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「原始的」という美学

アウディRS2アバントの操縦系からは、クルマとの一体感が感じられる。特にスロットル・ペダルは、最新のバイワイヤのそれがいかに不確実なものであるかを教えてくれる。

ストロークは適度に長く、しっとりと滑らかで、スムースに動くアウディのペダルは、ダイレクトで、スロットルボディの感触まで感じられるようだ。

踏み始めにも、不釣り合いなレスポンスを演出するようなことはない。全体的に運転のしやすさを念頭に置き、ターボサージを緩和して扱いやすくするようチューニングされている。

フルスロットルを望むなら、思い切り踏み込む必要がある。カーペットに触れる手前の1cmほどで、劇的な変化が体感できるだろう。

対照的にゴルフRは、比較的スローに運転できる一般的な仕立て。ステアリングはアウディのそれより重くダイレクトだが、フィードバックには欠ける。

DSGはドライバーの負担を減らし、エンジンはモダンな4気筒にしてはエモーショナルだが、疑似的なエンジン音だとも言える。

音はともかく、ゴルフRの動きはクイックで、現実的な状況下で走る限りはアウディより速い。しかしそれは、絶対的な速さではなく、レスポンスの差によるものだ。

いっぽう、RS2でペースを上げれば、それが非常に速いクルマであることが感じられる。

いざ、市街地を脱出

市街地の速度制限が厳しいエリアを脱出したら、アウディの6速MTを2段ほどシフトダウンしてスロットル・ペダルを踏み込もう。

回転計の針が3000rpmの目盛りを通過すれば、ターボが存分に働き始める。その間に、VWはDSGが勝手にシフトアップを進め、50km/hほどだった車速はいち早く100km/hに届き、その速めのクロスカントリーといったペースをきっちり保ってくれる。

20年の技術の進歩は、エンジンのレスポンスやフレキシブルさといった実用性に明らかだ。

アウディのエンジンは楽しめるが、高回転域であっても、ペダル操作に対する反応の遅れは否めない。ドライビングはエキサイティングで夢中になれるが、その流儀は古風だ。

B級道路を飛ばすと、加速以外にも違いも見えてくる。アウディの乗り心地は、公道を重視した速いロードカーらしく、ソフトでしなやかだが、常に路面をしっかりと捉えて離さない。これに比べるとVWは、減衰にやや硬さがある。

ゴルフRのステアリングは、モダンなホットハッチとしては上々の部類だ。わかりやすく楽しめ、直観的。素速く切り込み、脱出で思い切り加速するような走りに向いている。

RS2とわたしの濃密な対話

コーナリングのキレがよく、バランスに優れ、ロールやアンダーステアに食われるエネルギーやレスポンスが少ない。

気持ちよくターンし、すぐに安定し、前後の荷重移動もスマート。直進に戻る前にスロットルを開きたくなる。ゴルフらしいハンドリングは、このハイパワーなワゴン版にも生きている。

RS2は、ペースを上げるほどに違いが見えてくる。ボディ・コントロール、横グリップのレベル、ステアリングの重さ、そしてパワー・デリバリーの全てが、4速3500rpmで100km/h前後に達したときに最高の調和を果たし、チューニングの意図に正確な働きをみせる。

しかし、飛ばしすぎると、大きなバンプではフィードバックの域を超えたキックバックに見舞われ、ハンドリングのバランスは損なわれる。低速コーナーを思い切り攻めたときも同様だ。

ただし、活発でもその道路に適した速度であれば、RS2は多くの見返りを与えてくれる。乗り心地は水中翼船を思わせる、ゆったりしたものになり始める。減衰はプログレッシブだが効果的。

クルマとの対話を楽しみながらコーナリングすれば、クルマは正確に応えてくれる。外輪が負荷から解放されるまでしばし待たねばならないが、その間も20年ものクルマのタイヤがどれだけグリップしているかはしっかり感じられる。

さて、どっちが勝つ?

2台に優劣を付けるのであれば、ゴルフに軍配を上げざるを得ない。より速く、切れ味がよく、グリップも強力で、バランスに優れている。

ただし、ハイパワーなワゴンなどというジャンルすらなかった23年前に、それより主流だったスーパーカーを凌ぐほどのパフォーマンスを発揮したRS2アバントの魅力は、今も色褪せない。

不朽のハイパフォーマンスカーたちがそうであるように、ドライバーズカーの速さは、どのように速いのかが重要だということを、時代を越えて教えてくれる。

クルマ造りに技術の進歩はたしかに重要だが、造り手の努力やスキル、判断もまた同じく大事な要素なのである。