『ちょっと今から仕事やめてくる』より 自殺寸前に追い込まれた新卒社員・青山(工藤)は、謎の青年(福士)に助けられるが果たして彼は何者なのか……?
 - (C) 2017 映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会

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 さわやかで気持ちのいい気候なのに、なぜか心はブルー。特にGW明けの仕事のことを考えると、身体が鉛のようにどんどん重たくなってくる……そんな人におすすめの「仕事を頑張る勇気をもらえる映画」を紹介したい。(石塚圭子)

 まず、最新お仕事ムービーとして、就活ピークのタイミングに公開される注目作が、北川恵海の同名ベストセラー小説を映画化した『ちょっと今から仕事やめてくる』(5月27日公開)。主演は福士蒼汰と工藤阿須加。軽妙でユーモラスなタイトルから青春コメディーをイメージする人もいるかもしれない。だが、本作はそんな予想をガツンと裏切り、世代や性別を超えて全ての働く人の深い共感を呼ぶ一作だ。

 何といっても一番のポイントは、日常的に繰り返されるパワハラによって、新卒社員の青山(工藤)が心身ともに絶望へと追い込まれていく過程の圧倒的なリアリティーだろう。威圧的な部長の怒鳴り声が響き渡る中、萎縮しきった部下たちが身を縮ませる灰色の職場。彼のまるで魂を吸い取られたかのような生気のない表情。一人暮らしの荒れ果てた部屋。休日はどこにも出かけず、ただベッドの上で丸くなって泣いている姿。これまでに仕事で深刻に悩んだことのある人はもちろん、幸運にもそれほどの体験はない人であっても、たまたま配属された職場や身近な人間関係、業務への適性など、いくつかの要素が重なりさえすれば「自分も彼のようになってしまうのではないか」と思わずにはいられないシビアな説得力がある。

 実際、現実社会において、まじめで誠実な人であるほど過重労働やパワハラで人知れず鬱になったり、時には自ら命を絶ってしまう痛ましいケースは多い。劇中でも苦しんでいるのは決して青山だけではない。福士蒼汰が演じた、青山を親身に支える謎の青年・ヤマモト自身、重い過去を背負っており、青山が憧れる先輩女性社員も、営業成績トップならではのプレッシャーに日々さらされている。もしかすると、モンスターにしか見えない部長もまた、心に闇を抱えているのかもしれないのだ。

 脚本と監督を手掛けたのは『八日目の蝉』(2011)、『ソロモンの偽証』(2015)の成島出。当初は脚本だけを担当する予定だった成島には、20代の頃に親友2人が自ら命を絶った過去があり、「今まさに青山のような状況に置かれている人たちを救いたい」との想いから、メガホンも取ることを決意したという。ヤマモトが温もりのある関西弁で語りかける「青山にとって、死ぬより大変なことって何?」、「人生は誰のためにあると思う?」といった印象的なセリフの数々、離れて暮らす青山の両親の優しい表情の一つ一つにも、監督の深い願いがこもっているのが伝わってくる。

 他にも、「サザエさん症候群」(日曜夜の憂鬱)に効く名作は数多い。例えば、30年ほど前に公開され、働くアメリカ女性たちに大いなる希望を与えた『ワーキング・ガール』(1988)や、巨大スポーツ・エージェンシーで働く主人公が解雇されるところから始まる『ザ・エージェント』(1996)。厳しい状況にいる主人公たちが夢を胸に抱きながら粘り強くコツコツと働く姿は、今観ても普遍的で胸を打つ。ちなみに後者はヒーローじゃないトム・クルーズと当時新進女優だったレニー・ゼルウィガーの共演も見逃せない。また、写真雑誌「LIFE」の会社を舞台に、リストラ目前の40代ベテラン社員の人生の転換期を描く『LIFE!/ライフ』(2013)、新しい辞書作りに情熱を注ぐ編集者たちの15年間にわたる奮闘を追った『舟を編む』(2013)は、広い視野、長いスパンで仕事を見ることの大切さに気づかせてくれる。番外編としては、ジブリアニメにして実はお仕事ムービーの傑作、仕事に対して自信喪失したヒロインへの励ましの名言がちりばめられた『魔女の宅急便』(1989)も必見だ。

 目先の仕事の悩みで頭がいっぱいで、周囲のことを考えられなくなってしまったときこそ、自分とは違った角度から疑似体験できる映画は有効なアイテム。連休明けの仕事が憂鬱な人は、お仕事ムービーから受けとったメッセージを、心のメンテナンスに役立ててみてはどうだろうか。