第66回黒鷲旗(くろわしき)全日本男女選抜バレーボール大会は、5月3日にグループ予選2日目が行なわれ、男子は柳田将洋が所属するサントリーサンバーズと石川祐希を擁する中央大学が対戦した。


サントリーを勝利に導いた柳田将洋 この2チームは近年、黒鷲旗大会や天皇杯などで戦っており、2015年の天皇杯では中大がサントリーを破るジャイアントキリングを果たした。サントリーはその敗戦後にVリーグでも調子を落とし、入れ替え戦に回った苦い記憶がある。

 共に全日本のエースでもある石川、柳田はそれぞれ単独でも人気があるだけに、直接対決となると、より一層の注目カードになる。両チームの因縁も相まって、この日の試合も指定席は完売。スタンド自由席も立錐(りっすい)の余地もなく、通路から立ち見をする人もいたほどだった。

 熱気渦巻く中で始まった試合は1セット目、柳田の好サーブでサントリーが序盤をリードする。しかし中盤からは中大が巻き返して最後はデュースにもつれ込み、26-24で中大が先取した。

「2年前の再現なるか?」と観客が息を呑むなか、2セット目はこの大会で勇退する北京五輪代表の山村宏太の活躍もあって、サントリーが主導権を奪ってセットを取り返した。追いつかれた中大は3セット目から石川にボールを集めるも、柳田が石川からサービスエースをあげるなど勢いを遮断。サントリーがそのまま4セットまで連取して試合を決めた。

 この結果、3-1で勝利したサントリーが2次ラウンドに駒を進め、中大のグループ予選敗退が決まった。柳田は「すごくレベルが高い相手なので、大学生とは思わずに戦った。苦しい試合でした」と振り返りながら、2年前に敗れている相手への意識についてこう語った。

「いろんな因縁というか関係がある相手で、負けた悔しさは心の片隅にもちろんありました。それを払拭するのは自分ひとりだけではできない。自分自身と仲間を信頼するしかないんです。第1セットを取られて焦りもゼロではなかったけど、それを鎮めるのもチーム力。第2セットを取り返すことができて、落ち着くことができました」

 柳田の「狙い」ははっきりしていた。この試合1本目のサーブは、中大のリベロで実弟の貴洋を直撃したが、「弟だから『この野郎!』と思って打ったわけじゃないですよ(笑)。データ的に、昨日の(中大-パナソニック戦で)サーブレシーブ返球率が一番悪く、レセプション(サーブレシーブ)を受ける3人の中で一番プレミアリーグのサーブを受けたことがないのが弟でしたから。だから、弟と、エースの石川君から崩すために2人を狙いました」と、悪夢を振り払うための執念を明かした。

「サントリーサンバーズの看板を背負っているひとりとして、また大学生に負けるわけにはいかなかった。自分もサントリーで最後ですし、山村さんのキャリアをここで終わらせてはいけないとすごく感じていました。最後に花を添えたいという気持ちは強いです」

 柳田はこの大会を最後にサントリーを離れ、プロ選手として海外リーグに挑戦する。その決意に際し、先に2度の海外リーグへの留学を経験している石川の影響も多分にあると語る。その石川については、「プレーを見たのは久しぶりでしたが、相変わらずレベルの高い選手で、スパイクの打ち方など、参考にしたいと思えるところもあった」と称えた。

 一方、柳田からサーブで狙われた石川は、「柳田さんのサーブは速いし回転がないので、はじいてしまう。そういう球が来ると思って構えていたら、前に落とされたりして揺さぶられてしまった」と苦笑い。中大は、U-23のアジア選手権のメンバーに選ばれた、主力の大竹壱青(オポジット=攻撃専門のポジション)が抜けており、その影響も少なくはなかった。


試合には敗れたが、エースの存在感を見せた中央大学の石川祐希 それでも、3セット以降に打数が自分に集中したことに関して、「打ち切れる自信はあるので、(トスを)持ってきてほしいと思っていました」とエースの矜持(きょうじ)をにじませていた。石川は、4月中旬にセリエAの短期留学から帰国したばかり。イタリアで痛めた腰の状態も万全ではないが、「腰はいいか悪いかでいえば、悪い。でも、普通にプレーはできますし、あと1試合やった後に全日本の合宿に入るので、それに向けてコンディションをしっかり整えたい」と前向きだった。

 互いを意識しながら実力を高め合う柳田と石川。2人を含めた全日本男子代表は11日から合宿を行なう。国内での今年度最初の試合は、6月9日からのワールドリーグ高崎大会。激戦を繰り広げた両エースが、今度は同じユニフォームを着て海外勢を迎え撃つ。

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