阪南大の指揮を執る須坂監督。理論に基づいた指導で、数々のプロ選手を育て上げてきた。写真:竹中玲央奈

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 大学サッカーと言えば明治や早稲田、筑波など毎年多くのプロ選手を輩出する関東のチームを思いつくファンは多いのではないだろうか。
 
 実際、地域ごとのリーグ戦で、集うチームの平均的なレベルの高さをみれば関東がその最高峰であることに異論はないだろう。今季は名門である国士舘大や中央大、そして早稲田大までもが関東2部での戦いを強いられている。
 
 ただ、チーム単位で見れば、地方にも強豪は存在する。田代有三や永井謙佑ら日本代表クラスの選手を輩出した福岡大や、2015年には夏と冬の全国大会を制した関西学院大らが代表格と言える。
 
 そしてもうひとつ、阪南大も大学サッカーを語る上で外せない“西の雄”である。今季の関西学生サッカーリーグでは、唯一の開幕4連勝で首位を走る。
 
 梁勇基(仙台)、泉澤仁(G大阪)、本多勇喜(京都)らコンスタントにプロを輩出してきたが、チームを率いる須佐徹太郎監督が阪南大という組織の存在感を大きく際立たせていると言えるだろう。
 
「サッカーオタクやな、と思いました」
 
 1年生から主力として活躍し、全日本大学選抜で主将を務める重廣卓也は入学して須佐監督と出会い、率直にこう感じたという。ただ、これも尊敬の念をこめての言葉だ。
 
 阪南大・高見の里グランドにあるクラブハウスには国内外のサッカーの映像がこれでもかというほどストックされており、書籍や資料も多くある。筆者も一度内部に入れてもらったことがあるのだが、古今東西のサッカー情報が全て詰まっているその環境に衝撃を受けた。練習に入る前のミーティングでもプロの試合映像を編集したものを見せ、取り組むテーマを提示していた。
 
「いろんな選手のいろんな特徴が集まったビデオがたくさんあって、すごく良い勉強になります。特に自分はトップレベルの映像を見せてもらって“守備の部分でボランチがここまで出来る”というのを、映像を通して伝えられて、すごく刺激をもらった。おかげで今は守備を意識してできるようになっていますし、監督が出してくれる映像で自分は成長できているかなと思います。身体の使い方も直々に指導されていますし、そこの成果も出ています」
 
 重廣は中盤の底での奪取力や目の前のボールに対して誰よりも速く一歩を出して自分のものにすることに長けているが、その力もこの阪南大での指導を受けて身につけたものだった。
 
 ボールを動かし人も動き、ただ繋ぐだけでなく相手の背後を取ってゴールへ向かっていくのがチームのスタイルだ。「横じゃなくて縦を突きたいので。CBから斜めにもらって、さらに縦を突いて、縦を突いて、と。縦へ繋ぐサッカーをしたい」と重廣は言う。
 その中でボールの受け方や一つひとつの細かな動きにこだわりを見せるのも須佐監督の特徴である。4月30日に行なわれた関西学生リーグ3節の桃山学院大学戦では2点を先制しながらも安易な守備の対応で追いつかれ、後半に主将である脇坂泰斗が奪ったゴールでなんとか勝利を手にしたという形だったが、試合後の監督の憤慨ぶりは大きかった。ただ、感情まかせに非難するのではなく、局面における選択のミスや“サボる”ことに対して指摘をする。
 
「(相手の)CKが異常に多かったですよね。それも処理ミスとかビルドアップの時のポジショニングやプレーの遅さ。ビルドアップをしていく中で、背後を取れないから相手も楽になって、(相手は)プレスをかけることがゲームメイクになってしまっていた。押し込まれる原因になったのも、最初のスローインの対応のミス。走り抜けてはいけないところに選手が走り抜けてしまった」(須佐監督)
 
 ビルドアップにおけるサポートの身体の向きひとつをとって自らの身体を使って記者陣に力説する姿も印象的だった。
 
 試合後には「ボールを触った回数や、誰が誰に出す回数が多いとかデータとして残る」(脇坂)ので、チームでそれを振り返る。膨大な映像データを使って部のメンバーでグループを作って分析をするということも行なっており、ひたすらサッカーへの知識や考え方をブラッシュアップできる環境が整っているのだ。
 
 情報量の多さゆえに選手も辟易してしまいそうだが「それをやらないとAチームで出られないというのはみんな分かっているので、無理矢理にでも吸収しようとしています」と脇坂は語る。
 
 観戦の際、スタンドの高い場所に位置取り、俯瞰すれば、試合の動向が分かるし、見ていても面白いが、ただこのチームに関して言えばベンチ裏で監督がピッチの選手たちに送る指示に耳を傾けることも多いかもしれない。
 
 そういう意味でも、サッカーの“深い”部分を教えてくれるこのチームを、多くの人々に見てもらいたいものだ。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)