼んでいる。

このInfinity Displayは、一般的なスマートフォンのようにディスプレイの四隅が角張っておらず、曲線を描いている。これまでの、スマートフォンの画面と言えば四角いという固定観念を覆すデザインだが、この曲線が「見た目と違って難しい技術」だと語るのは、製品デザイン1グループのシニアデザイナーであるキム・ユンジン氏。

「ハードウェア的にはディスプレイを削るような作業を、ソフトウェア的にはコーナーラウンドがより滑らかに見えるような処理をしている」とユンジン氏。真四角に比べて曲線にすると、1つの角につき111pxが表示されない領域になるが、そうなったとしても、調和の取れたディスプレイデザインを目指したとのことである。

こうしてできあがったGalaxy S8のデザインだが、デザイン性に関して個人的には向上していると思う。細長いボディに全面ディスプレイと言いたくなるほど全体をディスプレイが占めているが、イメージは未来的でスマート。ほかの16:9の端末がやぼったく見えるほどだ。

「電話の受話器」と考えれば、スマートフォンが再び細長いデザインへと回帰していると言えなくもないが、新しい進化を感じさせるデザインに仕上がっている。

●「静かな」デザイン
ホームボタンがタッチセンサーになったことで背面に移動したのが指紋センサーだ。背面上部の中央にカメラがあり、その隣に指紋センサーが配置された。ここはもともと心拍センサーがあった場所で、ユーザーにとっては「使い慣れた位置」とスンミン氏。従来よりも本体が長細くなって大型化したので、位置的には指が届きづらいが、新たに搭載された虹彩センサーを併用することでカバーできるという認識だ。

背面のラウンドシェイプは、平面となる部分を最小限に抑え、徐々に両サイドに落ちていくことで、前述の通りグリップ感の向上を図り、背面ガラスと側面のメタルの境界線でも手に引っかからないように配慮した。「100台以上のプロトタイプを製作し、目を閉じた状態で手になじむかどうかをテストして選んだ」とスンミン氏は述懐する。

通常はディスプレイ上部にあるインカメラや各種センサーは、必要なものではあっても画面表示に対しては邪魔者となる。画面を使っているときには「認知する必要がない部分なので静かにした」とユンジン氏は表現。ブラックベゼルに加えて反射防止のコーティングを施したことで、ベゼルの中にレンズやセンサーが沈み込み、「静か」な外観を目指せた。

背面カラーは、グローバルでは5色を用意。グローバルのデザインセンターと協力してカラートレンドを分析しながら採用したそうで、一体感を重視したブラック、落ち着いたグレー、これまでのブルーをもう一度分析して作り上げたコーラルブルー、安心できるグレー、そしてパープルを加えたオーキッドグレーの5色で、特にオーキッドグレーは「落ち着いて神秘的なカラーで、Samsungのアイデンティティカラーになるのでは」とバン・ヘジン氏。

Galaxy S8は、ガラリとデザインを変えることで心機一転というイメージを示すとともに、ディスプレイやホームボタンなどで新しいチャレンジに取り組んでいる。Note 7で問題となったバッテリーに関しても、多くのコストと手間をかけて検査態勢を強化するなど対策を進めており、同様の問題は発生しないという自信を見せる。Samsung復活ののろしとして、Galaxy S8は大きな役割を担っているのだ。

(小山安博)