最後に結果を残した小川だが、90分を通じて満足のいく出来ではなかった。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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[ルヴァンカップAグループ4節] 柏 1-2 磐田/5月3日/柏
 
 1-1で迎えた86分、PKを獲得した磐田は、U-20日本代表FWの小川航基が冷静に決めて、チームを勝利に導いた。
 
 これだけを見ると、彼が勝利の立役者のように見えるが、PKを獲得したのは別の選手が放ったボールがハンドを誘発したもの。90分間全体を見てみても、小川は流れの中からシュートは1本も打てず、それどころか同じU-20日本代表CB中山雄太の徹底したマークに遭い、ボールを受けても思うように前を向かせてもらえなかった。
 
 前日にU-20ワールドカップに挑むU-20日本代表メンバー発表があり、当たり前のように名を連ねた彼は、注目が集まる中で思うようなプレーを披露することができなかった。
 
 それは組織的な問題もあった。1トップ気味に前線で張る小川をターゲットに、縦パスを送り込むが、彼がボールを収めても全体的にサポートが少なく、数的不利を作られてボールを奪われてしまうシーンが目立っていた。
 
 それでも「高い位置で僕がボールを収めて、そのセカンドボールを味方が拾えたら、間違いなくジュビロのリズムになると思っていた。あそこで起点を作って、チームを落ち着かせて、攻撃を活性化させることを意識し続けました」と、何度もボールを収めて、攻撃の糸口を見出そうとした。
 
 何度も実現する小川と中山のマッチアップ。小川がボールを受けて、前を向こうとする度に、中山が身体を入れて自由を許さない。マッチアップの点では中山に軍配が上がっていた。だが、悪いなりにも小川はFWとして必要な姿勢を持ち続けた。
 
 奪われても、奪われても前線でボールを引き出す動きをしつこく継続したのだ。この姿勢に、名波浩監督はある決断を下した。
「小川はマッチアップする中山の球際の強さなどを自分の中で理解をして、アジャストするのに時間が掛かってしまったが、後半30分あたりからボールを収められるようになったので、最後まで使おうと思った」
 
 名波監督の考え通り、徐々に小川の前線でのタメがボディーブローのように柏守備陣に伸し掛かった。
 そして名波監督は、援護射撃をするように65分にMF針谷岳晃に代えてMF川辺駿を、72分にはMFアダイウトンに代えてFW齊藤和樹を投入。川辺と齊藤が小川を前向きにサポートするようになったことで、磐田の攻撃は活性化されていく。
 
 76分に左サイドを突破した齊藤の折り返しを川辺がダイレクトで蹴り込み、同点に追いつくと、冒頭でのシーンがやってくる。ペナルティエリア内のハンドでPKが宣告されると、小川は真っ先にボールの下に駆け寄り、ボールを抱えてペナルティスポットに向かった。
 
「常に(PKは)自分に蹴らせてほしいと言っているし、チームも了承してくれているので、本当に感謝をしています」と、迷うことなくキッカーに名乗り出て、冷静にGKの逆を突いて決めてみせた。
 
「個人としてはまったく満足できない内容です。点を決めたと言ってもPKですし、流れの中で相手の強烈なアタッカーのようにきっちりと仕事ができる選手にならないと。個人の能力はまだまだ低いと痛感しましたし、もっと周りに強く要求してゴールに直結する動きをするべきだった」
 
 試合後、反省の弁を述べたように、ゴールを決めたこと意外は、決して躍動したわけではなかった。しかし、「それまで何もしていないのに、最後にPKでもゴールを決めることができた。重要なのは勝ちを掴むこと。それにつなげられたのは良かった」と、どんな状況でもゴールを目指し続け、きっちりと結果を残す。FWとしての最低限の仕事はできた。
 
 名波監督も「結果的にPKを決めてくれましたし、彼は最後の方は相手の脅威になったと思う」と、その姿勢を評価。U-20日本代表のエースストライカーとしての面目は保った。
 
「(堂安)律だったり、同年代で活躍している選手はたくさんいるので、それに負けないように、自分が(U-20日本代表の)エースなんだということを証明できるように、僕のゴールで勝利に導いて、いい状態でU-20ワールドカップに臨みたい」
 
 世界の檜舞台まであとリーグ戦1試合、ルヴァンカップ1試合の2試合のみ。良い形でU-20ワールドカップの躍動につなげるべく、小川はより貪欲にゴールを目指し続ける。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)