私たちの身近にあるコンビニの知られざる裏話を、業界の内情に詳しいライターの日比谷新太さんが紹介していく当シリーズ。前回の「酔っ払い客」に続いて取り上げるのは、同じくコンビニにとっての招かれざる客である「モンスタークレーマー」について。コンビニ側が一番困ってしまうという、モンスタークレーマーたちの行動パターンとは、いったいどのようなものなんでしょうか。

急増するモンスター・クレーマー

コンビニをはじめとした接客業において、近年その存在が大いに問題視されているのがクレーマー

もちろん店側のオペレーションが悪く、お客さんに不快な思いをさせてしまった場合は、クレームも致し方ないところ。店側もそのような声に真摯に向き合って改善することができれば、売上の向上にも繋がって大変ありがたいものです。

ただ最近は「モンスター・クレーマー」と呼ばれるような、一筋縄ではいかない厄介なお客さんが増えているのも事実。今回は、そんなモンスタークレーマーたちの典型的な3つの行動パターンをご紹介しましょう。

一日に何回も店に来る

朝の時間帯にご来店いただいた際に、スタッフの接客態度が気に入らなかったお客さん。店長が生憎その場に不在であったため、その時はシフトリーダーが対応したそうです。

しかし、お客さんは「責任者を呼べ!、店長を呼べ!」を繰り返します。急いで店長がお店に向かい、謝罪を繰り返しますが、なかなか怒りが収まりません。その後、一度は退店されましたが、お昼に再び来店され、今度は「店の人間じゃ納得できない。本部の人間を呼べ」となりました。

発端は店舗側の不手際なので、強く言い返すこともできません。ひたすら平謝りのまま、時間が経過していきます。何らかの金品要求に変化するのであれば、店側も別の対応ができるのですが、ただただ「態度がわるい」「教育できていない」の繰り返しです。

しばらくして退店したのですが、今度は夕方に再々来店です。こうなると店長も、心理的に弱ってくるので、ここで本部担当者の出番です。近くのカフェで面談を行い、事実確認と改めて本部からの指導強化を約束し、やっと対応が終了したとのことでした。

クレーム電話が鳴りっぱなし

クレーム対応には、お店に訪問する以外のパターンもあります。

ある日、お店のたばこの品揃えを変えた際に、クレームをもらいました。たばこは嗜好性の高い商品なので、お客さんは自分が欲しい(吸っている)たばこを変えるケースは少ないものです。このコンビニでは、お客さんが欲しいたばこの取扱いを中止したわけではなく、陳列している場所を変えただけですが、「探しにくい」「見つけにくい」「従業員が商品を渡す際に雑な扱いになった」等、言いがかりのようなクレームが続きました。

このようなクレーム電話が1時間に数回も続きました。1回あたりの通話時間も10分程度ですし、それが数回も続くと他の業務にも差し障りが出てきます。「お客さまのご自宅・勤務先に出向いて謝罪する」と伝えても、なぜか「忙しい」と断られてしまいます。防犯ビデオの映像を確認すると、見た目は普通のやさしそうな中年男性だったそうですが。

「誠意を見せろ」というフレーズ

クレーム発生時、お客さんに謝罪をしている際によく言われるのが、「誠意を見せろ」という言葉です。

男女カップルで来店しアイスを購入されたものの、スプーンを袋に入れ忘れたために発生したクレームです。店側は商品代金を返金すると申し出たのに対し、「せっかく購入したアイスが食べれなかった」「楽しみにしていた気分が台無しだ」「客商売なら誠意を見せろ」となりました。

誠意の見せ方を「金銭要求」であることは会話の中で感じてはいますが、そこはノラリクラリとかわしていきます。最終的に金銭要求には応えませんが、お店に余っていたサービスライターを差し上げて、引き取ってもらったということです。

このように、クレーム対応も店舗レベルで解決できればまだいいのですが、チェーン本部の「お客さま相談室」に申し入れをされてしまうと、もっと厄介な事態に陥ります。

その場合、お客さまへの対応が終了した後に、本部に対して報告をしなくてはいけないので、ますます時間が拘束されてしまうのです。クレーム対応が店側にとって痛手なのは、なんといっても長い時間を拘束されてしまう点なのです。

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文/日比谷 新太(ひびや・あらた)

日本のコンビニエンスストア事情に詳しいライター。お仕事の依頼はコチラ→のメールまで: u2_gnr_1025@yahoo.co.jp

出典元:まぐまぐニュース!