東京駅(「Wikipedia」より)

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 今年、大手デベロッパーのトップ交代が相次いでいる。

 東京建物が1月1日付で野村均取締役専務執行役員が社長に就いたのを皮切りに、三菱地所は4月1日付で吉田淳一取締役執行役常務が社長に昇格した。また、東急不動産も4月1日付で東急不動産ホールディングス社長の大隈郁仁が社長に就任し、持ち株会社と事業会社のトップを兼務する。

 さらに、野村不動産ホールディングス(HD)は4月1日付で、沓掛英二代表取締役社長がグループCEO(最高経営責任者)に就いた。その野村不動産HDには、“東芝リスク”が浮上している。

 JR山手線・浜松町駅近くに東芝の本社が入居する40階建ての浜松町ビルディングがそびえ立っている。このビルの大家は、野村不動産HD傘下の野村不動産だ。

 浜松町ビルディングは、東芝が東京芝浦電気から名称変更した1984年に竣工した。東芝の子会社が保有するビルだったが、2008年のリーマンショックによる東芝の業績悪化で子会社ごと売りに出され、それを野村不動産が買収した。

 野村不動産は800億円を投じてこの子会社の株式の65%を取得し、東芝との合弁会社、NREG東芝不動産が誕生した。さらに15年、東芝が不正会計問題で巨額赤字に転落するなか、保有していた株式のうち30%を370億円で野村不動産に追加売却した。現在は、野村不動産の持ち分が95%、東芝が5%となっている。東芝ビルディングは浜松町ビルディングに名前を変え、複数のテナントが入居しているが、今でも東芝が最大のテナントだ。

 その東芝は、解体の危機に瀕している。米原子力子会社ウエスチングハウスが3月末に、連邦破産法11条の適用を申請した。東芝本体は17年3月期に、国内製造業で過去最悪の1兆円強の最終赤字に陥る見通しだ。

「リストラの一環として、ビルから東芝本社が退去するのではないか」「野村不動産は賃料を下げざるを得ない」――。株式市場には、こうした見方が駆け巡っている。その結果、野村不動産HDの株価が下落し、4月6日に1723円の年初来の安値をつけた。高値は1月10日の2015円であり、その後も1800円台だ。

 野村不動産にとって東芝は悪夢の再来だ。日本航空(JAL)が入居する東京・品川のビルは、野村不動産傘下のREIT、野村不動産オフィスファンド投資法人が保有している。JALが会社更生法手続き中だった10年、野村不動産は賃貸契約の大幅な変更に応じ、賃貸料を引き下げ、賃貸面積を縮小した。JALは、破綻前には同ビル(地上26階地下2階)の全フロアを借りていたが、現在では3分の1に縮小されている。ビルの名称はJALビルディングから野村不動産天王洲ビルに変わった。東芝の経営悪化で、このときの二の舞になることを株式市場は危惧しているのだ。

●デベロッパーは曲がり角を曲がったのか

 その一方、東京都心では大型再開発が相次いでいる。日本最大のオフィス街である東京駅周辺では、三菱地所が計画している高さ390メートル、日本一の超高層ビルの建設プロジェクトが動き出した。三井不動産と東京建物も、八重洲口にそれぞれ超高層ビルを建設する。住友不動産を中心にした八重洲富士屋ホテル跡地などの再開発計画も進んでいる。

 東京都は東京駅周辺を世界的な金融集積地域とする“東京シティ”構想を掲げており、これらのプロジェクトは、その一翼を担う。現在、中小ビルが並立する東京駅八重洲口付近は劇的に変貌することになる。

 多くの再開発プロジェクトは、東京オリンピック・パラリンピックが開催される20年前後の開業を予定している。オフィス仲介大手の三幸エステートの調べによると、丸の内・大手町・八重洲・京橋・日本橋の主要エリアで16〜28年に完成する賃貸ビルのオフィス床面積は、新丸の内ビル25棟分に相当するという。大量供給によってテナント獲得競争が激化するのは間違いない。その結果、空室率の上昇や賃料の低下を招くことが懸念されている。

 すでにオフィスビルの賃料は頭打ちとなっており、オフィスからビジネスホテルへの転換が始まった。一方で、16年度の首都圏での新築マンション販売は、バブル崩壊の1992年以来、24年ぶりの低水準となった。デベロッパーという業態は曲がり角なのかもしれない。

 金融機関の間では、中堅デベロッパーの経営破綻を危惧する情報が飛び交っている。これは、不動産不況の前兆の可能性がある。
(文=編集部)