<ロシア大統領選を1年後に控えて大規模な反政府デモが発生。野党指導者ナワリヌイは「台風の目」になるか>

盤石と思われていたロシアで、プーチン大統領の足元が液状化してきた。

筆者が所用で首都モスクワに着いた3月下旬、数都市で不正蓄財など「メドベージェフ首相の特権乱用」に対するデモがあり、ロシア全土で1000人近くが拘束。4月3日にはロシア第2の都市サンクトペテルブルクの地下鉄で爆破テロが起きた。

親ロと言われてきたトランプ米大統領はシリアの化学兵器使用に対して、6日に空軍基地を爆撃。アサド大統領を守ってきたプーチンの面目をつぶした。

14年3月のクリミア併合、15年9月のシリア爆撃でオバマ前米政権の鼻を明かした「世界最強の指導者」プーチンは失速。アメリカが強腰に転ずれば、実はロシアに打てる手はないことを白日の下にさらけ出した。

ロシアはあと1年で大統領選挙がある。無風でプーチンが再選確実と思われていたシナリオはにわかに崩れた。きれいごとを国民に説教する裏で、特権を乱用する政権の二枚舌を世論は問題にしている。

【参考記事】大規模デモで始まったプーチン帝国の終わりの始まり

3月上旬、メドベージェフの特権乱用を糾弾するビデオがYouTubeに登場。その後、シベリア・トムスクでの抗議集会で12歳の少年が抑圧的な政治を批判したスピーチもYouTubeで100万人以上が見た。

集会参加者は口々に、当局は「回答」(ロシア語で「責任を取る」の意味も持つ)すべきだと言っているが、メドベージェフは答えない。代わりに地方の知事を不正で逮捕して、世論の目をそらすお決まりの小手先の工作を行ったが、逆に支持率は急落した。プーチン大統領に対しても、「回答」を迫る材料はいつでも出てくるだろう。

地下鉄テロも以前なら、これを契機に国内の締め付けを強めたものだが、今回はこれもしない。米軍のシリア爆撃についても御用系マスコミは一斉に非難を始めたが、ロシア政府はアメリカに対抗するより話し合う姿勢を崩さない。4月末に予定していた毎年恒例の「国民との直通問答」(全国からの質問に、プーチン1人が数時間にわたりテレビで答える)は数カ月延期。内外とも想定外のことが増え、政権は機能停止したかのようだ。

ソ連を知らない世代が20代後半になった今、社会と政治の潮目は変わる。ソ連のぬくぬくとした生活を知らない若者は、当時を知る老年世代のように「自由よりパンを」とはならない。石油収入を老年保守世代にばらまいて手なずけ、批判は締め付けて権力を維持する現在の政権には反感しか持たない。その上、お偉方が公私混同では、もうやっていられまい。

[2017.4.25号掲載]

河東哲夫(本誌コラムニスト)