東芝の綱川智社長(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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 東芝は鋭く対立しているPwCあらた監査法人を、準大手の太陽監査法人に交代させようと根回しを続けている。国内4大監査法人の一角を占めるPwCあらたは、東芝と関係の深い以下企業の監査も担当している。

・東芝プラントシステム(東芝の出資比率49.7%)
・ニューフレアテクノロジー(同50.0%、ジャスダック上場、半導体製造装置のメーカーで東芝機械から分社)
・東芝テック(同50.0%、POSなどの流通端末で国内シェア50%)
・芝浦メカトロニクス(同36.5%)
・西芝電機(同54.4%、船舶用電機最大手)

 売上5兆円規模の東芝の会計監査を、4大監査法人以外の準大手が実際に行えるのかと疑問視する向きも多い。国際的なネットワークや原子力事業への知見を備えた監査法人は、国内では少ない。

 3月に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した米原発子会社ウェスティングハウス(WH)の監査は、米大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が担当し、関係筋によれば、WHを調査していた米大手法律事務所K&L Gatesからレビュー報告書がPwCに届かなかったために、東芝は決算発表ができずに2度も決算発表を延期。ついに3度目はPwCあらたの「適正意見」が得られず、「意見不表明」という歪なかたちで2016年4〜12月期決算の発表が強行され、事業継続(ゴーイングコンサーン)に「重要な疑義がある」との注記まで付けられた。太陽への変更は、自社に都合の良い監査をしてくれる「オピニオン・ショッピング」(監査意見の購入)に該当する恐れもあり、大きく信頼を失う可能性もある。

「いっそのこと、いったん上場廃止にして、一から出直したほうがいいのではないか」(市場関係者)

●本決算延期の可能性も

 太陽を一時的な監査法人に選び、利害関係の薄い大手に支援させるという弥縫策が検討されているともいわれている。4大監査法人の一つ、新日本監査法人は東芝の不正会計を見逃し、PwCあらたに交代したという経緯があるため、新日本が手を貸すことはない。

「残るのはトーマツとあずさだが、共に買収企業の資産査定などで東芝と過去に取引がある。『利益相反』になる恐れがあるので、通常では引き受けない」(関係筋)

 東芝の社外取締役で社内の監査委員会委員長を務める佐藤良二氏は、トーマツの元CEO(包括代表)である。トーマツが太陽の弱点をカバーするリスクはかなり大きい。中空麻奈・BNPパリバ証券投資調査本部長は、4月27日付毎日新聞でこうコメントしている。

「新監査法人から適正意見を得られたとしても、東芝は(PwCあらたに)疑問視された点をどのように説明し、納得させたのか、公表する必要がある」

 東芝の会計基準は米国基準であり、準大手の太陽が米国会計基準の監査に弱い場合、東芝の会計基準が日本基準に変更される可能性もある。その場合、作業量はさらに増えることになり、17年3月期連結決算の発表はさらに数カ月単位で遅れる可能性が高まる。5月中の発表が延期となれば、東京証券取引所による東芝の上場廃止という処分も現実味を帯びてくる。
(文=編集部)