トルコ・マルディンにある建物の屋上でジャグリングをするシリアの少年たち(2017年3月19日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】笑い声が鳴り響き、興奮と歓喜の雰囲気の中、子どもたちは竹馬に乗ったり、皿をくるくると回したり、空中ダンスを楽しんだりしている──。

 これは大都市で見られるような一流のサーカスではなく、トルコ南東部の一軒家で行われている、シリア難民の子どもたちを対象にした「サーカス教室」だ。サーカスの技を教えながら、彼らが新しい環境に適応するのを助けるための独創的な試みとなっている。

「ハー・ヤールデ・サナト(Her Yerde Sanat)」協会の同プログラムには、3歳から20歳まで約120人が参加している。協会名はトルコ語で「アートはどこにでもある」を意味する。

 シリアとの国境に近いマルディン(Mardin)県のその家からは、メソポタミア平原の美しい景色が見渡すことができる。平原が広がるシリアは、プログラムに参加する子どもたち80人にとっての故郷だ。残りの生徒らはみなトルコ人だという。

 1階では約15人の子どもたちが、天井からつるされたひもを使った空中ダンス、ジャグリング、空中ブランコを交代で行っている。小さい子たちは別の部屋でパーカッションを激しく打ち鳴らしている。

 2階ではシリア人の子どもたちにトルコ語が教えられている。彼らが一日でも早く学校に溶け込めるようにするためのレッスンだ。

 子どもたちにとってこのサーカス教室は、つらい過去を少しの間でも忘れるためのいい機会となっている。そのため、指導に当たる講師らに対しては、子どもたちに出身地に関する質問はしないよう協会側が強く求めている。

■言葉の壁を乗り越える

 笑い声が響く中、2012年に同協会を設立した時のメンバーの一人、ピナル・デミラル(Pinar Demiral)氏は、子どもたちは「純粋にサーカスの芸術を創作している」「私たちはサーカスを言葉の壁を乗り越える手段として使っている」と語った。

 丸1日のワークショップで講師たちは複数の言葉を操る。音楽やヒップホップのクラスも受講している子どもたちからの助けもある。

 講師らの大半はトルコ国外からやって来るボランティアだ。滞在期間は平均3か月。みんな英語が分かり、トルコ語とアラビア語を話せる人たちもいる。

 6年前にシリア内戦が始まって以来、31万人以上が死亡し、500万人以上が国を去った。トルコ内務省が3月に発表した数字によると、現在トルコに避難しているシリア難民は290万人を超える。

■唯一のルール

 トルコの子どもとは違い、戦争を目の当たりにして全く異なる経験をしてきたシリアの子どもたちを指導するのは容易ではない。

 デミラル氏は、「トルコ人とシリア人の子どもたちの間でけんかが起きることもある。だが彼らがここに来た初日から『戦ってはいけない』という唯一のルールを教えている」と説明する。そして、彼らが戦争を体験した子どもたちであることを心に留め、暴力の連鎖を断ち切りたいのだと語った。

「彼らは最初、力を誇示するためにけんかをしたがる。それでも同じ空間で平等に遊んでいるうちに、グループ間の緊張は和らいでいくものだ」
【翻訳編集】AFPBB News