力強い突破を見せるジョン・チュングン。横浜FCの昇格への鍵を握るアタッカーだ。(C) SOCCER DIGEST

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 J2リーグ10節で2010年3月以来の首位に立った横浜FCは、続く11節の愛媛FC戦でも4-0の快勝を収め、トップの座をキープした。
 
「ここまで10節勝ったり負けたり引き分けたりしてきましたけど、自分たちが敵わないなと思う相手はひとつもありませんでした。ただ、今日の試合は気候、ピッチ状況、スタジアムの雰囲気とすべてを兼ね合わせてこの場でのゲームだったのですけど、正直今日の相手には敵わなかったと。それくらい相手は素晴らしいプレーをしたと思います」
 
 対戦相手である愛媛の間瀬秀一監督もこう、白旗を上げるほどだ。
 
 横浜FCはこれで3試合連続の4得点。正確な記録は洗い出していないので分からないが、クラブ関係者は「記憶にはない」と言うほどで、歴史的な快挙と言えるかもしれない。カルフィン・ヨン・ア・ピンと西河翔吾を中心とした堅実な守備と、ゲームメイクに長けた佐藤謙介と中里崇宏のダブルボランチの存在、そして最前線の絶対的存在である超J2級のストライカー・イバを中心とした高い攻撃力が見事に調和している。近くでチームを見守ってきたあるサポーターも「今年(昇格を)逃したら選手もどうなるか分からないし、あと10年は厳しいと思う」と語っており、期待は非常に大きい。
 
 そんな好調・横浜FCのキーマンのひとりが、今季より加入した韓国人アタッカー・ジョン・チュングンである。9節の千葉戦で圧巻のドリブル突破から強烈なシュートを突き刺して来日初ゴール。21歳の新鋭は、イバに勝るとも劣らない規格外の選手と言えるだろう。
 
「(ゴールの)シーンはよく覚えていない。(佐藤)謙介からボールを受けた時にちょっと抜いてシュートを打った。打つことしか考えなかった。イバもノム(野村直輝)も点をとっていたので、僕だけ取っていないなと。だからゴールしか考えていなかったですね」
 初ゴール瞬間は、サポーターの熱気を最高潮に持っていった。
 
 チームの体力測定でもトップの数値を出し、90分間走り続けられるタフさに加えて、スプリントの爆発力もある。技術力や判断力の水準も高く、ボールを持ちながらも前への推進力は落ちず、初ゴールの場面に象徴されるようにゴールに向かう意識を前面に出す。特筆すべきはいわゆるDFが“切って”いる方向に無理やりにでもグッと入り込んでいくプレーだ。この強引さがゴールを近づける。
 
「うちのDF陣は(相手の)個の力を体感したと思います」と、ある愛媛の選手はそう言って、その能力の高さに脱帽していた。
 稀に見る逸材である彼は、異色の経歴の持ち主でもある。2010年、15歳の時にフランス・リーグアンのFCナントにスカウトをされ渡仏し、ユースチームからセカンドチームまでプレーした。しかし、トップでの出場は叶わず、2016年の6月に退団。プレーできるクラブを探しているなかで日本のクラブを渡り歩き、練習参加した横浜FCで契約を掴み取った。
 
 ニューイヤーズカップからプレー機会を得て持てる力を発揮し、主力として地位を確立する。そして、先の千葉戦で初ゴールを決めたというわけだ。今節の愛媛戦でもゴールこそ奪えなかったものの、やはりその存在感は際立っており、その走力は攻守において”効いて”いた。
 
「チームとしては1人、2人ではなくて3人4人という人間が関わってゲームをコントロールしながらゴールを取れているのでそれを続けていきたいですけど、やっぱり個で剥がさないといけない場面ができているし 、ジョンなんかはそういうのがウリでもある。相手と入れ替わる場面でスピードもありますしパワーもある」
 
 主将の佐藤もこう賞賛の言葉を送るが、まだ満足をしていない。
 
「周りを使いながら“最後のところは自分で”というところ。もうちょっと欲を出してもいいかなとは思います」
 
 10年ぶりの昇格への鍵を握る助っ人外国人のサクセスストーリーは、まだまだこれからだ。さらに自分の持ち味を出せば、横浜FCの昇格とともに自身の飛躍の時も自ずと近づいてくるはずだ。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)