「トークショーの達人ですから。一番の得意分野です!」

千葉ロッテでの現役時代にはディナーショーを開き、試合後にマイクパフォーマンスならぬ球場ライブまで披露してファンを笑顔にさせ続けた男、里崎智也。現役引退から2年半以上が過ぎ、解説者となった今も、その饒舌ぶりは健在。いや、さらに磨きがかかっていた。

5月3日、東京スカイツリーのイベント会場で行われた「J:COMプレゼンツ ニッポン放送ショウアップナイター『プロ野球トークショー』in J:COM Wonder Studio」で、「ショウアップナイター」が誇る人気解説者・里崎智也が登壇。集まった野球ファンはもとより、ゴールデンウィークでたまたま居合わせた観光客の足も止め、異様な熱狂を生み出していた。

「写真? まあ、禁止にしたって、男前だからみんな撮りたいでしょ(笑)」



神っていた里崎が語る、もっと神っていた小林誠司


今年のプロ野球といえば、開幕前に盛り上がったWBCの話題も大きなトピックス。WBCと里崎智也、といえば、第一回大会(WBC2006)で優勝した日本代表の正捕手であり、ベストナインにも輝いた実績を誇っている。

「WBCでの世界一があるから、僕は今、仕事ができています。だって、僕がメディアに出るときの紹介文、見てみてくださいよ。『ロッテ』なんて出てこないんですから。紹介の9割が、『WBCで世界一・ベストナイン捕手:里崎智也』。残りの1割が季節もの。クライマックスの時期になると『下克上の申し子』とかね(笑)」

WBC2006しかり、クライマックスからの下克上日本一(2010)しかり。大一番やプレッシャーがかかる試合でこそ結果を残してきた印象が強い里崎。実際、WBCでは22打数9安打で打率.409、1本塁打に5打点を記録。この活躍で、世界大会におけるベストナイン捕手を勝ち取ったわけだ。

「(WBC2006は)神ってましたね。振ったらヒットでしたもん。でも、今年でいうと小林誠司のほうが神ってました。小林が打てば、何かが起きる。チームを支えたといっても過言ではない結果を残しましたよね」

だが、小林が本当に成長できたかどうかは、「今年1年間の結果で判断すべき。今シーズンが大事だ」と里崎は続ける。

「僕なんて、日本のベストナインよりも、世界のベストナインを先に取っちゃったんです。そのときに思ったのが、『日本でもベストナインを取らないと、たまたま感がにじみ出る。これは今年頑張らないと!』ということでした。それでそのシーズン頑張って、2006年のパ・リーグベストナインを取ることができたんです。ものすごく嬉しかったのを憶えています」

現在、打率1割台と苦戦を続ける小林にこそ届けたい言葉だった。


一番凄かった投手は、ダルでもマーでも松坂でもなく……


 世界の舞台を経験した男、里崎智也をゲストに迎え、議題にあがったのは、「現役時代、一番凄いと思った投手は誰?」というもの。里崎は「それ、よく聞かれるんですけど、盛り上がらないですよぉ」と断りを入れ、話を続けた。

「日本ハムにいた、グリン、っていうピッチャーです。全然打てなくて、シーズン27、8打数対戦して、1安打。グリンさえいなければ3割バッターになれたんちゃうか!?って思いましたもん。だから、グリンが日本ハムから横浜に移籍したときは、心の底から喜びましたね……ほら、グリンのこと、ほとんど知られてないから、この話盛り上がらないんですよ! ここでみんなが期待するのは、ダルとかマー君とか、松坂とか、そういうのでしょ。残念ながら、そこそこ打ててたんです(笑)」

では、捕手目線で一番凄いと思った投手は?

「受けてきた中で、一番素晴らしいなと思ったのは上原浩治(現シカゴ・カブス)さん。ストレートも変化球も、本当に構えたところに切れよく来ていたし、ギリギリまで胸が見えないんです。胸が早く見えるピッチャーっていうのはダメ。その点、上原さんは最後の最後まで胸が見えず、球の出どころがわからない。素晴らしかったですね」

ただ、「日本のエース」と呼ばれるような投手たちの球を受ける際は、別な問題点があったという。

「いいピッチャーすぎると、出したサイン通りにちゃんと投げてきよるんです(笑)。まぁ、構えたところ来る! そうなると、打たれたらもう(キャッチャーの)リードのせいじゃないですか(笑)。だから、必死でしたよ。国際大会の方が、リード面では逆にプレッシャーがありましたね」

国際舞台で感じたプレッシャーについて言及した里崎。だが、普段の試合では、あまりプレッシャーを感じることはなかったという。

「野球に限らず、団体スポーツは自分ひとりが頑張ったところで、それがそのまま勝敗に直結するわけじゃないんです。5打数5安打5ホーマー打っても、守備がミスをして6点取られたら負けることもある。逆に、5打数5三振でも、チームが頑張れば勝つこともある。勝ち負けに固執するとプレッシャーがかかります。でも、自分ひとりで勝つこともなければ、反対に、自分ひとりの責任で負けることもない。選手は、“自分の結果”に対してだけ責任を負えばいいんです」

野球に限らず、ビジネスの世界でも活かせそうな“心の持ちよう”だ。

「もちろん、自分の結果が出なければ辞めなければならないし、結果が出れば給料が上がっていく。反対に、監督は、個人の成績が出なくてもチームが勝てば評価されるし、選手がすごいプレーをしてもチームが勝たなければ首になる。その責任の所在がハッキリしているから、僕ら選手は自分の結果をしっかり出すことに専念することができるんです」


ビジネス評論にはなりたくない


現役生活16年。長きに渡ってプロの世界で生きてこられた理由を聞かれた里崎は、「野球が好きだったからですね」と答えた。

「子どもの頃から、小・中・高・大学と、やってることはずっと変わらないんです。ただ、大学までは学費も含め、お金を出して野球をしていたのが、プロに入ると同じことをしてお金がもらえるようになった。もちろん、上にあがっていけばいくほど、責任とか重圧とかプレッシャーは大きくなります。苦しい面もいっぱいありますよ。打てなかったこともあるし、勝てなかったこともある。苦しいんです。でも、その苦労が勝ちに結びつくこともある。そうなると、グラウンドに行くことが遊びに行くようなものでした」

その苦しい日々を経て、解説者として生きる今。現役時代に戻りたい、と思うことはないのだろうか。

「まったく思わないです。今が最高ですね(笑)。だって、朝の目覚めがいいですもん。現役時代、朝起きてまずしていたのが、体が痛くないかを探すこと。もしくは、痛いところがひょっとして一晩寝たら治ってるんじゃないか……と現実的に起こりようがない無駄な想像をすること。そこから1日が始まるし、気づいたら常に球場にいるんです」

この日の会場では、プロ野球ロッテ対日本ハムのJ:COM映像がライブで流れていた。そのモニターを見ながら、里崎は話を続ける。

「それで、こんな展開(ロッテの打率1割台)になってみなさいよ、たまったもんじゃないですよ(笑)」

直言ばかりの里崎コメントに、司会の清水久嗣アナがたじろぐ場面も。だが、里崎は止まらない。

「事実を伝えるのが評論家・解説者の一番の使命じゃないですか。(モニターを指差し)あそこにいる選手の顔色をうかがったってしょうがない。気にするとしたら、リスナーの顔だけですよ。僕もね、そうはいってもオブラートに包みながら喋ってるんです。でも、周りの人に言われるのは『サトのオブラートは薄い』って(笑)。ロッテのことも、オブラートに包んで言ってるつもりなんですよ。もっと言いたいことはあるんです。でも、そうなると、ずっとピー音ですから(笑)」

そんな里崎の解説は、野球ファンの間でも支持が高い。

「気にしてくれると嬉しいですね。批判でもいいです。“批判は最高の賞賛”。なんのリアクションもないのが一番最低ですから。ラジオに出て、テレビに出て誰にも響いてないのが一番厳しいです。批判されるっていうのは、僕に興味を持ってくれている、ってことですから、最高ですね。あと、批判されても僕の脳は、いいことしかインプットしない仕組みになってるみたいです(笑)」

この日は、春先の順位予想に関して、大阪の放送局スタッフを慌てさせたエピソードも披露した。

「大阪の番組で、阪神5位です、っていう予想をする勇気を買ってくださいよ(笑)。『里崎さん、大阪の番組で阪神をBクラスにする人、始めてみました』って言われましたもん。でも、俺は変えないよ、って。だって、地区によって順位予想変えてたら、ビジネス評論になっちゃうじゃないですか。ビジネス評論にはなりたくないんです」

そりゃ、解説にも人気が出るわけだ。

(オグマナオト)