中国国営新華社通信は4月末の日ロ首脳会談に関する記事で北方領土問題に言及、「日ロ関係が短期間で画期的な進展するのは容易ではない」と伝えた。そこには日ロ関係の強化を必ずしも歓迎しない中国の思惑も垣間見える。写真は日本政府の領土問題ポスター。

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2017年5月5日、「日本とロシアの関係が短期間で画期的な進展を得ようとするのは、容易なことではない」。中国国営新華社通信の電子版は4月末の日ロ首脳会談に関する記事で、一筋縄ではいかない北方領土問題に言及、こんな分析を紹介した。そこには日ロ関係の強化を必ずしも歓迎していない中国の思惑も垣間見える。

新華社の記事の見出しは「ロ日関係の難関突破はどれほど難しいのか」。この中では日ロ首脳会談について「ロシアメディアが明らかにした情報から見て、ロシアの南千島列島(北方四島)における主権帰属問題での立場は依然として揺るいでいない」と断じ、「政治的相互信頼の欠けたロ日関係が短期間で画期的な進展を得ようとするのは、容易なことではないはずだという分析もある」と紹介した。

その理由としては、1956年の「日ソ共同宣言」をめぐり、日ロ両国に根本的な食い違いが存在すると指摘。ロシア側の見解は「共同宣言が日本に歯舞、色丹両島を引き渡す予定であることだけを規定。両島を引き渡す前提は平和条約の締結で、平和条約の締結は両国の領土紛争の徹底的な解決を意味することになる」と説明している。

これに対し、日本側は「領土紛争のある島しょはすべて日本に帰属するべきで、日本はこれらの島しょの領土権回復に対し主権を行使せねばならない。日本が1956年に二つの島しょだけを取り戻すことに同意しなかったことから、共同宣言を締結しても平和条約には締結しなかった」との立場だとしている。

一方で記事は「もちろん、日本の双方の経済協力を進めるという『情熱』をロシア側が排除することはないだろう。ロシアはアジア太平洋経済の『急行列車』に乗り、極東地域の発展を率先して推し進めることを望んでいる」とも指摘。「極東地区の経済社会の発展を通じてロシア外交の多元化を推進することは、ロシアの『東へ向かう』外交戦略における一つの自然な選択肢にほかならない」とも述べている。

中国とロシアの関係は現在、良好だが、旧ソ連時代にはイデオロギー論争などから国境紛争を繰り返し、戦争の一歩手前までいった時期もある。当時、北京などには核攻撃に備え、地中深くにシェルターが建設された。1972年に米国との関係改善に踏み切った背景には中ソ対立があった。

歴史上、漢民族の脅威は北から現れる。中国とロシアは長い国境線で接する。ロシアが日本との間で懸案の北方領土問題に解決の道筋をつけ、シベリア開発などで手を組めば、新たな対中包囲網の形成にもつながる恐れもある。そんな警戒感が新華社の記事には投影しているのかもしれない。(編集/日向)