プレミアム吹替版で燭台のルミエール役を務めた成河

写真拡大

 実写映画『美女と野獣』のプレミアム吹替版で燭台のルミエール役を務めた俳優の成河(そんは)がインタビューに応じ、どのように名ナンバー「ひとりぼっちの晩餐会(Be Our Guest)」を作り上げていったのかを語った。

 実写版でユアン・マクレガーが演じているルミエールは、魔法でろうそくの燭台にされてしまったものの、色男ぶりは健在な野獣の城の給仕頭。ビル・コンドン監督はユアンがルミエールに「純真さ」「きらめき」「若々しさ」を持ち込んでくれたと表現していたが、成河の声はまさにそんなルミエールにぴったり。「年齢が少し上で、声のトーンも低く渋めで、でも軽妙で愛嬌があって……という感じをイメージしていたので、最初は『僕でいいのかな?』という思いがあったんですけど、ユアン・マクレガーさんの声は少し高めで。声質という部分ではそこで取っていただいたとも思うので、変にこねくり回すよりは、自分の出しやすい声で、むしろ軽妙さだったり、鼻につくけど嫌いになれないフランス野郎的なところ(笑)だったりを表現できたらなと思いました」。

 「グランドホテル」「アドルフに告ぐ」「ショーシャンクの空に」「エリザベート」をはじめ多数の舞台に引っ張りだこの実力派だが、吹替の仕事はこれが初めて。とても初挑戦とは思えない絶品のパフォーマンスを見せているが、成河は「大変でしたよ(笑)。僕はほかの現場での経験がないのであれでしたけど、あとあと聞くにつけ、ディズニー映画の吹替はすごく特殊な現場だそうで。一人ひとり別撮りするんです。一つのセリフを何十回でも、一番いいのが撮れるまで延々と繰り返せるという利点があって」と笑う。相手がいない中での演技は難しかったと言うものの、「複数人で録っていたら不可能なくらいの時間のかけ方を一人ひとりにしているので、慣れるまで、コツがつかめるまで、とことん付き合っていただけました。本当に感謝です」と振り返った。

 そしてルミエールといえば、食器たちとテーブルの上で歌い踊る名ナンバー「ひとりぼっちの晩餐会(Be Our Guest)」がある。歌っているのに語りかけているようでもある、表情のようにクルクルと変わるチャーミングな声色に心躍るミュージカルシーンだ。「日本語は言語的に“しゃべる言葉”と“歌う言葉”というのが、英語ほど地続きじゃないんですよね。それは舞台でやるときもそうなのですが、いわゆるミュージカルというものを表現していくときに歌とセリフがどんどんかけ離れていってしまって……。英語だと問題にならないんですけど、日本語だと急にポエティックになってしまったりして(笑)。そういうところをなるべく違和感ないようにつなげていく、というのはずっと意識はしています。そして今回それにはうってつけの役で、曲でしたし、どんどんしゃべっちゃおうと思って(笑)」。

 「これは舞台の翻訳でもそうですけど、正解なんてないと思うんです。100%はあり得ない世界だと思うので、その都度、演じる俳優の言語センスによっても変わってくる」と語る成河にとって、実際に演じながら、演出監督と共に歌詞を変えていくことができた今回の収録は心地よかったという。「日本語と英語では、同じ内容をしゃべったときに時間が全然違うので……。『成河さんにとってこの言葉は、どのくらい違和感がありますかね?』ということも聞いてくださったり、僕が違和感なくしゃべれる言葉であれば、聴いていて違和感がないんだとかね。一緒に探りながら日本語を作ってくださったので、下手すれば、舞台でやるミュージカルよりよっぽど日本語にこだわれたなって(笑)。大勢で作っていくときには、やっぱりそんな時間はないですから」と突き詰めて「ひとりぼっちの晩餐会」を作り上げたことに充実感をにじませた。

 最後に、どこを一番聴いてほしいかという問いには、「『吹替の仕事って何だろう』とずっと考えているんですけど、要するに実写を観てほしいんですよね。それが一番だと思います」と成河。「今回、吹替に舞台俳優の僕たちを集めていただいて、それを喜んでいただけるというのはすごく光栄でありがたいことなんですが、そんなこと以上に僕は実写が素晴らしいと思うので、観る人には、何の違和感もなくこの実写を隅々まで堪能していただきたいなと思います。字面も追わずに、ただただ没頭していけるような、そういうものになっていたらうれしいです」。(編集部・市川遥)

映画『美女と野獣』は公開中