映画が物語を伝える技法を分析するYouTubeチャンネルのLessons from the Screenplay(LFTS)が、「スター・ウォーズ」シリーズの2作品「ローグ・ワン」と「フォースの覚醒」を比較することで、それぞれの長所・短所を分析しています。ともに女性を主人公にした新たなスター・ウォーズ作品は、対照的な描き方をしているようです。

Rogue One vs. The Force Awakens - The Fault in Our Star Wars - YouTube

人気のYouTubeチャンネルLFTSの最新ムービーが取り上げる題材は「スター・ウォーズ」



LFTSを手がけるマイケルさんが、2歳の時からカメラで撮影しようとするきっかけとなった作品がスター・ウォーズとのこと。



人一倍、思い入れのある作品の分析・批評というわけです。



取り上げるのは、エピソード7「フォースの覚醒」と……



スピンオフシリーズ1作目の「ローグ・ワン」



主人公はいずれも女性で、「フォースの覚醒」はレイ。



「ローグ・ワン」はジン。2人はかなり対照的。



2作品共に共通するのが「Show, Don't Tell(語るのではなく見せる)」という技法。



ローグ・ワンのジンは、少女時代の出来事が描かれています。



母を殺され、ストーリーの重要人物である父との記憶。



しかし、夢から目覚めたジンがいるのはそれから19年後の世界。



帝国軍に囚われの身であるという以外にストーリーは一切語られません。描かれているのは「彼女がどんな人物だったか」であり、「今、どんな人物か」は直接的には描かれていません。



問題行動を起こすジンですが、具体的な事件はあえて内容が描かれず。罪状がずらずらと読み上げられるだけ。



しかしジンは無表情を貫き、このとき何を考えているのか読み取ることはできません。



この点についてマイケルさんは、ジンの無表情さは「共感」や「同調」することを難しくしているという欠点を指摘しています。



これとは対照的なのがフォースの覚醒のレイ。



砂漠の中のゴミから使える部品をかき集めるレイ。



リサイクル品を売って生活の足しにしています。



部品を磨く女性を見るレイ。



「自分も同じような人生を送るのだろうか?」という不安と葛藤を感じる心の内を細かく描きます。



毎日壁につける印。



単調な日々が繰り返される事実が描かれています。



しかし、ヘルメットをかぶりながら空を眺めるレイの姿から、彼女がこの世界から抜け出す希望を持つことが伝わってきます。



大空へ飛び立ちたいというレイの希望は、言葉で説明されなくとも描かれた事実から理解できます。



著名な脚本家のシド・フィールドは名著「SCREENPLAY」の中で、「行動こそがキャラクターである」と記しています。キャラクターとは何を語るかではなく、何をするかなのです。



物語の中でレイの採る選択は、キャラクターを物語っています。レイは「動的な主人公」です。



物語の中で葛藤するレイの姿から、真の個性が伝わってきます。



捕らえられたBB-8を救出するレイ。



BB-8を大量の食料と交換するようにオファーを受けるレイ。



難しい選択を迫られながらも「ドロイドは売り物じゃないの……」と断ります。



レイの採る行動から彼女の真の価値を理解することができます。



対照的に、ジンは「受動的な主人公」です。



ローグ・ワンにおけるジンの役回りを見ると、「物事を引き起こす」のではなく「物事が降りかかる」というのが主体です。



救出されるシーンなど、彼女には選択肢らしいものは与えられていません。



ジンの受動的な役回りは、「意味のある選択」を遠ざけ、彼女が持つ本当の個性を隠しています。



しかし、動的な主人公であることは、レイが完璧であることを意味するわけではありません。



ほとんどの物語の主人公は欠点や弱点を持つものです。



作家のK.M. Weilandは著書Creating Character ARCSで、「個性を進化させるのは人生で欠けているものだ」と述べています。そこで、物語には欠点を克服する変化が求められるというわけです。



レイは「家族はいつか帰ってくる」と自分に言い聞かせますが、これは本心ではありません。



抱え込んでいる事実を受け入れることで、弱さを克服していきます。



「もう、ジャクー(砂漠の町)に戻らなきゃ」と話すレイですが、心から願っているわけではないのです。



「あなたはすでに真実を知っているはず」とマズカナタに言われるレイ。



弱さを克服し、新たな道を歩み始めるレイは急成長し、カイロ・レンに打ち勝ちます。





また、偉大な物語には「意味のある結果」があるものです。



マイケルさんは、ローグ・ワンの後半は前半に比べてはるかに素晴らしいと評価しています。



「ローグ・ワンの前半は、必要以上に複雑過ぎる」とマイケルさんは感じているとのこと。



重要な結論に必ずしも関連しないシーンがあるというわけです。



父ゲイレンの死はジンにとっては重大な瞬間ですが、究極的にはストーリーの流れを大きく変えることはありません。



構造的な問題を前半に抱えるローグ・ワンですが、「デス・スターの設計図を手に入れる」という目標が定まると、ストーリーは勢いを取り戻します。



ここからこそがローグ・ワンが輝いているところだとマイケルさんは評価しています。



反乱のために犠牲になることなど、伏線はオリジナルのスター・ウォーズの世界そのもの。



エピソード4につながるストーリーはスター・ウォーズファンを満足させるものです。



スター・ウォーズとは何かが描かれています。



これに対してフォースの覚醒では、新しいキャラクターの導入は……



オリジナルの3部作のラインを維持しつつ行われています。



新たな主人公が完全に理解できるように描きつつ……



喪失感を共有するというストーリーは、見事だとマイケルさんは高く評価しています。



そして、エピソード8では何がもたらされるのか知りたいという熱望を十分に持続させるものだと述べています。