もしあなたが「ゴールデンウィークだし、ちょっと気の利いた銃撃戦が見たいな〜」という気分なら、今見るべきは『フリー・ファイヤー』である。


90分間撃ちっ放しの撃たれっ放し!


舞台は70年代のボストン。とある廃工場に2組のギャングたちが集結する。目的は30挺のライフルを巡る取引だ。ライフルを買う側はアイルランド人(明言されないけど確実にIRA)の4人組に仲介役の女が1人。売る側は武器商人の南アフリカ系イギリス人に元ブラックパンサー党員、プロの用心棒に運転手役のチンピラ2人というバラバラのメンツ。

取引が無事に終わりそうに思えたその時、両グループのチンピラ同士が昨晩殴り合いのケンカをしていたことが判明! ブチ切れるチンピラ2人を止める周囲のメンバーだったが、片方が1発撃っちゃったもんだからさあ大変。廃工場という密室で、銃弾飛び交い現金を奪い合うバトルロイヤル状態に。最後に笑うのは誰だ! というお話。

人間関係がこじれまくった挙句の密室での撃ち合いと騙し合い……と聞くと『レザボア・ドッグス』や『ヘイトフル・エイト』など一連のタランティーノ作品を思い出すけど、本作は会話劇メインのタランティーノ作品より火薬量・発砲弾数ともに多め。互いにバカバカ撃ちまくってはその合間に登場人物が会話するという、まことにトリガーハッピーな一本となっている。

というわけで、本編90分間全員ほぼ撃ちっ放し。「お前らどこにそんなに弾持ってたんだよ!」という感じである。銃撃戦の合間に会話劇が進むので混乱しそうだけど、登場人物の服装が全員見事にバラバラでそれぞれキャラも立っているので、ぼ〜っと見てても意外なほど話を理解しやすい。舞台となる廃工場の広さも絶妙で、死角やアップダウンが存在する広い密室(でも怒鳴れば互いの声が届く程度の広さ)でのドタバタ這いずり回りながらの銃撃戦というシチュエーションの面白さを、しつこいくらい見せてくれる。銃撃戦はどうしても直線的な絵になるので、場面に変化を付けられるシチュエーションは大事。そういう意味で、本作はガンアクション好きならウキウキしちゃう状況設定を堪能できるのだ。

銃撃戦のゲシュタルト崩壊、そして謎の感動


この映画、始まると同時に「人間は撃たれてもそう簡単に死なないことを知ったから、そんなしぶとさを表現するためにこの映画を作ったんだ!」という監督からのメッセージが表示される。その言葉に偽りはない。とにかく本作の登場人物はしぶとい。しぶといにも程がある。

実際の射撃でもそうらしいけど、とにかく拳銃というのは狙ったところに当たらない。登場人物たちがお互いどんだけ射っても弾は逸れまくるので、致命傷ではない部分の負傷ばかり増えていく。なので映画が進むにつれて全員立っていられなくなり、途中からはほぼ匍匐前進。それでも暴れまわる姿はけっこう笑える。

笑えるのだが、途中からなんだかよく分からない気持ちになってくる。毒づき血みどろになりながらそれでも這いずり回ってなんとか自分だけ美味しい目にありつこうとする彼らの姿。決して諦めずのたうち回るその姿は、ひょっとしたら美しいのではないか。いいタイミングで流れるジョン・デンバーの名曲も手伝って、気がついたら死ぬまで戦い続けるギャング達にけっこう感動してしまっていた。同じシチュエーションでの撃ち合いをずっと見続けることによって起こる、銃撃戦のゲシュタルト崩壊である。

部分ごとのアクションシーンとしての銃撃戦ではなく、全編銃撃戦だけで「人間のしぶとさ」という主題を語る『フリー・ファイヤー』の試みは正直人を選ぶかもしれない。だが、映画におけるガンアクションの立ち位置を大幅に入れ替えた意欲作であることは間違いない。一見すると悪い冗談みたいな映画だけど、テーマを語ることに対してはなかなか真摯な一本なのである。
(しげる)