“人類”に警鐘を鳴らす地球規格のブルース・アルバム ゴリラズ『ヒューマンズ』(Album Review)

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 ゴリラズのメンバーがかつてないほど凛々しく挑戦的な表情を見せている、このジャケット・アートワークはどうだろうか。21世紀のヴァーチャル・バンドとして一世を風靡した彼らが、前作『ザ・フォール』から6年ぶりに帰ってきた。『ザ・プラスティック・ビーチ』(2010年)のツアー中、デーモン・アルバーンがアメリカ各地を巡る旅日記のようにiPadで楽曲を制作した『ザ・フォール』のプライベートかつインスタントな作風とは異なり、新作は古今東西の豪華ゲストの顔ぶれと共に生み出された本編20トラック(デラックス・エディションでは26トラック)というボリュームの大作に仕上げられている。

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 先に書いてしまうと、この新作『Humanz』は地球規格のブルース・アルバムだ。もちろん、音楽の様式としてのブルースではない。米西海岸のラッパー、ヴィンス・ステイプルズが参加した「Ascention」では9.11やイラク戦争といった21世紀の闇が語られ、いびつなエレポップと化した「Momentz」では、あの「Feel Good Inc.」や「Superfast Jellyfish」で共演してきたデ・ラ・ソウルと共にレイシズムと格闘。アンソニー・ハミルトンが切迫感を込めて歌う「Carnival」では、競争社会の果てしないイタチごっこをラブソングに見立てながら《まるでカーニバルみたいだな》と歌われている。世の中の不条理に揉まれ、追いやられてきたゴリラズは今回、真っ向から人類に警鐘を鳴らしている。それゆえの、あの凛々しい表情なのだ。

 ヴァーチャル・バンドであるがゆえに地域性や民族性から自由でいられるゴリラズ(もっとも、個々のバックグラウンドは尊重されているが)は、人類(『ヒューマンズ』)に訴えかけるこのアルバムのために、ありとあらゆる地域と世代のアーティストを招き、同時に宇宙空間をイメージさせるような、フューチャリスティックで浮遊感溢れるサウンドによって全編に統一感をもたらしている。本編終盤で《お金をたたえよ》と皮肉たっぷりに歌われる壮大なコズミック・ゴスペル「Hallelujah Money」は、今年1月のドナルド・トランプ大統領就任式の前日に公開された楽曲だ(MVはトランプ・タワーを舞台にしている)。

 21世紀のポップ・ミュージックにおいてアイコニックな活躍を見せてきたゴリラズは、むしろこの『Humanz』というテーマのために立ち上げられたプロジェクトではなかったろうか。そんなふうに思えてしまうほどの、明確な意図・目的をもった傑作。世界各地の若手気鋭アーティストを招く一方で、グレイス・ジョーンズやメイヴィス・ステイプルズ、カーリー・サイモンといったレジェンドたちの歌声も力を貸している。今を生きる人類の音楽が総力を結集させた、真の意味でのポップ・アルバムだ。ゴリラズは本作を携え、今夏の【FUJI ROCK FESTIVAL’17】に出演を予定している。(Text: 小池宏和)


◎リリース情報
アルバム『ヒューマンズ』
2017/05/24 RELEASE(配信は4月28日よりスタート)
WPCR-17835/6 2,600円(tax out.)