寡黙な男が…(『物静かな男の復讐』より)
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 スペイン映画といえば、『ミツバチのささやき』のビクトル・エリセや『私が、生きる肌』のペドロ・アルモドバルといった巨匠で知られているが、新世代の監督たちも続々と作品を生み出している。巨匠クラスの作品でなければ日本公開されない外国語映画は多いが、Netflixなどの登場によりその状況は変化してきている。スペインで注目を浴びた作品の中から、すでにNetflixで観ることができる作品を紹介したい。(編集部・石神恵美子)

『物静かな男の復讐』

 スペインのアカデミー賞ことゴヤ賞で作品賞や新人監督賞など4冠に輝いたのが、俳優ウール・アレバロ(37)の長編映画監督デビュー作『物静かな男の復讐』だ。宝石店強盗事件を起こしたグループの一員だったクーロは、8年の刑務所生活を終え、家族とともに人生の新たなスタートを切るはずだった。しかし、彼の妻と深い仲になっていた寡黙な男ホセによって、予期せぬ復讐の旅に巻き込まれていく。タイトルにもあるように、よく言われる“普段おとなしい人こそ怒ると怖い”をまさに体現している本作。感情が表に出てこないタイプの人間であるホセに対し、表現豊かなカメラワークが印象深い。

『100メートル』

 実話ベースの『100メートル』は、30代という若さにして多発性硬化症と診断され、100メートルも歩けなくなると言われたラモンが、トライアスロンのアイアンマン(鉄人レース)を目指し、日々奮闘するさまを描いたヒューマンドラマ。感動の実話系ながらも、コメディー要素もあり、とても観やすい作品に仕上がっている。とりわけ、ラモンのトレーニング相手をすることになった気難しい義父との交流の描き方が絶妙で、ipadをはじめテクノロジー好きなラモンに対し、もちろんそんなものには全く興味がない義父と、世代間の溝もユーモラスに描きだしている。鉄人レースにかけて、マーベルヒーローのアイアンマンがさらりとネタで使われるのも、映画ファンとしてはうれしいところ。

『再会』

 オスカーに輝いたこともあるスペインの名匠フェルナンド・トルエバの息子ホナス・トルエバがメガホンをとった『再会』。高校時代、恋人同士だったマニュエラとオルモは、ある夜にマドリードで再会を果たし、過去の思い出とこれからについて語りはじめる……というなんともセンチメンタルな設定の物語を描く。男女の恋愛模様を会話劇で描き出すという点において、ヌーヴェルバーグの映画監督エリック・ロメールからの影響を感じさせるとともに、2人の一晩をゆっくりと追っていく前半のスタイルはリチャード・リンクレイター監督作『ビフォア』シリーズも彷彿させる。高校時代のパートは、また違ったトーンで撮影されており、失われた時に対するノスタルジアが強調されている。