『報道特注(右)』より

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 米朝戦争勃発どころか、トランプ大統領が対話路線への転換を口にし始めた北朝鮮情勢。安倍政権の尻馬に乗って、「ミサイル危機」を煽り、「米国の武力攻撃を支持せよ」と主張してきた"御用ジャーナリスト"たちは、とんだ赤っ恥をかいたかたちだが、その筆頭が"安倍首相の代弁者"としていま、保守系メディアでひっぱりだこになっている元TBS記者・山口敬之氏だろう。

 山口氏といえば、この間、毎日のように朝から情報番組やワイドショーをはしごし、"森友問題にかまけている場合じゃない""VXガス搭載のミサイルが日本列島に撃ち込まれる"などと、いまにも北朝鮮から大量破壊兵器を搭載したミサイルが飛んでくるような妄言を語り続けてきた。

 いったいこんな状況になってどう言い訳するんだろうと思っていたら、なんと、失笑してしまうようなデマと陰謀論を駆使、逆に「北朝鮮危機は騒ぎすぎ」という意見にかみつきはじめたのだ。

 その発言があったのは、4月27日に放送された『報道特注(右)』なるネット番組でのこと。この『報道特注(右)』は今年スタートし、ネトウヨから熱い視線を注がれているトーク番組で、この日も、出演陣は日本維新の会の"暴言王"こと足立康史衆院議員、自民党の極右議員・和田政宗参院議員など、ネトウヨ丸出しのメンツが集まっていた。

 そんなネトウヨ番組に出演した山口氏、北朝鮮情勢について足立議員が「日本の報道は表層的でいい加減な報道が多い」と言い出したことを受けて、こう続けたのだ。

「それに輪をかけているのがいい加減な評論家。『危機なんかないんだ』と言って、毒まんじゅう食らったバカなやつがいっぱいテレビに出てるんですよ」
「テレビ出ている評論家が『危機がない』って言ってるなって思ったら、最近いつ北朝鮮へ行ったか調べてみてください。絶対2、3年以内に行ってるから。(北朝鮮に)行くと、こうやっていろんなね、冷麺とか食わされて、泊まる高麗ホテルの向かいにカラオケ屋があるんですよ。そこで綺麗な人がね、チマチョゴリ着てカラオケやるんです。いまもやってると思いますよ」
「評論家として。一回(北朝鮮に)行って日本に帰って来てテレビで何しゃべったかは全部チェックされてる。朝鮮総連がチェックして毎日レポート送ってるわけ。そしたら(評論家が)『対話で解決すべきだ。北朝鮮はそんな脅威じゃない』って言うと、"花マル"もらうんです」

「危機はない」という人間はテレビで見たことがないので、おそらく山口は「騒ぎすぎだ」と批判している人のことをそう言っているのだろう。しかも、山口は、この真っ当な指摘をした数少ないコメンテーターや評論家が、みんな北朝鮮に行ったことがあって、接待で籠絡され、朝鮮総連にコントロールされている、というのだ。

 こいつの"見てきたようなことを言う"妄想言い切りトークは前々からだが、ここまでおかしくなっているとは思わなかった。じゃあ、訊くが、最近、「世界中で北朝鮮が危機だと騒いでいるのは日本のマスコミと総理大臣だけ」とコメントした元防衛相でタカ派国際政治学者の森本敏氏も、ソウル滞在中にツイッターで"ソウルは日本のように騒いでいない"として、「日本が米朝のチキンレースに参加すべきではない」とつぶやいた橋下徹元大坂市長も、さらにはブログで「どうせ何も起きない」「馬鹿騒ぎ」と珍しく冷静な情勢判断をしたネトウヨの神・田母神俊雄氏も北朝鮮から接待を受け、コントロールされているというのだろうか。

 ちなみに、本サイトで、連載対談をしている室井佑月氏も一貫して、テレビや週刊誌で「北朝鮮ミサイル危機を騒ぎすぎだ」と批判していたひとりだが、本人に聞くと、「北朝鮮? 行ったことあるわけないじゃない。バカじゃないの」と一蹴。また、同じくテレビで安倍政権による北朝鮮危機の扇動を批判していた元共同通信ソウル特派員で、ジャーナリストの青木理氏にいたっては、2、3年前から、北朝鮮に入国禁止状態になっているという。

 いや、青木だけじゃない。実は、北朝鮮は少し前から日本の報道陣を次々入国禁止にしていて、多くのリベラル系のジャーナリストや評論家、新聞記者も北朝鮮に入国できなくなっているのだ。

 こんな情報も知らないでわけ知り顔で、「危機がないと言っている奴は絶対2、3年以内に北朝鮮に行ってる」などといっているのか?

 ちなみに、先の室井佑月氏は山口氏の妄想を否定した後、苦笑しながらこんなコメントをしていた。

「あたしが、北朝鮮からいきなりミサイル攻撃されることなんてないし、米朝戦争だってすぐに起きないといったのは、山口さんの大好きな安倍さんや閣僚のみなさんがのんきに休暇とったり、外遊していたからですよ。評論家とかコメンテーターにケチつける暇があるなら、自分の親分に『せっかく煽ってるのに、そんなことされたらバレバレですよ』と文句言えばいいじゃん」

 室井の言うように、北朝鮮情勢が安倍首相や山口が煽るような状況にない、というのは、政治状況や国際情勢を冷静に分析すれば、誰にでもわかるような客観的事実なのだ。それを、「危機を否定したものは全員、北朝鮮と裏でつながっている」というような妄想を平気で垂れ流すのだから、山口の陰謀論体質には頭がクラクラしてくる。

 だいたい、仮に取材で訪朝したことがあったとして、それだけでなぜ「北朝鮮の毒まんじゅうを食って籠絡された」ことになるのか。

 たしかに、日本の新聞記者やジャーナリスト、政治家が訪朝すると、必ず高麗ホテルの前のカラオケバーに連れて行かれ、接待を受けるのがパターンになっている。しかし、その中身は、山口も言っているように、チマチョゴリを着た現地の女性が席に着き、一緒にカラオケを歌い、冷麺を食う。その程度のことでしかない。そんなもので、いまどき、誰が籠絡されるのか。

 実際、自民党幹部も訪朝したものは全員、この接待を受けている。しかし、それで、自民党の対北朝鮮政策に変更があったなんて話は今まで聞いたことがない。当の山口自身もこの番組で告白していたように、TBS記者時代、訪朝し、接待を受けている。それが何の効果もないことはいまの山口のスタンスが証明しているではないか。

 そもそも、山口がこの程度で「毒まんじゅうを食らって、籠絡されている」などとわめくのは、それこそ自分が安倍首相と官邸に、毒まんじゅうを食らわされているからだろう。

 本サイトで何度も指摘しているように、山口氏はTBS時代から安倍首相の太鼓持ちとして有名で、昨年TBSを退職してからも、幻冬舎から安倍PR本を2冊も出版。裏で官邸からこっそりネタをもらい、安倍首相や官邸幹部と頻繁に会食、ゴルフなどをしてきた。

 そして、週刊誌や夕刊紙で安倍政権の意向に沿ったフェイクニュースを流し、ワイドショーでは、安倍の功績を過大に讃え、安倍首相の失政や不祥事はなかったことにする、安倍サマのための解説を繰り広げてきた。

 そんな人間がどのツラ下げて、他人に「毒まんじゅうを食らった」などと言えるのか。

 いや、むしろ逆か。山口氏はこの間、官邸の代弁者として北朝鮮危機を批判した人たちに陰謀論丸出しで攻撃しているのも、まさに毒まんじゅうを食らった結果、森友学園問題隠しと改憲の空気作りのために北朝鮮危機を煽り続けたい安倍政権の意向に沿ったものなのだろう。

 しかし、毒まんじゅうを喰らいすぎたのか、山口氏の主張はもはや御用ジャーナリストのそれを超えて、ネトウヨと大差なくなっている。先の『報道特注(右)』のなかで、山口氏はこんなことまで口にしていた。

「日本が危機意識を持ってしまうことを恐れている人たちがいるんですよ。森友(問題を)やってる人もそうかもしれない、正直。じゃあ、いままでアメリカの大統領は『自らの国土に届く核ミサイルをつくらせない』って言ってるけど、日本は15年前に見逃しちゃったんですよ、その危機を。ところが今、うんこ評論家がね、あと、ある種の政治家が『日本に米軍基地があるから狙われるんだ』と言い始めてる」
「ようするに宋日昊(日朝国交正常化担当大使)と同じなんです。宋日昊は『最初に日本を狙う』って言ってんです。なんでかっていったら『日米が組んでるからあんたら(日本)を狙うんだ』って言うのは、日米同盟が一番嫌だから北朝鮮が言ってるわけでしょ。それを日本の評論家とか政治家が言うのは"北の手先"だってことなんです!」
「『敵基地攻撃能力を今持つべきでない』って言うのは"北の犬"なんなんです!」

 北朝鮮を絶対的な"敵"として攻撃しなければ、即座に"北の犬"扱い......。ネトウヨというか、もはや「鬼畜米英」といって国民に攻撃的な意識を刷り込んだ戦中なみのメンタリティだ。

 ようするに、こういう人間が地上波のテレビ局に出演し、「北朝鮮危機」を煽ってきたのである。この国のメディア状況はもはや、末期的というしかない。
(編集部)