C大阪戦では神懸かり的なスーパーセーブで無失点に貢献した中村。チームを4連勝に導いた。写真:田中研治

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 杉本健勇がハイボールを胸で落とし、フリーの清武弘嗣が放ったシュートはブロックに入った小池龍太の足に当たってコースが変わった。決まった――。誰もがそう思った次の瞬間、GKの中村航輔が逆モーションを取られながら左腕一本でシュートコースを変えた。チームを救ったビッグプレーだった。
 
「シュートがDFに当たった時もボールは見えていたので、良い対応ができた」
 
 試合後、中村は淡々と自らのプレーを振り返っていたが、前半終了間際にも杉本の決定機を止めており、勝利の最大の立役者は中村といっても過言ではないパフォーマンスを見せた。
 
 これで柏は3試合連続無失点の4連勝で5位に浮上。4月以降の6試合に限ればリーグ最少の3失点と、開幕当初の出遅れから復調した要因は間違いなく守備にある。外国籍選手の破壊力を生かすため、やや引き気味に守備陣形をオーガナイズし、奪ったボールを素早く攻撃へ転じようとしたが、その守備戦術が機能せず、4節の仙台戦から昨季同様のハイプレスへ回帰した。「待ち構える守備」から「自分たちから奪いにいく守備」へのシフトチェンジは、柏に守備の安定をもたらした。
 
 ただ、柏が無失点を続ける要因はチームの守備力向上に加え、冒頭でも述べたとおり絶体絶命のピンチを、鋭いセーブで食い止める中村の存在を抜きには語れない。
 
「航輔に助けられている部分は大きい」
 3試合連続完封の要因を問われた中谷進之介は、そう言ってチームメイトのプレーを讃えている。さらに味方だけでなく、対戦相手も中村のプレーには舌を巻く。前節対戦した新潟も、ホニのスピードを武器に何度も決定機を作ったが、そのいずれの場面も中村のセーブに阻まれた。試合後、チアゴ・ガリャルドは「今日は相手のGKがMVPだと思う」と感服した様子で語っていた。
 
 シュートに対するレスポンスの鋭さ、ポジショニングの良さ、手足の長さ、ステップのうまさ、動体視力の良さ、メンタリティの強さ……。そしてそれらをピッチ上で最大限に発揮するために質の高い練習を貪欲な姿勢で取り組み、日々の準備を怠らない。
 
 中村の良さを挙げたらキリがないが、松本拓也GKコーチから聞いた話で特に印象的だったのが「肩甲骨・肩関節の柔らかさ」である。
 つまり逆モーションを取られる、あるいはGKの背後へ抜けたと見えたシュートも、腕の可動域の広さによって、普通ならば出てこない位置から腕が伸び、それがレスポンスの鋭さ、ポジショニングの良さ、腕の長さ、動体視力の良さと相まって、信じられないセービングを生み出すというのだ。
 
 だがC大阪戦同様、ビッグセーブを連発した前節の新潟戦後も「基本的には手の届く範囲のシュートだったので、しっかり対応できた」と中村は冷静な口ぶりで話す。
 
 見ている者からすれば「信じられないスーパーセーブ」でも、驚異的な肩関節の可動域を持つ中村本人にすれば、単に手が届く範囲のシュートを止めたにすぎず、「ビッグセーブ」と騒ぎ立てるほどのプレーをしたとは感じていないのかもしれない。
 
 観衆を沸かせるスーパーセーブ、ビッグセーブはもはや、中村にとって“スタンダード”の感さえある。
 
取材・文:鈴木 潤(フリージャーナリスト)