『美女と野獣』(c)2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

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 劇場に足を運ぶまで、実写版『美女と野獣』はミュージカル映画なのだろうと、なんとなくふわっと想像していた。SNSなどで感想を調べても、本作を「ミュージカル映画だ」と評する声は少なくない。しかし、原作アニメーションの世界観を忠実に再現した実写版『美女と野獣』は、“いわゆる”ミュージカル映画とは大幅に異なる仕上がりになっていたように思う。

 筆者はなぜ、本作に対して「きっとミュージカル映画だろう」という先入観を持ったのか。理由のひとつとして、日本語吹き替え版がミュージカル界の役者を中心に固められていることが挙げられる。ベル役・昆夏美、野獣役・山崎育三郎を筆頭に、脇役にもミュージカル経験者が多いため、作品もきっとミュージカル仕様なのだろうと思ったのだ。

 また、劇団四季版ミュージカルの印象が波及した点も大きい。1995年に初演を迎え、現在に至るまでロングランを記録しているとあって、『美女と野獣』といえばアニメ版の次にこのミュージカルを連想する人も多いだろう。この劇団四季版はディズニーが後ろ盾になっているため、アニメ版と同様に音楽はアラン・メンケンが担当し、衣装もアニメのデザインがもとになっている。そのため、実写映画で生身の人間が演じるのであれば、ミュージカル版に近い仕上がりになるのではと考えられたのだ。

 しかし、いざ実写版を見てみると、ストーリー序盤の“朝の風景”あたりで早くも違和感を抱いた。というのも、曲中で役者の身体表現がとても控えめだったためだ。

 ミュージカルといえば、“(セリフの延長である)歌と(身振り手振りの延長である)ダンス”で構成されているものが一般的だろう。中にはダンス要素が極めて少ないミュージカル作品もあるが、それでも役者は動作を大げさにするなど、身体性が過剰に表出しているものがほとんどだ。舞台作品であろうと映画作品であろうと、その点に大きな違いはない。しかし、実写版『美女と野獣』では、そうしたミュージカル的な“歌とダンス”がほとんど見られなかった。舞踏会のシーンなどでも、歌はダンスのBGMとしての作用が強く、セリフの延長としては機能していない。さらに、“朝の風景”のようなダンスのないシーンでも、役者の身振り手振りは小ぢんまりとしている。そのため、本作をミュージカル映画と位置付けるには、どことなく疑問が感じられたのだ。

 しかし、ミュージカル的なダンスシーンがないからといって、決して物足りないというわけではない。役者の身体表現が控えめな分、スクリーンの躍動感はカメラワークなどで補われていた。まず、カット割りがとても細かい。ミュージカル映画といえば、少し前に『ラ・ラ・ランド』のワンカット風オープニングが話題になったばかりということもあって、本作ではカットの細かさが余計に際立っていたように感じられる。また、長めのカットでも大胆なカメラワークが目立った。カットに合わせて背景の美術もテンポよく移り変わるため、画面には常に動作性が感じられ、音楽のノリとうまく噛み合っていたのだ。

 「Be Our Guest」では、そうした画面演出に加えてCGもとても豪華だった。おそらく、この曲は本編で唯一歌い手がダンスも披露していて、ミュージカル色の強い曲だろう。しかし、ルミエールのダンスよりも派手なカメラワークとCGが全面に出ているため、やはり身体性はあまり感じられない。むしろ、CG部分があまりに多いため、実写なのかアニメーションなのか、一瞬わからなくなってしまうほどだった。

 そもそも、城に住むキャラクターたちのほとんどはラストまでCGで描かれているため、リアルな身体性はゼロに近い。また、カメラワークもアニメ版に大きく寄せてあるので、実写でありながらもアニメーション的な側面が強く感じられるのだ。

 実は、ディズニーはこうした“実写×アニメーション”の音楽映画を半世紀以上前から手掛けている。『南部の唄』(1946)や『メリー・ポピンズ』(1964)などは、本作と比べれば役者やキャラクターの動作性に重きが置かれていて、ミュージカル色が強い。しかし、これらの流れを汲み、最新鋭の映像技術を投じて役者の身体性をそぎ落として完成したのが、今回の『美女と野獣』なのではないだろうか。

 実写版ということで、ついついほかの王道ミュージカル映画と比べたくなってしまうが、やはり本作はディズニー映画の系譜にのっとって語るべき作品なのかもしれない。

■まにょ
ライター(元ミージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。