ルーキーながら開幕以来スタメンを継続する原。しかしチームは波に乗れず……。(C) SOCCER DIGEST

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[J1リーグ10節]川崎 3-0 新潟/5月5日/等々力
 
 試合を終え、アウェーのゴール裏に陣取るサポーターの前に新潟の選手が挨拶に行くと、場内の一角が大きなブーイングに包まれた。

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 ブーイングを浴びる選手たちの中には、5月20日に開幕するU-20ワールドカップに出場をするU-20日本代表メンバーに名を連ねたMF原輝綺もいた。
 
 この試合、同じくメンバーに選ばれた川崎のMF三好康児がベンチスタート、DF板倉滉がベンチ外となるなかで、彼は左サイドバックとして開幕戦以来10試合連続となるスタメン出場を果たした。
 
 1分、右サイドでボールを持ったFW阿部浩之がカットインを仕掛けると、すかさず前に立ちはだかってコースを切った原は、ボールを奪い取り前線へフィード。13分には右サイドの密集地帯でボールを受けると、寄せて来た相手を巧みなフェイントで交わし、ボランチのロメロ・フランクへつなぎ、そこからの展開でチャンスが生まれた。
 
 しかし、上々の滑り出しを見せた原だったが、40分、一瞬の隙を突かれ、痛恨の先制点を許してしまう。中央のFW小林悠にボールが渡った瞬間、新潟のCB富澤清太郎が「行くな!」と全体に声をかける。この声を耳にした原は、前に行かずにブロックを作るためにその場にステイをした。しかし、指示が聞こえなかったボランチとサイドハーフが食いついた瞬間、右でフリーになったMF阿部浩之にパスを通されてしまう。これで原は、阿部と左サイドにいたFWハイネルの2人と数的不利に立たされてしまった。
 
「味方の2枚が(小林悠に)行ってしまって、その背中を上手く使われてしまった。僕もハイネルを自分の内側を通したくなかったけど、阿部さんも前を向いていたし、あそこで数的不利の状況になるとは予想がつかなかった」と、唇を噛んだように、阿部に行くかどうか一瞬迷った瞬間に、ハイネルに内側に入られると、阿部からスルーパスを通され、原はハイネルの背中を追いかけなければならない状態に陥った。ハイネルはGKとの1対1を冷静に制し、痛恨の失点。上手く流れに乗れていた中での失点は、原にとっても、チームにとっても重く伸し掛かった。
 
 その後、一気に劣勢を強いられると、50分には原とは逆サイドから流れるようなパスワークで崩され、追加点を奪われた。
「ほとんど自分のところで数的不利を作られて、すごくやり辛かった。もっとチアゴを守備側で上手く使えたら良かった。どうしても言葉が通じない分、難しさがあった」
 
 左サイドハーフのチアゴ・ガリャルドとの意思疎通が合わず、どうしても彼が攻め残ってしまうが故に、原にはより大きな負担となった。それでも59分には左サイドを攻め上がり、FW山崎亮平とのワンツーから、エンドラインギリギリを突破して、マイナスの折り返しを送るなど、チャンスメークにも絡んだ。
 
 しかし、川崎が65分にMF長谷川竜也に代えて、三好を投入すると、三好は高い位置でボールを受けては、積極的にギャップや背後に動いて攻撃を活性化。75分には、三好が左サイドから仕掛け、ペナルティエリアに近づくと、そのまま突破すると見せかけて、近づいて来た阿部へバックパス。阿部がカットインを仕掛けると、三好はそのまま阿部と並走する形で最終ラインの裏を駆け抜け、新潟守備陣の前へのプレスを緩めたことで、阿部と小林がフリーになった。2人がスライドするようなワンツーから、最後は阿部が試合を決定付ける3点目を奪った。
 
 原はフル出場を飾ったが、結果は0-3で新潟の完敗。冒頭で書いたように、サポーターからブーイングを浴びた。
 
「正直、勝って、弾みを付けて代表に行きたかった」。
 
 試合後のミックスゾーンで、彼は表情を曇らせたように、チームは10試合を終えて、降格圏内の17位(暫定)。原はその10試合すべてにスタメン出場し、うち川崎戦を含む9試合にフル出場している。ルーキーとしては素晴らしい成績だが、チームとして結果が出ていないだけに、手放しでは喜べなかった。
 
「ボランチと左サイドバックをやらせてもらって、個人的にはすごく良い経験をさせてもらっている。でもチームとして結果が出ていないという複雑な想いを抱かざるを得ないです。でも、U-20ワールドカップでは頭を切り替えて、いろんな物を吸収して帰ってきたいと思います」
 
 無念さはいったん心の奥にしまって、貴重な世界の檜舞台を存分に味わってくる。そう決意を語った彼は、最後に今日のライバルであり、今度は頼もしきチームメイトとなる三好についてもこう語った。
「今日の三好のプレーは刺激になった。ボールを収めるところだったり、途中から入って凄く良いアクセントになっていた。ああやって違いを見せられる選手にならないといけないなと改めて思いました」
 
 今日の敵は明日の友。そして、その友たちと世界で躍動するために――。原輝綺は新たなるモチベーションを胸に抱き、世界に挑む。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)