<過去17冠の鹿島に対し、今年のルヴァンカップを含めて5冠の浦和と、これまでに獲得したタイトルの数が示す「勝負強さ」が両者の明暗を分けた。(中略)どちらにとっても、自力で優勝を決められる決勝戦。そこでは「勝ち慣れた者」と「勝ち慣れていない者」との差、特に心理面での両者の差は明白だった。鹿島の憎らしいまでの勝負強さには、ただただ感服するしかない。>

 これは、昨季Jリーグチャンピオンシップ(CS)決勝の第2戦後に、当Jリーグコラムにて記したレポートの一部である。

 5月4日に行なわれたJ1第10節、浦和レッズvs鹿島アントラーズを見ながら頭に思い浮かんだのは、まさにこの試合だった。今季J1の優勝の行方を占うと見られた序盤戦の天王山は、いつかどこかで見たような、既視感たっぷりの試合となった。

 浦和と鹿島。今季開幕前からこの両チームを優勝候補の2強に推す声は多く、それに応えるように前節終了時点で浦和が首位、鹿島は3位と、両者は順当に上位につけていた。

 しかも浦和、鹿島ともに、すでにAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ではグループリーグ突破を決めており、優勝候補同士の直接対決にふさわしい状況が整っていた。

 この試合は、両チームが翌週に控えているACLの試合を考慮し、他の試合に先駆けて行なわれたため、同日にはJ1だけでなく、J2、J3も含めて他に試合はなかった。会場は浦和のホーム、埼玉スタジアム。あたかも昨季のCS決勝第2戦を想起させる注目の一戦は、結果や内容も含めて、文字どおり「CSの再現」となった。

 結果は1-0で鹿島の勝利。スコアこそ、CS決勝第2戦の2-1とは異なっていたが、試合展開は概ね合致していたと言っていいだろう。

 試合序盤、ペースを握ったのは浦和である。サイドを中心に好連係を見せ、何度かチャンスを作り出した。得点には至らなかったものの、浦和にとっては悪くない立ち上がりだった。

 しかし、鹿島は徐々にサイドでの守備を整えるとともに、奪ったボールを攻撃につなげ始める。

 そして迎えた24分。ペナルティーエリアのわずかに外でパスを受けたFW金崎夢生が、そのまま強引にキープしてシュートまで持ち込むと、金崎の左足から放たれたボールは、シュートブロックに飛び込んできた浦和のDF森脇良太に当たってコースが変わり、GK西川周作の逆を突く形でゴールネットを揺らした。

 先制点を許したことで、浦和は明らかに浮き足立った。それは特に後半に入ると顕著になり、1点を返そうと前がかりになるものの、焦りからイージーミスを増やすばかりで、落ち着いてゲームを進めることができなかった。

 浦和のペトロヴィッチ監督は「今日は不運な形で失点し、鹿島がやりやすい試合になった」と振り返ったが、確かに失点には不運がともなったにしても、その後の攻撃にはあまりにも粗(あら)が目立った。

 また、ペトロヴィッチ監督は「試合内容を見れば、得点に至るチャンスはあった。カウンターから(得た後半の決定機で)ラファエル・シルバが決めていれば、あるいは槙野(智章)のポストに当たったシュートが入っていれば、結果は違っていたかもしれない」と強がってもみせた。

 だが、それを言うなら、鹿島にも同じように決定的な追加点のチャンスがいくつかあった。浦和がリスクを負って攻撃に出た、と言えば聞こえはいいが、負ったリスク相応に攻撃の迫力が増すことはなかった。鹿島の石井正忠監督が語る。

「強い浦和に対して、どう戦うか。そこをどうにかうまく対応でき、少ないチャンスを決め切れたことが今日のポイントだった」


レッズの行く手を阻んだ鹿島のレオ・シルバ 試合の趨勢(すうせい)を示すバロメーターとして、わかりやすかったのが鹿島のボランチ、MFレオ・シルバのポジショニングである。

 試合序盤、レオ・シルバは自陣でコンパクトな守備ブロックを構築することに注力していた。浦和のMF武藤雄樹らが引いてボールを受けようとするアクションに対しても、深追いすることはなかった。

 ところが、後半に入ると、白いユニフォームの背番号4は俄然高い位置にポジションを取った。浦和がDFラインからビルドアップしようとパスをつなぐのに対し、2トップとともに前線からボールを追い、浦和の焦りを増幅させた。試合の機微を察知したプレー判断はさすがだった。レオ・シルバは語る。

「高い集中力をいかに持続できるかがポイントだった。完璧ではなかったが、相手の狙いを消すことはできたのではないか。あれだけの攻撃力を持ち、ほとんどの試合で得点している相手に対して無失点で終えられたことは、守備組織の部分では自信が深まる」

 浦和は昨季CSの借りを返そうと、意気軒昂(いきけんこう)にこの試合に臨んできたが、またしても勝負強さで上回った鹿島の返り討ちにあった。

 それにしても、浦和は大一番で勝てない。鹿島とは対照的に、そんな”勝負弱さ”が目につく。

 昨季CSから続く印象が鮮烈なため、ともすると浦和は鹿島に苦手意識があるかのようにも見えるが、最近の対戦成績はむしろ浦和に分がある。ペトロヴィッチ監督が就任した2012年以降、リーグ戦での対戦成績は昨季までの10試合で7勝1敗2分け。天敵どころか、”お得意様”と呼んでもいいほどの好成績だ。

 実際、この数年、浦和は確実に強くなってきた。

 浦和はペトロヴィッチ監督が就任し、今季で6年目。強化の途中にはマンネリからくる停滞を感じた時期もあったが、その後、もう一段強さを増した。

 一から攻撃を組み立てられるビルドアップ能力は、J1最強と呼ぶにふさわしく、攻守の切り替えも速い。ひとたび敵陣に攻め入れば、ボールを失っても高い位置ですぐに奪い返し、対戦相手をゴール前に閉じ込めたまま攻撃し続ける迫力は、J1の他チームが持ち得ないものだ。

 目指すサッカーの完成度は高く、ペトロヴィッチ体制下では今が最強と言っていいだろう。今季も開幕戦こそ横浜F・マリノスに敗れたものの、その後の7試合は6勝1分け。圧倒的な強さを見せていた。

 ところが、前節の大宮アルディージャとのさいたまダービー、そして鹿島との天王山と、単なる”34分の1”では片づけられない重要な試合であっけなく連敗してしまう。弱いチームが結果を出せないのなら、手の打ちようもあるが、これだけ強いチームに相応の結果がともなわないのだから、たちが悪い。やむなく敗因は「勝者のメンタリティー」や「勝負強さ」といった目に見えない、漠(ばく)としたものに求められてしまうわけだが、本当にそうだとすれば、簡単には解決策は見いだせない。

 浦和のFW興梠慎三は、「そんなに落ち込むことはない。今やっているサッカーは間違いなくいいサッカー。焦ることなく、今のサッカーをやり続けることが大事」だと、揺るがぬ自信をうかがわせる。

 しかし、強くなっていることは疑いようがないからこそ、結果が出ないことの歯がゆさや苛立ちをより大きくするのもまた事実だろう。

 今季開幕前のFUJI XEROX SUPER CUPを含めれば、これで浦和は鹿島に3連敗。ショックが尾を引くようなら、2強が並び立つのは難しくなる。

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