ナンガルハル州バティコット地区の治安部隊を統括するハジ・ガリブ元収容者(2017年1月17日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】キューバ南東部グアンタナモ(Guantanamo)にある米海軍基地収容所に共に収容された2人のアフガニスタン人。2人は友人同士だが、釈放された後は、まったく違う道を選んだ──一人はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員となり、もう一人はIS打倒を目指す米国主導の連合軍に加わった。

 共に詩を愛し、深い友情で結ばれていたハジ・ガリブ(Haji Ghalib)元収容者とアブドゥル・ラヒム・ムスリム・ドスト(Abdul Rahim Muslim Dost)元収容者は、2001年9月11日の米同時多発テロ後の米国の捜査網に掛かって拘束され、遠くグアンタナモ収容所へと送られた。

 バラク・オバマ(Barack Obama)前米政権が目指したグアンタナモ収容所の縮小だが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がこれを覆そうとしている。かつての友人2人がたどった運命には、まさに過激派根絶の闘いにおけるグアンタナモの負の遺産が凝縮されている。

「グアンタナモは地球上で最悪の場所だ」と、ガリブ元収容者は言う。自分の年齢をおそらく49歳と話すそのやつれた顔には、深いしわがしっかりと刻まれている。

 ガリブ元収容者は「なぜ私は捕らわれたのか? 彼らはなぜ私の人生のうちの5年間を台無しにしたのか? なぜ公正な裁きも補償もないのか?」と日々、自問を繰り返しているという。

 旧ソ連軍と旧支配勢力タリバン(Taliban)に対しては、「恐怖の司令官」としてアフガニスタンでその名をとどろかせたガリブ元収容者だが、警官となっていた2003年に突然、反政府勢力との関係を疑われた。当局はガリブ元収容者を辱めるかのように公の場で彼を罷免。警官の制服をはぎ取り、彼をグアンタナモに送った。米軍が2007年に「国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)あるいはタリバンのメンバーであるとの判断はできない」との結論に至るまで、彼は5年間収容された。

 釈放されたとき、ガリブ元収容者はこの怒りを米国ではなく、タリバンに向けた。彼はタリバンを「アフガニスタンの真の敵」と呼ぶ。最近では、アフガニスタンに触手を伸ばしているISにもその怒りは向けられている。

 そのISの戦闘員に、かつての友人ムスリム・ドスト元収容者がいる。ガリブ元収容者よりも2年早くグアンタナモから釈放された彼は現在、アフガニスタンのナンガルハル(Nangarhar)州東部でIS司令官として活動していると、欧米やアフガン当局はみている。

■グアンタナモで聖戦について説教

 扇動家としての才能があるムスリム・ドスト元収容者は、グアンタナモでの時間を礼拝と他の収容者たちへの説教に費やした。2001年9月11日に発生した米同時多発攻撃の首謀者とされるハリド・シェイク・モハメド(Khalid Sheikh Mohammed)被告と共に「ジハード」(聖戦)について説いていたという。

「彼が説教をすると、収容者たちは泣いた」「彼の大きくて人々をとりこにする声に揺さぶられていた」と、ガリブ元収容者は振り返る。グアンタナモでは、紙すら十分にもらえず、ムスリム・ドスト元収容者は紙コップに詩を書いていたという。

 当時、ガリブ元収容者と共に収容され、現在はトウモロコシ農家を営むいとこのカコ元収容者(35)は「グアンタナモはテロの温床だ」と言う。「あそこはムスリム・ドストのような狂信者に正当性を与えた」のだと。

 2002年に開設されたグアンタナモ収容所は、今も反米感情の矢面に立っている。収容者の4分の1近くはアフガニスタン人だった。大半は非戦闘員だが誤認逮捕されたり、地元の賞金稼ぎや個人的に敵対する人物から不当に通報されたりしていたことが後に判明している。

■「戦場で見たら、生かしておかない」

 米軍が主導する有志連合と共にあるガリブ元収容者は現在、ナンガルハル州バティコット(Bati Kot)地区を統括している。ここは、タリバンとISの拠点に挟まれつつも、緩やかな丘陵にオレンジやメロンの農場がパッチワークのように連なっている地帯だ。

 彼の行動の背景には、タリバンに対する私的な恨みもある。2013年にきょうだいや妻2人、孫たちをはじめとする20人近い家族・親戚をタリバンに殺害された。

 要塞化された基地の中でガリブ元収容者の取材を行っていたさなか、彼の長男がタリバンから奪ったトランシーバーを首から下げて、さらなる衝撃のニュースを伝えた。つい数分前までガリブ元収容者にお茶を注いでいた彼の近親者が、基地を出たところで奇襲攻撃に遭い、射殺されたというのだ。

 ガリブ元収容者は表情を曇らせ、顔を手で覆った。「ムスリム・ドストのようなやつらは外国人と戦っているが、主にアフガン人を殺している」と、自らを落ち着かせながら語り、「ムスリム・ドストを戦場で見たら、生かしてはおかない」と静かに語気を強めた。
【翻訳編集】AFPBB News