「ナスの呪い揚げ」に「やすらぎ体操」などなどパワーワード連発で、シニア世代のみならず、ゴールデンウィークに何の予定もないロンリーな人たちをも大興奮させてくれた倉本聰・脚本のシルバータイムドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)。

ここまで、ものすごくスローな展開でじっくり登場人物を紹介してきたこのドラマが、ようやくドカーンと弾けた第5週。ホントにどうかしていて面白かった!


人の死よりもセックス話で盛り上がる老人たち


「お嬢」こと白川冴子(浅丘ルリ子)の誕生パーティーへの参加を断った不届き者たちを呪うため、「姫」こと九条摂子(八千草薫)が提案する「ナスの呪い揚げ」の儀式を行うことにした老人たち。

油がよくしみるよう切り込みを入れたナスに「キノシタタクヤー!」などと、呪いたい相手の名前を叫びながら割り箸をブスーッと刺す。それをチンチンに沸いた油で揚げて、しょうが醤油に浸して食べる!

いきなり料理番組かというくらい詳細に「ナスの呪い揚げ」のレシピを紹介しはじめて、もう何の番組なんだ状態。

前週からガンガンに煽りまくっていた儀式自体は、意外とアッサリ終了してしまったのだが(まあ、要はナスを揚げるだけなんで……)、その後の、泥酔しまくった老人たちの飲み会が特濃だった。

老女優たちの若い頃の写真を見ながら、「きれいだねぇ!」「肌がスピスピ(スベスベ)してる!」と盛り上がった後、話題は過去の恋愛に突入。

姫が17歳の頃、千坂浩二監督と付き合っていたという話になり、

「ウェヘヘヘヘ」
「エ〜ヘヘヘヘ」
「ヘッヘッヘッヘッヘ」

などと照れまくって変な声を上げてごまかす姫……というか八千草薫、かわい過ぎないかい?

「姫、千坂さんに(処女を)あげちゃったのよねぇ〜」

恋愛話の流れで、いきなり処女喪失トークをはじめる女性陣もどうかと思うが、それを聞いてショックを受ける男性陣もバカ。みんな、後期高齢者なのに! 80歳になっても処女か処女じゃないかで一喜一憂し続けなければならないのか、男ってやつは……。

そして翌日、なんと「ナスの呪い揚げ」ターゲットのひとりが本当に死んでしまったというニュースが入ってくる。

まさかのリアル呪い! 自分たちの儀式で人が死んだかも知れないということで、さすがにうろたえる老人たちだったが、

「偶然! そんなこと現実に起こるわけない!」

という一言で、この話題は終了。人、ひとり死んでいるのにドライ過ぎる……。周りの人たちがバタバタ死んでいく老人たちにとって、死ってその程度のものなんですかねぇ。

さて、老人ホーム「やすらぎの郷」での次なる話題は「秀さん」こと高井秀次(藤竜也)が入所してくるという噂。

任侠映画などで活躍し、ヤクザたちからも尊敬されている昭和の大スターで「神様のような存在」だったという。

前科者だらけの「やすらぎの郷」従業員たちは、憧れの秀さんがやって来るということで色めきたつが、それ以上にザワついているのは老女優たち。

「やすらぎの郷」内に、秀さんの関係者が沢山いるようなのだ。……いわゆる肉体関係者ってヤツね。

井深涼子(野際陽子)も、お嬢もマヤ(加賀まりこ)も、及川しのぶ(有馬稲子)も……主要キャラとほとんどヤッているヤリチンっぷり。

さらにマロ(ミッキー・カーチス)が「律ちゃんだって……」と口をすべらせ、菊村栄(石坂浩二)の亡き妻・律子も秀さんの間にも肉体関係があったんじゃないか疑惑が勃発。

人が死んだこと以上に、アイツとヤッたのヤラないので盛り上がる老人たち(しかも50年くらい前の話だというのに!)。大学の馬鹿サークルの部室かよ!?

秀さん=高倉健+石坂浩二!?


第5週にしてやっと登場した、最後のメインキャラ・高井秀次。

「秀さん」という愛称、映画内で牡丹の刺青を入れていた、無口で静かな男の中の男だった……などの情報から、演じる藤竜也自身のキャラというよりも、高倉健をイメージしていることは明白だろう。

しかし、この秀さん。部分的に石坂浩二要素も持ち合わせているのだ。それは秀さんの趣味である絵画。

数々の女優を脱がせ、不思議でエロチックな絵を描いて、二科展にも何度も入選しているという秀さん。

一方、石坂浩二も、洋画家の東郷青児に師事し、二科展では1974年から1985年まで連続入選しているほどの腕前。そして絵のモチーフは……やっぱりヌードばっか!

完全に石坂浩二のことじゃん。また出たよ、倉本聰による石坂浩二いじめ。

ちなみに、秀さんについては、「あの人、なんだか脱がすの上手くて、それで、それこそトローンとなって、脱がされて、描かれて、それで何となくデキちゃうんだ」なんて言及されている。

石坂浩二がヌードモデルとヤッていたのかどうかは知らないが、そんなところまでチクチクと突いてくる倉本聰は本当に性格悪い!

しかも、お嬢とマヤは過去に秀さんと付き合っていたという設定。……現実世界における石坂浩二の元カノ・加賀まりこと、元妻・浅丘ルリ子だ。

そのふたりが石坂浩二の目の前で、

お嬢「憎いあん畜生! 高井の秀次!」
マヤ「アレはアンタが私から盗ったのよ!」
お嬢「何言ってるの違う! 私が先だった!」

お嬢「だけど秀さん、セクシーだったねぇ!」
マヤ「私が磨いてやったから」
お嬢「なぁに言ってるの、逃げられたくせに!」
マヤ「アンタだって結局逃げられたくせに!」

なんて言い争ってるのはザ・地獄絵図!

石坂浩二いじめの材料も、いい加減出し切ったかと思ってたら、まだまだありますねぇ。

「恋ダンス」ならぬ「老いダンス」か!?


「ナスの呪い揚げ」というクレイジーな儀式でスタートした第5週だが、週の締めくくりは、さらにクレイジーな「やすらぎ体操」で終了した。

「やすらぎの郷」内で放送されており、入所者たちが毎朝やっている体操らしいが、金曜日・第25話の本編が終わったかと思ったらエンディング(?)として、いきなりこの「やすらぎ体操」がぶち込まれてきて、本当にビックリさせられた。

パッと見の印象は、NHK「みんなの体操」なのだが、途中でパカパカ場面が切り替わり、登場人物たちがみんな体操しているというフォーマットは、「恋ダンス」がブレイクし、最近のドラマでやたらと増えているエンディング・ダンスってヤツだ。

「最近の若者向けドラマは、エンディングで出演者にダンスさせときゃいいんだろ?」

という倉本聰の声が聞こえてきそうだが、昨今のドラマに対するイヤミだけではなく、歌詞もなかなかに尖っている。

「今日も生きている、それが人生。明日は分からない、それも人生」
「人生百年、年金に頼るな。死ぬまで歩こう自分の足で」

……老人自身(倉本聰)だからこそ書ける年寄りギャグ。若い脚本家が書いたら炎上しかねないよ、この歌詞!

「やすらぎの郷」メンバーにヤリチンが加わって、これからが本番!


「ナスの呪い揚げ」と「やすらぎ体操」に心を奪われてしまったが、今週は菊村の亡妻・律子の存在も大きくクローズアップされていた。

老女優たちが披露する昔の写真に写り込んだ若き日の律子を見て、楽しかったり、辛かったりした亡妻との日々を思い出す菊村。

そして、そんな律子とヤッたかも知れない大スターが同じ老人ホームにやってくるとは……。

もう律子は亡くなってるんだから、どうでもいいじゃんという感じもするが、菊村と関係を持った段階で律子は処女だったらしいので、秀さんとヤッていたとしたら明らかに結婚後のこと。

まあ、気になるよね。

これまで石坂浩二総ウケのハーレム状態だった「やすらぎの郷」に、ヤリチン・藤竜也がが加わって波乱は必至。メインキャストも揃って、これからが(やっと!)本番といったところだろう。

最近、SNSなどでちょいちょい「最初から観ておけばよかった!」というコメントを見かけるけど、amazonビデオで第1話から見られるから、それで観て追いつけばいいと思うぞ!(約15分のドラマが1話108円って高いけど)
(イラストと文/北村ヂン)