▽昨日のスポーツニュースは、森本貴幸(15歳10ヶ月6日)に次ぐ若さでJ1(ルヴァンカップ)にデビューした久保健英の話題で持ちきりだった。味の素スタジアムで行われた札幌戦には1万9123人の観衆が詰めかけ、報道陣は231人と異例の多さだった。

▽広報によると、例年GW(ゴールデンウィーク)期間中は連休のため集客力も落ちるとのこと。まして、関係者には気の毒だが、ナビスコカップの時代からグループリーグは平日のナイターということもあり、リーグ戦ほどファン・サポーターも足を運ばない。まして対戦相手は遠隔地の札幌。800人ほどのファン・サポーターが駆けつけたそうだが、「1万人も入れば御の字」(広報担当者)だったのが、前売りで1万8千枚も売れたそうだ。

▽それもこれも、久保がデビューする可能性が高いと告知したからだろう。そして実際に2万人近い観衆を集めるのだからたいしたものだ。そして久保は66分に永井と交代で出場すると、直後のFKのこぼれ球をすかさず左足でシュート。これはDFにブロックされたものの、その後も果敢にドリブル突破を仕掛け、FKキッカーとしてゴールを狙った。

▽今さら久保の非凡さを説明する必要はないと思うが、対戦相手の小野伸二の久保評を紹介しておこう。

「久保君は非常に堂々としていた。見ていてゴールしてしまうのではないかというオーラを感じた。今日は少し遠慮もあったのでしょう。U-23やU-20になればもっと堂々とプレーするでしょう。FKもあそこで蹴らしてもらえるのはチームも信頼しているから。僕とは全然比較にならない。ケガなくワールドユース(U-20W杯)に行って、いい結果が出ることを祈っています」

▽小野ら“黄金世代”がワールドユースで準優勝したのが1999年。久保が生まれたのは2001年と、小野らの快挙を知らない世代でもある。それでも久保は「小野さんのプレーはYouTubeで見たことがあったし、トラップは足に吸い付くよう。これが一流選手かと思った。W杯とかに出ているし、オーラがあった。(小野に褒められたことを伝え聞くと)光栄です」とはにかんでいた。

▽その久保の凄いところがもう1つある。普段のFC東京は、試合後にメインスタンド下のホールに柵を置いて、両チームの選手は呼び止められたら報道陣の質問に答える。いわゆるミックスゾーンというやつだ。しかし昨夜は、両チームの全選手が消えてから久保が登場し、報道陣の質問に答えた。その際に、いつもなら背景にはFC東京のメインスポンサー数社のロゴが入ったボードが設置される。しかし久保の背後には大手飲料メーカーのロゴだけのボードに変えられていた。

▽たぶん札幌戦は『○○○デー』と銘打たれた試合だったのだろう。そして思い出したのが、昨年11月5日に駒沢陸上競技場で行われたJ3リーグの長野戦、久保がJデビューを果たした試合も『○○○デー』だった。その時も、テレビ取材の際は久保の背後にボードがあったと記憶しているが、メーカー名までは覚えていない。15歳にして、すでに久保には公にできないものの、スポンサーがついているのかもしれない。だとしたら末恐ろしい15歳でもある。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。