中国の人民元は偽札が多いことで知られている。中国では、店頭に偽札鑑別機が置かれた店が少なくなく、店員は客から50元(約798円)や100元(約1595円)紙幣を受け取ると、必ずその真がんを確認する。

激しいインフレに襲われていた1988年に登場した100元紙幣。国際通貨基金(IMF)の統計によると、その後の29年間で中国の物価は3.6倍上昇しているが、100元を超える高額紙幣は現在まで発行されていない。偽札がさらに横行することが目に見えているからだ。

中国政府は、偽札対策の重要施策としてキャッシュレス化を進めている。中国のITニュースサイト、36KRによると、スマホ決済最大手のテンセント(騰訊)のユーザーは6億人を越え、全人口の4割強に達している。

一方で国境の向こう、人民元が事実上の通貨と化している北朝鮮ではどうだろうか。ナレカードなどの電子マネーが存在するが、使用は平壌市内の一部に限られており、決済のほとんどが現金によるものだ。

そのような事情もあり、北朝鮮では中国以上に偽札がはんらんしていると言われるが、現地の人々は何と、肉眼で偽札を見分けており、市場の商人はもはや偽札鑑定の専門家のレベルにあるという。咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋が、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)にその内部事情を語った。

最近、市場の景気は悪く、儲けが市場管理費(1週間で3500北朝鮮ウォン、約46円)にも満たないことが多いのに、偽札を掴まされでもしたら大損をしてしまう。

そこで紙幣を受け取る度に偽札鑑定が必要になるが、中国のように鑑別機を使おうにも電気がない。そこで、最も原始的な「紙幣を指でこする」という方法で偽札かどうかを見抜く技術が発達した。そのレベルの高さに、客も一目置いているほどだという。

新人の商人は自信がないからか、最初は先輩に任せるが、半年もすれば正確に偽札を見分けるワザを身につける。

紙幣を太陽にかざして透かしや金属線がきちんと入っているかを確認したり、紙幣を白い壁になすりつけて、壁にインクがつかないかを見て確認したりなど、様々な方法が使われている。

北朝鮮で偽札が横行するのは、紙幣の流通事情によるものだ。

中朝国境と接している羅先(ラソン)、会寧(フェリョン)、恵山(ヘサン)、新義州(シニジュ)などには、中国から人民元が大量に流入するため、きれいな紙幣が流通している。

そういった紙幣も国内を回りに回り、中朝国境から離れた平安道(ピョンアンド)や黄海道(ファンヘド)の内陸地方にたどり着くころにはボロボロになって、真がんの見分けがつきにくくなる。そこに目をつけた北朝鮮の犯罪組織が、中国の犯罪組織と手を組み、偽札を大量に製造・流通させていると言われている。

人民保安省(警察)や国家保衛省(秘密警察)は、偽札があまりに多すぎるため、特に対策を取らず傍観しているという。

偽札を警戒しているのは中国の貿易業者も同じだ。北朝鮮の取引先から受け取った札束に偽札が混じっている可能性が高いからだ。そこで、偽札鑑別機にかけるのは常識で、すべての紙幣をコピーした後、持ち込んだ人物に署名させる。1枚でも偽札が見つかった場合に、責任を追及できるようにするためだ。

しかし、現金を運んだだけなのに署名させられ、問題が発生したら責任を負わされるのは理不尽だとして、取引の現場でトラブルになることも多いとのことだ。