勝敗だけですべてを判断できないのはもちろんのこと、内容を見るにしても、どこをどう切り取るかによって評価はガラリと変わる。ガンバ大阪にとっては、そんな試合だったのではないだろうか。

 4月30日に行なわれたJ1第9節。ガンバは敵地・日産スタジアムに乗り込み、横浜F・マリノスを1-0で下した。この勝利で勝ち点を18に伸ばしたガンバは、前節終了時と同じ2位を守るとともに、首位の浦和レッズ(勝ち点19)に勝ち点1差まで肉薄した。


堂安律のゴールで勝利したガンバ大阪 まず結果に関しては、言うことなしだろう。

 ガンバはF・マリノスを苦手としており、昨季もルヴァンカップを含めて4回対戦したが、一度も勝てていない(1敗3分け)。しかも、日産スタジアムでの相性の悪さは顕著で、2009年を最後に勝利がなかった。

 だからこそ、ガンバの長谷川健太監督は「難しい相手にアウェーで勝利できた」ことを「大きな勝利」と評した。

 この試合では控えに回り、ベンチから試合を見守ったMF遠藤保仁も、「内容はどうあれ、勝ったことで上との差は縮まる。優勝するためには(内容が)悪いときも勝つことが絶対条件なのでよかった」と、貴重な勝利を喜んだ。

 遠藤は「内容はどうあれ」と前置きしたが、内容に関しても、ある意味で非常に強い勝ち方だったように思う。

 確かに前半は、FW長沢駿が「まったりしたゲームだった」と表現したように、互いに効果的な攻撃が少なく、目立った動きがない試合だった。「お見合いする時間が長かった」とは、長谷川監督の弁である。

 だが、ガンバは後半59分、長沢とFWアデミウソンを同時投入したことで、試合の流れを一気に手繰り寄せた。2トップを入れ替えたことで攻撃は各段にスピードアップし、迫力を増した。64分にMF堂安律のゴールで先制してからもなお、F・マリノスの反撃を確実にはね返しつつ、追加点のチャンスを作り出した。

 まったりしていた前半にしても、ほとんどの時間でボールを保持していたのは、ガンバである。F・マリノスにボールが渡ったときでも、確実にサイドへ追い込んで奪い返すことができており、ほとんどチャンスを与えてはいない。

 しかも、MF倉田秋が「みんなが気持ちを出せている」と話したように、ガンバは球際での争いで常に優位に立っていた。ガンバからは、単に技術や戦術だけのことではない、相手を凌駕するような力強さが感じられた。

 AFCチャンピオンズリーグと合わせて過密日程が続くなか、前半は省エネで時間をやり過ごし、後半に切り札を投入して勝負を決める。対戦相手にどれほどの勝機があったかという意味で言えば、最少得点差の1-0とはいえ、完勝と表現してもいい勝利だった。というより、そう見ることも可能だった。

 ただし、それがガンバの意図した狙いに沿ったものであるならば、だ。

 残念ながら、遠藤をはじめとする選手の反応を見れば、そうでなかったことは明らかだった。

「勝てたことがよかった」(倉田)

「結果的に勝ててよかった」(長沢)

 そんな言葉が数多く聞かれたように、結果はさておき話題が試合内容へと移ると、選手の口からは厳しい言葉ばかりがこぼれ出た。長谷川監督が語る。

「前半は非常にスローな展開だった。選手にはハーフタイムに『よそ行きのサッカーをするな。相手に合わせるな』と話した」

 前半のガンバはボールを保持しているばかりで、まったくと言っていいほどペナルティーエリアやバイタルエリアにボールが入らず、シュートにまで至らない。倉田は「みんなボールに触りたいから、どんどん下がってきてしまう。『もっと動け』と言っていたのだが……」と険しい表情で語る。

 遠藤もまた、「ビッグチャンスが圧倒的に少ない。(相手にとって)一番怖いところであるペナルティーエリアでボールを受けられていない」と苦言を呈した。

 ようやく後半にギアが上がり、決勝点を奪ったものの、倉田は「相手(のペース)に合わせてしまう。それがあるから、ACLで勝てない」と手厳しい。

 なるほどJ1では2位につけるガンバも、ACLではグループリーグ5試合(全6試合)を終え、1勝1敗3分けでグループ最下位に沈む。決勝トーナメント進出は、かなり難しいと言わざるをえない。

 それを考えると、「非常に強い勝ち方」も一転、「不安定な今季を象徴する試合」だったことになる。「後半のようなサッカーを90分やれればもっとよくなる」と倉田が語るのも無理はない。この試合でキャプテンマークを巻いた背番号10は「(相手に合わせるのではなく)自分たちのスタイルを貫くスキルを身につけないといけない」と続ける。

 どこをどう見るかによって評価が大きく変わる試合とは、すなわち、ガンバが強さと弱さの両面をさらけ出した試合に他ならない。

「苦しい時期はあったが、そこから盛り返して5月を迎えられる」

 長谷川監督はそう話し、チーム状態が上向いていることをうかがわせるが、その戦いぶりはまだまだ安定していない。長年ガンバでプレーし、いいときも悪いときも知る遠藤が語る。

「前半はいい形があまりなかった。(ただボールを回すだけでなく)緩急をつけないと崩せない。そこは急にはよくならない」

 勝つには勝った。首位・浦和の背中はもう目の前。結果のうえでは好調に見えるガンバだが、評価の難しい戦いは今しばらく続きそうである。

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