横浜FC戦で6試合ぶりの先発を飾った橋本。名バランサーとしての本領を発揮した。(C)SOCCER DIGEST

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[J2リーグ12節]東京V 1-1 横浜FC/5月7日/味スタ
 
 見どころ満載の好勝負だった。
 
 J2リーグの上位対決。4位・東京ヴェルディが本拠地に首位・横浜FCを迎えた一戦だ。
 【東京V vs 横浜FC PHOTO】白熱の上位対決は痛み分けのドロー

 序盤からペースを掴んだのは東京Vだった。CFドウグラス・ヴィエイラが前節に脳しんとうを起こして欠場し、得点源のアラン・ピニェイロも筋肉に張りがあったため大事を取ってベンチスタート。今季初の純国産メンバーで先発を構成したのは、まさにミゲル・アンヘル・ロティーナ監督にとっては苦肉の策だった。

 ところが、これがことのほかハマった。機動性能が高く、果敢なフォアチェックで横浜FCのパスワークを寸断したのだ。開始7分には直接FKのこぼれ球をCF起用に発奮した高木大輔がねじ込んで先制と、願ってもない時間帯にリードを奪う。
 
 だが、3連勝中と波に乗る首位チームも負けていない。30分、ワンチャンスをモノにし、同じくリスタートから同点に追いつく。好調イバが頭ですらした球がポストに当たり、それを佐藤謙介が難なく蹴り込んだのだ。余勢を駆ってグッとラインを押し上げた横浜FCは、みるみるうちに東京Vのボール回しを自陣内に限定。見事に修正して見せた。
 
 後半も目まぐるしく攻守が入れ替わる白熱の展開を見せ、両チームとも、組織としての連動性の高さを示した。より多くの決定機を迎えた東京Vが勝ち切れなかった印象が若干あるものの、ドロー決着は妥当な結果だろう。
 
 正直言ってガチガチのソリッドな守り合いを予想していただけに、両雄がアグレッシブな撃ち合いを演じたのは意外だったし、観ていて痛快だった。まったくもって、今季のJ2は読めない。
 
 この日、J2の上位4チームはいずれも1ポイントの確保にとどまった。順位は、横浜FCと湘南ベルマーレが勝点24で並び、得失点差で前者が首位。2ポイント差で名古屋グランパスと東京Vが追い、勝点を21に伸ばしたアビスパ福岡が5位に浮上してきた。1位から11位・愛媛FCまでの差はなんと6ポイント。12節を終えての数字とは思えない、大混戦だ。
 
 試合後、東京Vの元日本代表MF、橋本英郎に話を聞いた。いったい今季のJ2にはどのような傾向があり、いかなる力関係、勢力図に落ち着きそうなのか。歯に衣着せぬ目利きのひとが、がっつりと持論を展開してくれた。
「いやもう、文字通りの混戦ですよ。勝点が表わしてる通りやと思います。上位に食い込めてないチームにしても、決して弱いわけじゃなく、ただ決定力が足りなかったりとか、やろうとしているサッカーのところでミスを犯す、それが取り返しのつかないミスになって負けている。
 
 ただ、これがけっこうJ2では大事なんです。ヴェルディも去年までは取り返しのつかないミスをしてたのが、今年はいい形でチャレンジはしつつも、そのミスだけはやめようとチーム全体で意識して取り組んでる。そこが大きな違いになって、いまの順位になってると思うんです。なので、ヴェルディにしてもすごく力が抜けてるというわけではない」
 
 現代サッカーの流行りと言えばそれまでだが、どこもかしこも3-4-3システムを採用している。ただでさえソリッドな戦術が横行しているJ2において、ほぼ5バックに近いこの布陣の繁栄は、守備重視の傾向に拍車をかけているのではないか。この点についてはどう捉えているのだろう。
 
「みんなで守備をやる。3-4-3は実際には5人の守備ラインと、その前に4人が並んで、キーパーも入れたら10人で守ってる場合が多い。そうなるとなかなか点が取れません。じゃあそこからアイデアを持って切り崩せる選手がいるか。J1ならいますけど、J2はそう多くはない。アイデアはないけど、1対1なら勝てる、フィジカル勝負なら勝てる選手はいる。でも彼らにしても、すぐに数的不利な状況に追い込まれますからね。簡単じゃないですよ」
 
 この日、対戦相手の横浜FCにはターゲットマンのイバがいた。このノルウェー人CFをいかに抑えるかは東京Vにとって重要なテーマだったが、失点シーンでマークを外してしまった以外は、ほぼ仕事をさせなかった。
 
「(DFを)背負ってのプレーは半端なかったし、J1の上位チームでやっても活躍できるでしょうね。それでもウチがある程度抑えられたのは、人数を掛けてるから。1対1の対応やと確実にやられるけど、2人目、3人目のところでカバーできる。シュートブロックとか最後のところで。ヘディングはあんまり得意そうじゃなかったですけどね」
 
 東京Vはシーズン開幕戦で黒星を喫した。相手は徳島ヴォルティス。いまでも「あの試合の徳島がここまでで一番強かった」と橋本は断言する。
 
「勢いと若さがあって、しかもどんどんチャレンジしてくるんで、太刀打ちできなかった。これは大変なシーズンになりそうやなって覚悟しましたからね。安定感はないかもしれないけど、ああいうチームはやっぱり怖いですよ」
 
 では、今季J2の昇格レースはどんな展開を見せるのか。
 
「まだはっきりは見えてません。去年セレッソにいた感じから言うと、タレント力のところでどうやっても抜けてたと思うんです。同じく昇格したエスパルスにしても質が高かった。じゃあ今年はどうかと言うと、名古屋くらいじゃないですかね。それ以外で抜けてるチームは見当たらない。ホンマに拮抗してますよ。J1でも通用するセンターバック、あるいはフォワードがいるか。そうした選手をチームとしてうまく活用できているか。そういうところも差になってくるのかなと」
 
 そのなかで東京Vはどんな上積みをしながら、上位に食らいついていくのか。
 
「まだまだリスクを冒してないのが現状。攻めに特化しようと思ったらリスクを冒すことになる。でも、勝ちを優先するならそれは難しい。ただ、どこかで切り替えて点を取りにいかないと勝ち残れないと思うんです。今日の試合(横浜FC戦)はある程度持たされてた部分はありますけど、けっこうチャレンジできてた。ああいう時間帯をもっと作って、勝ち切る力を身に付けたいですね」
 
 ここにきて怪我人が増加傾向の東京ヴェルディ。選手層や戦術的柔軟性など、早くも指揮官とチームの真価が問われている。
 
 シーズンはおよそ4分の1を消化し、残りは30試合。はたして緑の名門は、9年ぶりのJ1昇格を果たせるのか。迷い悩みながらも、着実に歩を進めている。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)