AP通信や中国中央テレビは先週、北朝鮮の平壌でガソリンの販売制限が始まり、価格が高騰していると報じたが、その影響が時間差で地方にも広がっているもようだ。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、全国的な交通と流通の要衝である道内の平城(ピョンソン)市では、隣接する平壌からワンテンポ遅れてガソリン価格の高騰が始まった。

体制不信も

先月27日、同市内でそれまで8350北朝鮮ウォン(約109円)だったガソリン1キロ(1.34リットル)の価格が1万7625北朝鮮ウォン(約229円)まで上がった。その後、今月2日の時点で1万4800北朝鮮ウォン(約192円)まで下がったものの、依然として高止まりした状態だ。

情報筋によれば、中国が原油供給を止めたとの噂や、平壌でガソリン価格が高騰しているという情報に加え、倉庫からガソリンが盗まれたとの噂までが広がり、平城での価格上昇につながったもようだという。そうした話を聞きつけた平城の商人たちが、ガソリンを売り惜しみしているようだ。

それに伴い、「ソビ車」と呼ばれる個人営業のタクシー・運送業者の運賃が上がるのではないかとの話が拡散。市場では利用客が目に見えて減ってしまい、ドライバーたちは不安がっている。

一方、両江道(リャンガンド)の内部情報筋も、同地でガソリン価格が高騰していると伝えている。1日のガソリン価格は1万4100北朝鮮ウォン(約183円)だった。また、ディーゼル油も4270北朝鮮ウォン(約55円)から1万1750北朝鮮ウォン(約153円)まで上昇した。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が、アジアプレスの北朝鮮国内情報を引用して伝えたところでは、先月28日の両江道でのガソリン価格は1リットル6元(7050北朝鮮ウォン、約91.6円)だった。これを1キロの値段に換算すると9447北朝鮮ウォン(約129円)となり、平城よりさらに遅れ、価格高騰が先週末に起こった様子が伺える。

前出の内部情報筋によると、ガソリン価格の高騰に伴い、生活必需品や穀物を中国から仕入れていた密輸業者が、品目をガソリンに切り替えた。当局は、田植え機などに必要だとして、ガソリンの密輸を黙認しているという。

中国が北朝鮮への原油の供給を止めたかどうかについては、確認された情報はない。考えられるのは、米中首脳間などで交わされた対北朝鮮制裁をめぐるやり取りが、北朝鮮経済に心理的圧力として作用するに至ったということだ。

毎年4月になればガソリン価格が1万北朝鮮ウォン(約130円)ほどまで上がる傾向があったが、未だかつてここまで上がったことはなかったとされ、庶民の間からは不安の声が上がっている。

不安がいっそう拡大するようなら、北朝鮮国民の金正恩体制に対する不信が強まる可能性がある。

(参考記事:「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民のキツい本音