『君の名は。』公式サイトより

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 映画会社の東宝は自社公開の『シン・ゴジラ』や『君の名は。』の大ヒットもあり、2017年2月期連結決算の最終利益が前期比28.7%増の333億円と、過去最高益を達成した。このことからも、昨年は邦画の当たり年だったということがわかる。

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 そこで、昨年に高い興行成績を記録した“あの邦画”は、なぜヒットしたのか。映画業界関係者4人に自由勝手に語ってもらった。

●日本人の心に潜在的に存在した“ジブリロス”

――昨年の映画界の主役といえば、興行収入240億円を突破し、邦画歴代興行収入では『千と千尋の神隠し』に次ぐ2位となった『君の名は。』が挙げられると思いますが、映画業界にいるみなさんは、この作品をどう評価していますか。

A 映画ファン的に傑作かといわれれば、それはまたちょっと違うと思うけど、設定とか展開でご都合主義的なところがあるとはいえ、普通におもしろい。

B 単純に作者の都合でエンタメ的に話が進行しているかのように思われがちだけど、平安時代に成立したとされる古典『とりかへばや物語』や小野小町の和歌など、古典的なエッセンスを盛り込むことで、自然に見せてるね。

C でも、「なぜあの2人が入れ替わったのか」とか「3年の時間のズレをどう説明するんだ」などと一部では批判的な見方もされているけど、映画の設定なんて、そんなものですからね。

B 確かに。そんなこと言ったら、「ゴジラなんて現実にいないじゃん!」っていう意見がまかり通っちゃう(笑)。

D この映画を語る上でのポイントは、新海誠監督の過去作に比べて、はるかにエンタメ性が強かったということだと思う。『秒速5センチメートル』(07年)以前は単館で上映するような作品だったのに、今回は見事に大衆的な作品になっていた。

B 過去作の作風からすると、新海監督って観る人を選ぶというか、ちょっと閉じた作品をつくる人だなっていうイメージはあったよね。僕自身も『ほしのこえ』(02年)は大好きだったけど、好きなタイプの作家ではなかった。だってデートで観に行けないじゃん(笑)。でも『君の名は。』はデートにぴったりだよね。

A 映画を構成する要素でいったら、『君の名は。』は王道も王道だからね。それに加えて、若者に刺さりやすいRADWIMPSの楽曲をMV的に演出したり、タイムラプス(連続撮影した画像をつなげてスピード感を出す手法)も、手法としてはかなりベタなんだけど、観客に新鮮に受け取ってもらえた。映画を観慣れてる人からすると、「映像やアニメーションで勝負しろ」って否定的に取られるから、普通の映画監督はあまりやらない方法だけど、それも功を奏していた。

D 世間が“ジブリロス”っていうのもありますよね。宮崎駿監督はまた引退撤回してましたけど(笑)、結局みんな『耳をすませば』(95年)みたいな話をどこかで求めているんじゃないですか。

●リア充もこじらせ系も両方取り込めた

B そうだね。『君の名は。』はジブリとはまた違うんだけど、細田守監督じゃ物足りなかったところで、新海監督が出てきたっていうのもあるのかも。

D 細田監督はちょっと今っぽすぎるところがありますね。

B イケてるリア充の若者だったら細田監督の作品で感動できるんだけど、鬱屈したりこじらせたりしてる人は、自分のコンプレックス的なところを刺激されるのを好むもんね。新海ファンはもともとこじらせてる人が多いから、それプラス今回のポップな内容で、両方掴むことに成功したと。

C ジブリはリア充もこじらせ系も両方掴んできたから、そういう意味ではジブリに通ずるものはあるかもしれませんね。

(構成=編集部)