ツアー通算2勝目を挙げたブライアン・ハーマン(撮影:GettyImages)

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「ウェルズ・ファーゴ選手権」最終日の終盤は、文字通り、手に汗握る展開だった。首位タイで先にホールアウトしたダスティン・ジョンソンとパット・ペレスのプレーオフになるのかどうか。その2人にブライアン・ハーマン、ジョン・ラームが追いつき、追い抜いて優勝することができるのかどうか。
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ゴルフファンの興味や期待が膨らむ中で72ホール目のフェアウェイに立っていたハーマンの姿は少々頼りなく見えた。17番でバーディを奪い、ジョンソン、ペレツと並ぶ通算9アンダーで18番のパー5を迎えたハーマン。一度は手にした5ウッドは彼にとってはグリーン手前へ運ぶための安全策のはずだった。だが、観衆から上がった落胆の声に反応し、彼は3ウッドへ持ち替えた。
そんなハーマンの姿にハラハラドキドキさせられた。案の定、彼の2打目はグリーン左奥へオーバー。観衆の落胆の声が聞こえてきた。木の枝を交わしながら低くしか球を出せない難しい寄せが残り、第3打はグリーンに乗っただけ。観衆の落胆のみならず、ハーマンの落胆ぶりも見て取れた。
だが、その直後、ハーマンは9メートルのバーディパットをカップに沈め、勝利をもぎ取った。激しいガッツポーズと雄叫び。グランドスタンドの大観衆の狂喜の声。
たった1打で大きな落胆が大きな喜びに一変するこういう瞬間こそがゴルフの醍醐味だとつくづく思った。「ああ、ダメだ」と肩を落とした選手が、たった1打でチャンピオンに様変わりした場面を目にすると、人生にもそんな大どんでん返しはきっと起こる、起こせると思えてきて元気が出る。ゴルフで人々に夢や勇気をあげるとは、そういうことだとつくづく感じた。
あの72ホール目のグリーン上でハーマンの胸の中は不安でいっぱいだったそうだ。「15番では3パットしたばかりだったから以後はパットが不安だった。18番の3打目のチップは決してグレートではなかった。でも僕は必死に信じようとした。3打目で乗せたグリーン上のあの位置は、あれが狙うべき位置だったのだと思うようにした。ずっとハードワークを続けてきたのだから、僕にはできる、僕ならできると自分に言い聞かせ、信じようとした」
そうしたら、9メートルのバーディパットはカップに吸い込まれ、世界一のDJらを押さえ込んで逆転優勝。2014年のジョンディア・クラシック以来、通算2勝目。30歳のレフティが挙げた3年ぶりの勝利。信じるものは救われる――ハーマンのうれしそうな笑顔から、そんなフレーズが聞こえてきた。
マスターズの初日スタート前に棄権したDJの出場4試合連続優勝は惜しくも達成されなかったが、6試合ぶりの実戦でいきなり優勝に迫った復活ぶりは、さすがだった。
階段から転落して強打した背中と左ひじの回復に努めていたDJがクラブを握ったのは、今大会のわずか10日前のこと。初日は「少し守りに入ったが、アンダーパーだからOK」と自分に言い聞かせた。2日目はやや低迷したが、3日目と最終日で巻き返し、2位タイに終わったものの、「フィーリングも調子も戻りつつある」と自身の復帰ぶりにまずは合格点を付けた。
DJと並んで2位になったペレツは世界ランキング上位50位以内にジャンプインし、全米オープンの地区予選をスキップできることを喜んでいた。
72ホール目でイーグルを奪えばハーマンに追いつくことができたラームは5番ウッドでもグリーンをオーバーし、結果は4位に終わったが、22歳の新鋭は今季すでに挙げた初優勝にさらなるトップ10フィニッシュを次々重ね、爽やかな笑顔と急速な成長ぶりを披露してくれた。それぞれが力を出し尽くし、それぞれが満足感を得た最終日。心地良い空気が伝わってきた。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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