米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が最近報じたところでは、北朝鮮の女性団体が大麻の大々的な栽培に乗り出したという。一方、脱北者らが作る韓国のNGOは、北朝鮮がアヘンやヘロインの原料となるケシの栽培を再開したと指摘している。いったい、何が起きているのか。

北朝鮮がかつて、国策として覚せい剤を量産し、日本など海外へ密輸し外貨を稼いでいたのは周知のとおりだ。

しかしその後、覚せい剤など違法薬物の製造技術が国内で拡散し、青少年を含む国民の乱用が深刻化。金正恩体制は発足当初から、違法薬物を厳しく取り締まって来た。

国民の退廃

ところが、RFAが今月2日に伝えたところによると、朝鮮労働党の指導下で女性らを統率する朝鮮社会主義女性同盟(女盟)が最近、女盟員(会員)に大麻の栽培を指示したことが明らかになったという。

北朝鮮の北部には、野生化した大麻が多く生えており、農民が刈り取って中国に輸出していると伝えられているが、あくまでも自主的にやっているものだった。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、女盟中央委員会は3月初め、女盟員1人あたり10坪の畑で大麻を栽培するよう指示したという。女盟はその際、大麻栽培の目的を次のように説明したという。

大麻の種は、脂肪分が大豆の2倍もあり、良質の食用油が採れる。搾りかすはタンパク質が豊富に含まれているため、家畜の飼料に最適だ。10坪分の大麻は油10キロと飼料10キロになり、食用油と肉の不足をいっぺんに解決できる」

こうした指示はかつて、金日成主席も下したことがあるとされるが、その後は大麻について「うさぎのエサにしかならない雑草」ぐらいに考える人が大半になった。最近になり、野生化した大麻を刈り取って中国に輸出すればカネになることが知られ、一気に「カネのなる草」として脚光を浴びるようになったが、それも一部の地域でのことだったようだ。

両江道の女盟員らも当初、大麻栽培の指示を真剣に聞いていなかったというが、中央から調査官が派遣されるに及び、大慌てで栽培を始めたという。

気になるのは、ここへ来ての大麻栽培が、本当に食糧問題を目的としているのかどうかだ。RFAの咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、「大麻油と亜麻仁油は無人航空機(ドローン)に使う航空燃料の代用になるらしい」と語っているが、信ぴょう性がどの程度のものか、どうも判断がつかない。

一方、韓国のNGO・北韓戦略センターの姜哲煥(カン・チョラン)代表は3月、北朝鮮当局は金正恩政権が初期に麻薬との戦争を宣言してケシ畑を潰したが、最近になって、またもやケシ畑を造成していると述べた。

ほかにも、北朝鮮の対外保険総局での勤務経験があり、現在は韓国の国家安保戦略研究院の選任研究委員をつとめるキム・グァンジン氏が2月21日、スイスのジュネーブで開かれた第9回人権と民主主義のためのジュネーブ首脳会議で、北朝鮮当局が統治資金の確保のために海外で薬物と偽札の取引を行っていると述べた。

こうした断片的な情報からことの全容を見極めるのは難しいが、何しろ国際社会の対北朝鮮制裁の最中でのことである。金正恩党委員長が苦し紛れに危険な「薬物ビジネス」に手を伸ばし、国民の退廃をいっそう進めてしまうようなことのないよう願いたい。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち