悪くない。

 それが今季開幕当初、アルビレックス新潟から受けた印象だった。

 粘り強い守備にはまとまりが出てきており、攻撃にもチームとしての狙いが見える。だからこそ、結果は出ていないながらも内容は悪くないと感じた。

 だが、シーズンが進み、J1も第10節を終えた現在、新潟から受ける印象は明らかに悪化している。

 新潟はJ1第10節で、川崎フロンターレとアウェーで対戦し、0-3の完敗を喫した。1勝7敗2分けの勝ち点5は、J2降格圏に沈む17位である。

 新潟はここまでの10試合で総得点7、総失点19。第5節以降の6試合のうち、実に4試合で3失点している。得点が少ないことにはひとまず目をつぶるとしても、これだけ失点がかさんでは、わずかな勝機を見出すのも難しい。

 この川崎戦もまた、勢いに乗れない新潟の悪い流れを象徴するかのような試合展開だった。


序盤は試合の主導権を握っていたアルビレックスだが... 立ち上がり、試合の主導権を握っていたのは、新潟だったと言っていい。

 川崎はJ1では最近4試合勝利がなく(1敗3分け)、この試合でも武器であるパスワークにスムーズさを欠いていた。ひとりひとりがパスコースを探してボールを持つ時間が長く、ノッキングを繰り返す。そんなギクシャクした攻撃に対し、新潟はうまくボールを奪い、カウンターにつなげることができていた。

 今季初先発のFW鈴木武蔵が語る。

「監督から、立ち上がり10分は前から(ボールを奪いに)いくと言われていた。(流れがよかったので)イケると思った」

 新潟は、28分に右サイドバックのDF矢野貴章が足を痛めて交代するアクシデントに見舞われた。それでも、交代で入ったDF川口尚紀が出場直後から立て続けに攻撃に加わった。

 40分にはドリブルで攻め込んだ川口からのパスをフリーで受けたMFチアゴ・ガリャルドが、ゴール右スミにシュートを放った。これは川崎のGKチョン・ソンリョンにセーブされるも、試合は新潟ペースで進んでいるかに思われた。

 ところが、「試合の入りは悪くなかった。今日はイケるかなと思ったが、流れがよかっただけにイケイケになってしまって……」と川口が悔やむように、惜しいシュートの直後に起きたプレーで、新潟の淡い期待は無残に打ち砕かれてしまう。

 川崎にゴールキックからのボールを、間延びしてぽっかりと空いた中盤でつながれ、最後はMF阿部浩之からFWハイネルへのスルーパス。これをハイネルに難なく決められ、新潟は先制を許した。

 一瞬のスキを突かれただけの、ある意味でやむを得ないようにも見える失点。だが、この失点には伏線があった。

 新潟はなかなか勝ち点を積み重ねられない状況のなかで、チーム内には戦い方の考えにギャップが生じるようになっていた。すなわち、高い位置でボールを奪って効率よくカウンターにつなげたい前線と、まずは無理せず後ろで守りを整えたいDFラインとの差異である。三浦文丈監督が語る。

「試合の入りは集中してくれたが、徐々に前線は高い位置で奪いたい、後ろは少しコントロールしたい、ということで間延びしたなかで、私自身が(チームとしての戦い方の)ベクトルを合わせられなかった」

 鈴木が「意思疎通(を図ること)で防げた失点。解決策が曖昧だった」と語ったように、間延びして生まれた中盤のスペースを使われての失点は、以前から抱えていた懸念材料が露呈してのものだった。

 とはいえ、客観的に見ている立場から言えば、1点ならまだ試合はわからなかった。

 前述したとおり、川崎の出来は決してよくなかった。しかも、川崎はこのところ試合終盤に失点し、勝ち点を失うことが多かった。それだけに、このまま0-1で進めば、どう転ぶかわからない。そんな試合だったはずである。

 実際、川崎の鬼木達監督も、「サッカーはメンタルのスポーツ。ここ(前節)まで納得いくゲームができていなかったので、選手は自信を持てずにやっていたところがある」と認める。

 だが、傍から見ている以上に、新潟は1失点で大きなダメージを負っていた。自分たちでも気づいていた問題点だっただけに、そこから破綻したショックは相当に大きかった。センターバックのDF富澤清太郎が語る。

「チームとして話し合ってきたなかでの1失点目。メンタル的にきた選手が多かった。(高い位置から奪いに)いくのか、いかないのかを話してきた分、(そこが中途半端になって失点したことに)ダメージがあった」

 すっかり受け身に回ってしまった新潟は、「気持ちの部分が弱くなり、チームとして強さを出せなかった」(富澤)

 終わってみれば、3失点。敵将の「得点したことで、(それまで自信がなかった)選手たちに思い切ってやれるところが出てきた」という言葉が表すように、むしろ自ら率先して川崎のよさを引き出すかのような試合展開にしてしまったのでは、当然の結末だった。

 ルヴァンカップ第3節(4月26日)の横浜F・マリノス戦(1-4)を含めて、失点ばかりを増やしての4連敗に、鈴木は「意思疎通ができていない。もっと話し合っていかないといけない」と、悔しさをにじませる。

 だが、これだけ結果が出ないと、点を取りたい前線と、まずは失点したくないDFラインとで、さらに気持ちが乖離(かいり)しかねない。結果が出ないことで内容がどんどん悪くなってしまう悪循環に、新潟はすでに陥り始めている。

 FW山崎亮平は、険しい表情で語る。

「チーム(としてやるべきこと)が徹底されず、あっさりやられる。去年もギリギリで(J1に)残留し、そこから主力(の選手)がたくさん抜かれた。チームとしてもっとやらないと厳しいのはわかっているのに、ここに来て、まだやることがはっきりしない。そういうことが勝てない原因のひとつでもある」

 山崎が言うように、結果はもちろん、試合内容うんぬんの以前に、チームが同じ方向を見て戦えていない状態では、光明を見出すのは難しい。

 三浦監督は「堅守からスピーディな攻撃」を掲げ、今季に臨んだ。だが、失点を増やすばかりで大前提となる堅守は崩壊状態。加えて、攻撃でも「1、2節はカウンターで決定機を作れたが、(対戦相手に)研究されるなかでどうするか」という問題に早くも直面している。新潟の前に積み上がった課題は、目を背けたくなるほど山積みだ。

「何か変えないといけないとは思うが、まだ試合直後なので、もう少し落ち着いてから考えたい」

 幸いにして最下位こそ免れてはいるが、残留圏内(15位)とは離される一方。指揮官が力なく語る言葉からは、手詰まり感ばかりが漂っていた。

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