「Thinkstock」より

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 何気ない会話をはずませる“雑談力”がビジネスシーンで注目されているように、コミュニケーションスキルをアップさせたいと感じている人は多い。その一方で、世の中には、余計な一言を発して相手を不快にさせてしまう、いわゆる「一言多い人」も一定の割合で存在する。

 そうした人たちは、なぜ会話のなかで余計な一言をつけ加えてしまうのだろうか。また、余計な一言でイラッとしたときは、どのように対処すればいいのか。全国心理業連合会公認プロフェッショナル心理カウンセラーの浮世満理子さんに話を聞いた。

●劣等感から嫌み発言をしてしまうケースも

 まず知っておく必要があるのは、「一言多い人」の心理だ。浮世さんは、「基本的に、一言多い人も相手を傷つけようとか嫌な思いをさせようとしているわけではありません」と語る。

「私は『無意識の悪意』と呼んでいるのですが、余計な一言は、発言者の価値観や感情がポロッと出てしまうのが特徴。それまでうまくコミュニケーションが取れていたのに、本題とは関係ない、配慮を欠いた発言をしてしまい、受け手が『そういう言い方しなくてもいいんじゃないの?』『その一言はいらないよね?』と感じれば、それは余計な一言といえるでしょう」(浮世さん)

 さらに、一言多い人も好きで言っているわけではなく、それで気分がいいわけでもないという。なかには、相手に対してコンプレックスを感じているからこそ、つい言ってしまうケースも多いそうだ。

「たとえば、どんくさい先輩がバリバリ仕事をする後輩に劣等感を抱いている場合、『Aさんって悩みごとがなさそうでいいよね。僕はすぐ落ち込んでしまうから、うらやましいよ』と嫌みを言うことがあります。これはもちろん、受け手にとっては不快だし、言う側もコンプレックスを吐き出すだけなので、すっきりしません。どちらにとっても、やはり『余計』なのです」(同)

 お互いに余計な発言とはいえ、やはりより気分がよくないのは言われた側だ。余計な一言は、受け手が事前に阻止できるものではないだけに、不快な思いを軽減するには「言われたときの対処法」が重要になる。

 そこで、聞き取り調査で集めた実例を基に、具体的な対処法を紹介しよう。

●「マウンティング型」にはどう返すのがベスト?

 まず、典型といえるのが「マウンティング型」だ。

「会議で発言したら、同僚から『よくできているじゃないですか、Bさんにしては』と言われた」(28歳、男性)

「上司に『女にしてはがんばっているじゃないか』と言われました。今どきこんな言い方をする人がいるんだ、と絶句」(26歳、女性)

 浮世さんによれば、これらは「自分が優位に立ちたいときによく使われる余計な一言」だという。

「ここには、オフィスや会議の場で『この人は普段、仕事ができない』という印象を周囲に与えたい、という心理が無意識に働いています。男性に多いコミュニケーション方法で、『誰が上で、誰が下か』というポジションをつけて、自分の立ち位置を明確にしようとしている可能性が高いです」(浮世さん)

 逆に、女性がマウンティング型の発言をするときは、相手をライバル視しているケースが多い。心のなかにある「Cさんばっかりずるい」という心理が、余計な一言となって表れるのだという。

「貶めるようなことを言われたときに感情的になるのは、相手の思うつぼ。『女にしては』という言葉に『それって男尊女卑ですよ』などと言い返せば、むしろ『女は感情的』『あの人は怒りっぽい』というイメージが定着する可能性があります。

 ベストな対処法は、さりげなく『ありがとうございます! 女にしては、これからもがんばります』と、もっともイラッとしたワードを繰り返すことです」(同)

 余計な一言をオウム返しすることで、その失礼さを本人にフィードバックする効果が得られるという。

●受け身の人に多い「言い訳型」が残念なワケ

 一方、若い社員が上司に発してしまいがちなのが「言い訳型」だ。

「ミスを指摘したときに『Dさんにこうしろって言われました』という言い訳をされるとイラッときます。せめて謝ってほしい」(30歳、女性)

「職場の後輩が、よく『申し訳ありませんでした。教えてもらってなかったので』『やったことがなかったので』と言うんですよ。言い訳するな、ただの勉強不足だろう、と」(28歳、男性)

 この言い訳型を発する人には、「仕事に対して『受け身』の傾向がある」(浮世さん)という。

「本人にも言い訳をしているという自覚があるのですが、失敗したと思われるのが怖くて、ミスを指摘されるとつい言葉が増えてしまう。とはいえ、上司や先輩にすれば、『言い訳する時間があったら早く仕事しろ』という感じですよね」(同)

 仕事に対して受け身の人は、どこかに「上司のお手伝いをしている」との感覚があり、そのため言い訳がましい発言をしてしまうという。

「そういうタイプの人には、『お手伝いしてあげていると思っていない? これはあなたの仕事だよ』ときちんと伝えることが対処法になります。仕事に受け身の人は、わからないことは聞かなくても教えてもらえると思っている場合が多い。自分の仕事に責任を持つように認識させましょう」(同)

●不快でしかない「決めつけ型」は拒絶していい

 そして、上司や先輩社員に見られがちなのが「イメージによる決めつけ型」で、後輩の女性などに余計な一言を発してしまうケースだ。

「会社の先輩に『Eさんって料理とかしなそうなのに……。お弁当持ってきてるの意外(笑)』と言われ、ムカッとしました」(24歳、女性)

「男性の上司に海外旅行の話をしたら、『よくそんなお金があるね! 男に払わせたの?』と、半分冗談、半分本気で言われた。死ぬほど働いて、自分のお金で行ったんですけど?」(27歳、女性)

 言う側は冗談のつもりかもしれないが、言われる側にとって、この手の決めつけは不快でしかない。こうした無神経な発言には特別な対処法は必要ないという。

「おそらく、相手のイメージを勝手に決めつけて発した言葉でしょう。それによって相手がどれだけ傷つくか、ということをまったく考えていないのです。あまりに配慮に欠けた言葉をかけられたときは、『私が料理をしようがしまいが、関係ないですよね?』としっかり拒絶してください。無神経な人にはストレートに言わないと伝わりません」(浮世さん)

●失言を防いでコミュニケーション上手になる方法

 では、逆に余計な一言を発してしまいがちな人は、どういう点に気をつければいいのか。性格の問題でもあるだけに変えるのは難しそうだが、浮世さんは「意識の持ちようで、余計な一言を飲み込むことは可能」と語る。

「会話の終着点を意識してください。たとえば、初めて仕事をする相手の場合、気持ちよくコミュニケーションを取ることも仕事のうち。対話する相手と『どんな関係を築きたいか』を意識すれば、必要のない一言を言わずに済むかもしれません」(同)

 自分が言われたら嫌だと思うことは相手に言わない……。幼稚園で教わるようなマナーだが、現実には、ついつい余計な一言を発してしまうことがあるのも事実。身に覚えがある人は、今一度、自分の発言を振り返る必要がありそうだ。
(文=真島加代/清談社)