仏パリのルーブル美術館前で、決選投票後に支持者らに手を振るエマニュエル・マクロン氏(2017年5月7日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】かたちにとらわれない私生活と政治家としての経験の浅さで知られるエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)氏(39)は、従来の習慣と闘い、そして伝統を打ち破って、このほどフランスの新大統領に選出された──。

 フランス史上最年少で大統領に就任するマクロン氏は、仏北東部の都市アミアン(Amiens)出身。2人の医師を両親に持つ。国内屈指の名門大学でエリート教育を受けたことを除けば、フランスの伝統的なリーダー像には当てはまらない。

 マクロン氏の妻、ブリジット・トロニュー(Brigitte Trogneux)さん(64)は、リセ(日本の高校に相当)時代の元恩師。2人が出会った当時、既に3人の子どもを持つ既婚者だったが、彼女にマクロン氏は恋愛感情を抱いた。

 こうした2人の関係は、マクロン氏がメディア通であることも手伝い、仏高級雑誌の魅力的なトピックであり続けている。

 他にも、3年前にはほぼ無名だったことや、既存政党に所属していないことなど、近代史において大統領に選出された人物としては最も「らしくない」経歴の持ち主の一人だ。

 哲学や文学、クラシック音楽を愛するマクロン氏が、「左派でも右派でもない」とする政治運動「前進(En Marche)」を立ち上げたのは、わずか12か月前。

 フランスでは一般的でないこの立ち位置は当初、経済政策を右派から、社会制度を左派から取り入れて組み合わせただけと皮肉られた。

 また、野心的な元投資銀行家で、その後社会党のフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領政権で経済相を務めたマクロン氏だが、その年齢と経験の浅さから、大統領の重責には耐えられないだろうとの声も上がっていた。

 39歳のマクロン氏は、ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte)が1804年に政権の座についた当時の年齢よりも1歳若い。今回の大統領選でマクロン氏の勝利を確信していた人は、同氏の顧問グループを除いてはごくわずかだった。

■オバマ前米大統領の手法も

 しかしマクロン氏は、国の進化をさらに推し進める若く大胆な人物とのイメージを生かして、自身の政治運動に賛同するボランティア数千人を動員。選挙活動を巧みに展開させた。こうした手法は、バラク・オバマ(Barack Obama)前米大統領が2008年に大統領に当選した際に行っていた草の根運動を一部モデルにしたものだ。

 マクロン氏は学生時代、フランスの有名な哲学者のアシスタントを務め、また多数の指導者を排出してきたフランス国立行政学院(ENA)をはじめとする国立大学でエリート街道を歩んできた。

 卒業後は仏財務省に就職。その後、ロスチャイルド(Rothschild)系の投資銀行で企業の合併買収を成功させ、数百万ユーロを稼ぎ出したと言われている。

 反対派はこの経歴について、マクロン氏が「グローバル資本主義志向のエリート」である証拠だとしてやり玉に挙げた。同氏の自信に満ちた態度や高価なスーツ、企業家の擁護なども、さらなる攻撃の材料となった。

 さらに、文学や詩などの要素を取り入れた長いスピーチも、抽象的で単なる知識のひけらかしだとして批判されている。

 また一般の有権者と気さくに接するマクロン氏だが、過去には人を見下すような態度をめぐり批判されたこともある。同氏は過去に、食肉加工場の作業員について「読み書きができない」と表現したり、一時解雇された労働者については「アルコール中毒」、公共交通機関を利用する人については「貧しい人々」などと発言したりしていたことが指摘されている。

 昨年5月には、Tシャツ姿の反対派の人と口論となり「スーツを買うための最善の方法は働くことだ」と冷静さを失ったマクロン氏の姿も伝えられていた。
【翻訳編集】AFPBB News