保坂祐二氏は竹島研究の第一人者 YONHAP NEWS/AFLO

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 韓国大統領選前から反日姿勢を鮮明にしてきた「共に民主党」の候補者・文在寅氏の背後には、対日戦略を指南する“日本人”ブレーンが存在するという。どんな人物なのか。

 今年2月中旬、ある日系韓国人が文在寅陣営の政策顧問に就任したことを、韓国メディアが一斉に報じた。

 保坂祐二氏(61)。世宗大学教養学部教授で、同大学「独島総合研究所」所長を務める、韓国での竹島(独島)研究の第一人者だ。

 保坂氏は東京大学工学部を卒業後、1988年に渡韓。東大在籍中に「明成皇后殺害事件(*注)を知ったことで、日韓関係の研究をしようと心に決めた」(著書『独島、1500年の歴史』より)ことが渡韓のきっかけになったという。

【*注/日清戦争後、清から独立した朝鮮王朝で日本の勢力を排除する動きが活発化。その中心人物と目された朝鮮王妃・閔妃(韓国では明成皇后と呼ばれる)を日本公使らが殺害したとされる事件。朝鮮政府内部のクーデター説も根強い】

 韓国の名門・高麗大学で政治外交学を専攻、同大学大学院で「日本帝国主義の民族同化政策」を研究し、政治学博士号を取得した。

 1998年、世宗大学の教員となった保坂氏は竹島研究に没頭し、歴史的考察から「独島は韓国領」との主張を展開。メディアにも頻繁に登場し、祖国・日本への辛口トークが韓国で話題となり知名度を上げた。在韓歴はおよそ30年。2003年に韓国に帰化した。

 昨年8月15日には、研究の集大成とも言える前掲の著書『独島、1500年の歴史』を韓国で刊行。日米韓の史料を基に、平易な文体で綴られた同書は韓国の青少年推奨図書にも指定され、ソウル市内では保坂氏の講演会やサイン会など大々的な出版キャンペーンが催された。

 教鞭をとる世宗大学の申求・総長からも、保坂氏は「日本出身でありながら独島が韓国領であることを国内と日本、そして全世界に知らしめる非常に重要な人物。世宗大学は保坂教授の率いる独島総合研究所を惜しみなく支援する」(2016年8月29日付『イーデイリー』)と絶賛されている。近年は竹島問題だけでなく、慰安婦問題でも日本批判を展開している。

◆「韓国の主張が正しい」

 文在寅陣営の政策顧問に就任した直後の2月27日には、自身のフェイスブックで慰安婦問題に関する持論を披瀝。

〈1930年代から第二次世界大戦が終わるまで、慰安所を自ら設置して慰安婦を連れまわした軍隊は日本とナチス・ドイツだけ〉 〈日本は『戦場の兵士が現地の女性を強姦しないように作った素晴らしい制度だった』と主張するが、それ自体が根本的に誤り〉

〈慰安婦制度が国家の決定で、それがすなわち強制だったところに問題の本質がある〉

 と訴えた。さらに文在寅氏の公式ブログにも保坂氏は登場し、

〈当事者抜きの慰安婦合意なんてありえない。慰安所なんてものを作ったこと自体が戦争犯罪だ〉

 と、慰安婦合意の破棄・再交渉を提唱する文在寅氏を援護射撃している。いかにも韓国贔屓な言動に、日本からは、たびたび、「売国奴」、「韓国人を欺くな(編集部註・韓国人に嘘の歴史を教えるなの意)」といった誹謗中傷が寄せられるというが、当の保坂氏はどこ吹く風。自身の研究スタンスについて、テレビ番組でこう述べた。

「私は学者ですから、物事を客観的に考えるようにしています。日本と韓国のどちら側に立つこともありません。しかし、独島問題をはじめ韓日関係を扱う史料などに触れると、韓国に有利な事実が出て来るのです。

 表面的には日本の主張が正しい部分もありますが、本質に近づくほど韓国の主張が正しいと。(中略)韓国の人々は感情が先立ち論理を見失ってしまうことが多いため、とても損をしています。日本は部分的な事実を組み合わせ、世界が納得できるよう論理構築することがよくあります」(2016年9月26日放送・TV朝鮮『パク・チョンジンライブショー』より要約・抜粋)

 保坂氏のこうした発言に、韓国のテレビ番組ではキャスターが思わず身を乗り出して握手を求める場面も。さらに、朝鮮半島の植民地支配に話が及ぶと、こんな“リップサービス”まで飛び出した。

「日帝が韓国に残した史料には、日本が朝鮮半島を植民地にした理由、背景について書かれた驚くべき事実が多数あります。たとえば神道には『アジアに日本の宗教、始祖神が入っていくためには、汚いモノを一掃し土地を浄化しなければならない』という理論がある。『だから戦争をするのだ』と。1945年までの日本の軍部などでは、それらの話が常識的に語られたり、教育されていたのです」

◆利用価値が高い

 産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏は、「文在寅氏は、このように韓国人の“ツボ”を心得た保坂氏の“利用価値”が高いと踏み、自陣営に取り込んだのではないか」と見る。

「保坂氏が帰化していることは、実は韓国社会ではあまり知られていません。本人は隠しているわけではないのですが、今でも“日本人”としてメディアで紹介されることが多い。だから『日本人でさえも独島や慰安婦問題で日本を批判している』と国内外に印象付けることができるのです」

 保坂氏はあと2年で定年を迎える。韓国では引退した大学教授はほぼ例外なく隠居生活を強いられるため、今回の起用は彼にとっても千載一遇のチャンスなのだという。はたして保坂氏は、文在寅氏の右腕として政権入りを果たすことができるのか。

「本人だってまんざらではないはず。文在寅陣営に合流してからは、積極的に自己アピールに励んでいます。

 ただし、政権に組み込まれるかは疑わしい。日韓関係を担当するには日本での知名度、人脈がモノを言います。彼にはそれがありません」(前出・黒田氏)

 本誌は保坂氏に真意を問うべく取材を申し込んだが、「大変申し訳ないのですが、ご存じのとおり現在、私は文在寅陣営の一員であり、個人的な立場での取材を控えております」との回答だった。

 文在寅氏の心の内はさておき、保坂氏の政権入りの心構えは確かなようだ。

※SAPIO2017年6月号